弐十参ノ太刀・後【※このゲームは精神に支障を起こす可能性があります】
「涙を護って頂きありがとうございます、一条院さん」
会長は自分のウェーブな金髪を揺らしながらお礼を言って来た。疲れた、もうあんな黒服と鬼ごっこなんてごめんだ。心臓幾つあっても足りん。というかもう逃げ切れる気がしない。
つぅか…何で俺にお礼の言葉がねぇの?
「榊原先輩、これはどういうことですか?」
「そうだそうだ〜…今時黒服ってどういうこと〜…?ついでに俺を見るあいつ等の視線がやばいってどういうこと〜…?」
「地位の高い者はそれを追い越そうとする者に狙われる。そういうことですわ」
何かいつもの会長の言動からだと助けてくれたことへの感謝か、本当にカッコ付けられて満足なのかわからん。
ついでに、黒服に狙われてた張本人の涙は俺の後ろで縮こまっている。
…やばいな。なんか子犬のようだ。だが家に連れ帰ると犬を食べそうな奴等がいるので止めて置こう。だって犬鍋しそうだし、躊躇無くな。
「あぁ〜会長、あいつ等って前のと同じ人達なんですか?」
「みたいですわね。使ってる者も統一してますし、何よりガチム―――えほん、巨体な黒服の男達で揃えてる所なんか…マニアックですわね」
なにがですか?ついでにガチム○のところの○はなんですか。
「冬兎くんには…美青年な人が…似合うと思います…」
後ろでボソボソ言うのは止めて貰えませんか。何かお尻を隠したくなって来るんで。
苦笑いしながら尻を押さえていると茉理がこっちを睨んで来た。(なんでアンタ普通にこの状況に適してんのよ)みたいな視線だ。俺に言うな展開だ必然だ。
「ま、良いです。今度ちゃんと話して貰いますから。冬兎、帰るわよ」
「あ〜茉理さん待って下さいよ〜。俺結局○イルズ買わなかった上にマッチョに追い回されて散々だったんだって」
またまた茉理さんは俺を置いて帰ろうとしている。裏切りのライダ○キックは俺の復讐手帳に書き記しておくとしよう。
俺は少し不安げにしている涙の頭を撫でると「また明日な?」と言って茉理の後ろを追い始めた。
「待ってくれよ茉理〜!お〜い!おい待てゴジ―――ぐほうッッッ!!!!!?」
「涙、二条院くんはどう?」
「…えっと…どういう意味でしょうか、姉様…」
わたくしがそう言うと妹が首を傾げる。
「容姿は合格。勉学も、難関の編入試験を今までの最高ランクで突破と申し分無し。性格は…少し難が有りかも知れませんが、わたくしは彼を進めたいですわ」
わたくし自身の初対面は女子水泳大会に混ざってたのを発見したからとは流石に言えませんけど。容姿は少し問題ありに切り替えたくなって来ましたわね。
「…僕は、そういう形で…自分の為に結婚するって言うのは…違うと思います」
…そうくるとは思っていましたけど、まさかドンピシャなんて思いませんでしたわ…。本当に自分以外のことには頑なですわね、この子は。
「今の貴女を変えられるとしても?」
「―――――はい。それに…きっと、冬兎くんは…僕を好いてなんかくれませんから」
ちょっと間違えたら貴女と二条院くんは同じような容姿だと思うのだけど。無理矢理男子の格好をしている女子に性格の悪い女顔な男子。…色々とアリですわね。
「……あ、ちょっと貴方。今日のあれの手筈はどうなっていますの?」
ボディーガードの一人を指鳴らしで呼ぶと、その者は頷いてから携帯電話を取り出して何処かにかけ始める。
電話相手と少し会話を交わすと通信を切り、わたくしの傍に寄って来た。
「今月分のしゅご○ャラは番組局からブルーレイで取り寄せております。それと、クレヨンし○ちゃんのお見逃しになられた先週分はこちらのUSBメモリの中に」
USBメモリを受け取るとウインクを返し、「良くやってくれました。関係した者のリストを作って置いて。お父様にはわたくしから有給の話を出しておきますわ」
「有難う御座います、お嬢様」
確か次回予告だとわたくしの好きなしん○ゃんのお父様が出ると言っていましたし、楽しみですわ…。帰ったら仕事を終わらせて直ぐに観ませんと…☆
「さてと、帰りますわよ涙。わたくしも忙しいですからね」
「は、はい。今日は本当に…ありがとうございました、姉様」
黒いリムジンに乗り込むと妹がそんなことを言って来たので少し頬が赤く染まってしまった。
「まったく、いつまで経っても可愛いままなんですから…」
「いや〜それでさ、黒服達から逃げた訳なんですよ」
「ほう…ほっ…なるほど。吾は学校から帰って来た茉鶴と一緒に釣りをしていたのじゃ…いや、夕日を眺めながらの釣りとはオツな物なのじゃな…お、若造若造、回復薬寄越すのじゃ」
「なるほど。それで夕飯が魚縛りだった訳だ。つぅか誰がショットガンをバカバカ使う奴に回復薬渡すか。ほら、そっち来てんぞ」
テレビに映し出されているのはゾンビ相手に銃を撃つ主人公。勿論、俺は全部ヘッドショット狙いでハンドガン。隣のチビはもはや阿修羅の方がマシじゃねぇのと言わんばかりにショットガンで弾を気にせずゾンビをふっ飛ばしまくっている。
「…あ、死んだ」
「あ…テメェ!!!ゲームオーバーってマジで!!?なぜ!!?主人公健在じゃんッ!死んだのパートナーじゃん!!!回復してやれよ!!!」
