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弐十四ノ太刀【やって来た人気声優】

 赤く、血が染み付いたような閉鎖された寺に吾は行き付いた。

 目の前には何本もの頑丈な鎖で締め上げられた赤い鬼がいる。それを見据えると、少し笑ってやった。

「随分と手こずっておるようじゃなッ?人間如きにッ。これは良い笑い者じゃ!」

 だが、前はこの言葉で拳を打ち込んで来ていた鬼も、ずっと俯いている。

 人間に手強い者がいたらしいが、まさかこやつがやられるとは思わなんだ。中位ならまだ見逃しておいてやるが、ここまで来ると他の妖怪が放って置くまい。


『―――――貴様…童子切を取り込んだか…』

 

 いきなり声を発した鬼に証拠を見せる為、蒼い邪気を放つ刀を呼び出す。

「…ふん、あんな妖怪、吾なら捕るに容易い」

『童子切は我等妖怪の中でも上位の存在。あやつが貴様のような半人妖に敗れる筈が無い』

「はんッそれを言うならお前は人間如きに負けておるではないかッ。それと同じことじゃよ!それに吾は人間を捨てたのじゃ!これ以上吾の逆鱗に触れるなよ鬼がッ」

 蒼く禍々しい邪気を放つ刀の剣先を、鬼に向ける。

「試してみるか、今の吾の力を。しかし、それが最後…じゃがの」

 安綱を見ると目の前の赤い鬼の体が膨れ上がる。これを見ても戦闘意欲が湧くとは。流石邪気の化身。少々本気を出さねばならんかも知れん。

 鎖を吹き飛ばすと巨体が雄叫びを上げる。

『行くぞ小娘!!直ぐに終わるではないぞ!!』

「その言葉ッ貴様に還してやろう!一瞬で終わられてはつまらんぞ!」

 蒼い刀の刃を鬼の素手が受け止める。命を賭ける意味はありそうだ。この一太刀で終わられては素っ気無さ過ぎる。

『どうした半人妖ッ!そんなものか!』

「…舐めて貰っては困るぞ…ッ!!童子切ッもっとじゃ!!お前を倒した主に力を貸せ!!お前に自由は無い!!我が言葉に服従し、全てを現すのじゃ!!!」



「…うぉぉぉぉ…喰らえ〜…吾の必殺〜〜」

 お、必殺技でも出すのか?

 俺はジグゾーパズル250に挑戦しながら、宙に向かって腕をパタパタ振っているツルギを観察していた。

「…うにゃぁ、ありえんなぁ…?」

 何が?何があり得ないんだ。ついでにその宙で振り回している腕はなんだ。

 あ…しまった。よそ見してたから普通はまらない筈のピース同士が合体してしまった。これからどうしろと言うんだろう。桜並木のところに海景色があるってどういうことだ。う〜ん、自分で選んだにしてもピース多過ぎたなぁこれ。

「"見つけてみよう自分の趣味"にも限界があるか」

 俺は図書室で借りて来た本の表紙を見て、放り投げた。ここまでしなけりゃ趣味が見付けられんか。料理でもしようかな…。いや、俺の外見で料理が趣味になってみろ。自分で言うのもなんだが、お嫁さんルート一直線だ。

 ジグゾーパズルは夜辺りにツルギと四苦八苦しながらするか。

「だからってすることないしなぁ…」

 本を手に取ろうとするが、伸ばした手が止まる。


「冬兎ぉ――――ッッ!!!開けなさぁああああ――――いッッ!!!」

 ――――ドンドンドン!!ドンドンバキャッッ!!


 あいつは金を取り立てるヤクザさんか。最近、(…これは来るな)とか雰囲気でわかるようになって来てるぞ。いや、慣れって怖いよな。

 それとさ…扉から有ってはいけない効果音出たような気がしたんだが気のせいか…?

「冬兎!ほ、ん、と、う、に!大変なんだってば!」

 俺はダラダラするのに忙しいんだ。わかってくれよ茉理さん。

 とりあえず安全策を考慮して某・青ダヌキ真っ青の押入れに入り込む。布団があるから中々に快適だな。これからここに住み着くか。

 一人でふざけてニヤニヤしていると案の定、茉理は正面玄関を吹き飛ばしたようだ。蹴りか拳か。どちらでも良いんだ、先ず何故女の力でドアが吹き飛ぶのか教えてくれれば。

「いるのはわかってるんだから!」

「…ふぎゅ…ッ」

「えッ?つ、ツルギ、アンタなんでこんなところで寝てるの!?踏んじゃって…ってあぁ、ごめんねツルギ!」

 さては昼寝してたツルギを踏んだな金髪。しかし押入れでの観察は面白いな、これからはこの視点でやってみようかな。

「…なんじゃ小娘…どチクショウ」

「最近アンタの口調って冬兎寄りよね?絶対悪い意味で感化されてるわよね?そろそろ本気で母屋に来ない?茉鶴が喜ぶわよ?」

「ふぁぁぁ〜〜〜…嫌なのじゃ。ここに慣れたらあのような柔らかい畳で眠れん」

 この離れの部屋の畳って硬いもんなぁ。最初は布団出すの面倒でこのまま寝るかなとか考えたが、朝には頭から首に激痛。体に至っては鈍痛とダルさが残るという最低最悪が組み合わさり、布団で寝ざる終えなくなったのである。完。

「って違うのよ!あのバカはどこ!?」

「……んむ?若造のことか。吾は寝ていたから知らんぞ。外に行っているのではないか?」

「違うわ!あのバカなら…そう!こんな感じの…"見つけてみよう自分の趣味"…?みたいなの読んで合わない趣味選んで落胆してる筈よ!それにほら!ここにパズルがあるし、決定打だわ!」

 少年探偵ビックリ仰天だな。決定打もあるだろうが、ここはわかるまい!


 ――――――ズドンッッ!!!


 その時、(主に)押入れが揺れた。

 俺は焦るとふすまを開けて転がるように外へ出る。くそッ!やばいべ!地震だべ!津波が来るべ!

「お、おい茉理!今地震が…はっ!?」

 飛び付いた黒いスベスベな物。そこから上へ視線を向けると…風が無いのに金髪が揺れている茉理さんと…水玉のおパンツが見えた…。

「…ふ、ふふふ…そうよね、このバカ犬…!人が緊急事態って言ってんのに、バカしてんじゃないわよォォオオオオオ――――ッッッッ!!!!!」

 茉理の黒ニーソで蹴り飛ばされながら俺は思っていた。なんか、開始当初こんな出来事あったなぁ…と。ついでに水玉のパンツ見えてんぞ、金髪…がくぅ。



「お久し振りです……兄さん」

 茉理に引き摺られながら母屋の居間に通されると、そこには正座して礼儀正しくしている懐かしい人がいた。長く伸びた黒髪に無表情な顔をして手を上げている少女。言葉消失。

 あぁ、この妹アニメボイス…久し振りだ。

「ちょ、おま!夏栗鼠!?」

 二条院 夏栗鼠(カリス)。俺の妹にして芸名『絵羽(エバ) カリス』で活躍している売れっ子声優である。ゲームやアニメにも、CMにも出ているから声を聴いてわかる人も多いだろう。

「何で、仕事は!?」

 いや…言ってから何だがそれ以上の問題だな。

「マネージャンから…長期休暇を貰った…だから、折角だから…兄さんに会いに来ようかなと…思ったんです」

「ち、長期って…っというかお前!学校はどうした!?」

 俺が言うと夏栗鼠は「…ん?」と声を漏らした。


「お母さんから聞いてない…?わたし…ここの学校に転入する」


 後ろにいた茉理を見ると、(――――は?)みたいな顔をしている。お前、折角の顔だけ美少女が台無しだぞ。心と腹が真っ黒だけどな。

 とりあえず茉理を見る限り俺だけの聞き間違いみたいじゃないようだ。

「夏栗鼠ッそれってマジなのか!?冗談なら兄さんは色々噴火するぞ!?」

「長期だから…無理を言って…編入試験を受けさせて貰って…。それで、受かって…どうせなら…都会より自然が一杯あった場所の方が良いですから…ここで休暇を過ごそうかと」

 我が妹ながらに常識を逸脱した行動力だな。そこは茉理と従妹の関係だからだろうか。なんかこう…血縁の血筋的な意味で。

「あ、それなら茉鶴が持ってる…これでしょうか?」

 台所からお茶を乗せたお盆を持ってきて、それをテーブルの上に置くと、茉鶴ちゃんはスカートのポケットから一つの封筒を取り出した。『一条院様へ』とこれまた綺麗な字で書かれている。

「勝手に開けるのもどうかと思ったので、そのままにして置いたんですけど…」

 うん、裏面には『二条院 夏栗鼠』と書かれているな。

「それの中に…編入届けが入ってる」

 

 封筒を開けると『編入試験合格通知』と書かれた用紙に住所やその他もろもろが書かれた紙。俺が書いたのと一緒のやつだ。

「少しの間ですが…兄の冬兎の妹として…宜しくお願いします」

新しいキャラはここまでで終わりだと思います。

え〜、夏栗鼠ちゃんは全然キャラ立ちしてませんが、どうなるんでしょうか。

うわ、また空気キャラを作ってしまったのだろうか。

今思えば会長と夏栗鼠が一緒になったら面白そう・・・会長はアニメ好きだし夏栗鼠は声優だし。

これからこの絡みが多くなるかも知れませんね。


いやぁ〜、しかし31部目…というか30部というのをめちゃくちゃ忘れてて特別な話を作るの忘れていました。

…いや、かなり計画性ないな…。

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