かなり良いところまで来ていたというのにチビのキャラが見事に逝かれました。
コントローラーを投げると畳の床に寝転がる。ダメだ…こいつとやるならまだ初めて知り合った小学生とやった方が出来る。もう確信で言える。
「若造、この熱血!ガチ○チプロ野球2009と言うのをやるぞ。吾にはやはり銃は合わんッ」
ショットガン使ってバカバカ撃って合わないとかそう言うの無いよな。俺の渡した弾全部使いやがりましたし。こいつに近寄る毎に吹っ飛んで行くゾンビは見ていてシュールだったな。
『ホームランです!!なんとコールドゲーム!!』
『その後、主人公達の行方を知るものは誰もいなかった…』
『「アッ―――!!!!」……GAYME OVER』
やべぇ…こいつとパーティー組むと見事にどこまでもゲームオーバーだ。
「ぐふ……若造、もしかしてげーむの強さを最大限にしてたりしないか…?」
「…最後のゲームについては初心者が安心して出来るレベル設定にしておいた。死んだ俺等は初見殺しとかそういうのを通り越してたんだ…」
無論悪い意味でな。そういや最後の主人公公衆便所に連れて行かれたけどその後どうなったんだろうな。
気付くとツルギは俺の隣で大の字を体現していた。ここまで疲れる物だっけ、ゲームは。確か娯楽用の物だったような…。
「主人公一発で死んだな…?」
「一撃死=ゲーマーの恐怖なんだよ。あるだろホラーって」
やる人はぶっ続けで四時間とか普通にやるからな。セーブとか忘れてたら本当に最後の晩餐になりかねんぞ。ついでに俺は"冒険の書"とか消えた経験は無い。消えた人はもう色んな意味冒険するんだろうな。
「……もう一生ここにこもってようかな…」
「不健康だぞ若造」
「お前ずっと家にいたりするじゃん!もうこれはニートとか引き篭もりじゃない!篭城だ!篭城なんだよ!篭城なんです!現実辛過ぎるわ!」
近くにあった座布団を掴むと頭を隠す。あぁ〜、暗くて狭い所最近好きになってきた。
「若造若造。今度は吾が遠距離からやるから若造はハンドガンとか言うので――」
「まだやんの!?懲りないねアンタは!しかもまた俺が突撃か!?スナイプ出来ないスナイパーが援護狙撃しようとすんなよ!」
「なんかあれで終わるのは後味悪過ぎるのじゃ…見ておれよ屍ども…最低難易度で叩き潰してくれるわ…ッ」
いましたよ、かなり近くに"俺強ぇww"好きな奴。っていうかさっきやった時は最低難易度だったんだぞ、そのゲーム。ショットガン使いまくって死んだの忘れたか。
ツルギはもうゲームのやり方を飲み込んだのか設定を自分好みに変更していく。
「…この暗号は確か…難易度とかいうやつじゃったな…」
ちなみにそれは暗号ではなく英語である。流石純和風主義。英語は読めないでは無く読まないんですね。
「ほら若造、やるぞ」
「…仕方ねぇな…ってオォオオオイ!!!なんで!?なんで目の前に即死攻撃する相手が出現するステージを選ぶの!?バカか!?とてつもなくアホなのか!?」
『GAME OVER』
新幹線でこんなに掛かるんだから、もう小旅行と言っても良いのでしょう。
わたしはカモフラージュの為のサングラスを外すと、毛布を被った。いや、あんまり顔は関係無い仕事してるから意味ないんだけど、一応一応。
それにしても、今日からは長期間仕事も無い。息を吐くとわたしは夜景の中の星を見た。
「…兄さん、もう少しです」
速さで掠れる星を見ながら、わたしは微笑んだ。兄さんには何も連絡は取っていない。行ったらきっと驚いてくれることだろう。
しかし、マネージャーには色々と可哀想なことをしたと思う。
休みをくれなきゃ事務所を辞める…ってなんか思いっ切りのいいことしちゃったし。普通ならクビなんだろうけど…これでも人気はある方なのだ。向こうだって辞められたら困るのだろう。
少し人に囲まれるのは疲れたのもある。わたしはそんなに人は好きじゃない。人込みは言ってしまえば嫌い。
それと一人で神戸まで呼ばれた兄のことが心配になったから、が一番大きいかも知れない。
「…元気かな…」
きっと元気だと思う。だって、あの物怖じしない兄のことだから、暗くなったということはないだろう。
あと、どれくらいで着くのだろうか…そう考えながらわたしは毛布の中で目を瞑った。
なんだろう…新キャラ出そうとすると悪寒が走るようになってきた今日この頃。
絶対壊すぞこのキャラ…なんかもう確信がある。
どうにかして設定的に生かせないかどうか…
無理だなッッッ!!!!!!!!!!!
なんか嘘だッ並みになってしまいましたが、こんばんは〜。
色々と四苦八苦しながら執筆してますよ〜♪
今回は結構ツルギと冬兎の絡みが多かったですね、そんな予定無かったんですけど。
出て来たゲームはテイ○ズとバイオ、後はちょっと禁則事項です。
頑張ってますが中々執筆が追いつかない今日この頃。どうやってネタを絞り込むかが鍵ですね。
……その絞り込むネタも尽きて来たわけですが。
完璧なネタ切れまでカウントダウンが始まりそうです、はい拍手〜…はぁ
執筆中乾いた笑いが出て命火でしたー