弐ノ太刀【やり過ごすのも手だが助ける相手を一度見よう】
とにかくだ。現代社会には完璧と言っていいほど幽霊等の嘘が暴かれているのだ。
幽霊の、正体みたり、枯れ尾花って良く言うだろう。間違ってるかも知れないけどな。
一番言いたいのは、刀が少女――ツルギの本体なわけがないということだ。もしかしたら外見が妙なだけに中身も妙なのかも知れない。銀髪赤眼の子供なんて普通日本にいるのだろうか。
一条院 茉理の金髪碧眼は母親の方がハーフの人だからだ。確か、フランスかどこかと日本のハーフだった気がする。母親の良い部分の容姿だけを引き継いだみたいな感じだ。ギャルゲーっぽいな。
でも巫女服で銀髪というのはなんか色々違う気がするんだ。
「だぁかぁらぁ!吾の話を信じろと言うておるッ!」
先ほどからずっとこんな話し合いが続いている。時間は一時。昼間の十三時な訳ではなく深夜一時だ。何で俺こんなことに付き合ってんだろ。巻き込まれ体質がスキルとしてついたとでも言うのか。
「お前は伝説の刀で〜?とうしちきのなんとかとか言う名前で〜?いつの間にか刀の封印が解けてて出て来たと〜?はっはっはっ傑作だ!面白いですねッ」
「童子切じゃ!童子切安綱!」
「名前はもうツルギで確定したから良いんだ!ていうか俺は昔から妖怪とか幽霊とか信じない性質でな!ホラービデオとか見たこともねぇわ!」
「勝手に名前を決めるなと言っておる!だいたい何じゃ"ほらーびでお"とは!」
とまぁこんな演説バトルみたいなのが計3時間ほど続いてる訳である。
「だいたい、お前見たいなロリと一緒にいると茉理にまた犯罪者ーとか言われるに決まってんだ。早くお家に帰ってくれた方が俺もお前も得をする。オーケー?」
指で互いを指差すと、ツルギはようやく辺りを見渡して腕を組んで首を捻る。
何か考え事をしてるような素振りを見せた後、空中に電球っぽいものが浮かんで来そうな勢いで「おぉ!」と言うと俺の顔を見る。
「ここはどこじゃ?」
「面白過ぎるぞこのヤロォオオオ――――ッッッ!!!!」
――――バキャッ
はっ!いかん、余りのギャグに返しが思い浮かばないから蔵に穴を開けてしまった。
ツッコミも度を越えると危ないな。後でジジィに見付かる前に修理しておかなければならない。
「お〜、若造もけっこうやるの」
刀を持って高飛車に笑っている少女は能天気だ。
待て。焦るなCOOLだ俺。ここはどこじゃとか言う妄言から考えるにツルギはきっと記憶喪失だ。そして蔵にあって巫女服を何故か着て、そして真刀を手に取ったに違いない。
「なぜ!俺がいる時に着替えなかったァアアアアアアアアアアア―――――――ッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」
思春期の男の心からの叫び。
「わひゅッ?な、なんじゃ突然!」
「と、とりあえずそれはいいッ。お前はどこから降り立ったか降って来たか知らんが自分の家に行かなきゃ俺もお前もデストロイされちまう、爺さんに!」
「てすとろい…?」
物凄く危ない状況なのに不思議少女は首を傾げて言葉を間違っている。
何はともあれまずいな。茉理に見付かっても爺さんに見付かっても終わりだろこれ。なんかひぐ○しのなく頃に並みに選択肢がシビアだな。ちょっと間違ったら俺は鯉の池に頭から埋まり死んでいるスケキヨになってしまう。
しかし、この少女は俺の推理からするに記憶喪失。家がわかるのだろうか。
「お家はどこ?」
「知らん」
「両親…というか親は?」
「この生娘の姿は幻想だといっとろうが戯け」
そう言いながら刀の側面でペチペチと叩いて来る。
――――――この餓鬼マジウゼェエエエエエエエエエエエエエエエエエエ―――――――ッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!
「……う、ぐぅ…そ、そうだよな…刀の子に親がいる訳ねぇもんな…」
「何苦しそうにしてるのじゃ若造?」
怒りを抑えてるんですよとは言えない訳だな。
とにかくこの子をどうにかしないといけないのだが…どうするか。
「…家に泊めるしかないよな、普通に」
ツルギに聞こえないように独り言で自分と語り合うと、結論を出す。こんな蔵でツルギを寝かせられる訳がないし、茉理だってきっとわかってくれる…というかもう寝てるだろうけど。
「…しょうがないか。明日茉理に話すで大丈夫だろうし」
「ん?どうかしたのか?」
伝説の刀とか自称してる割には能天気だな。外見かなり子供だし。
指で離れ部屋の方を指差すとため息を吐きそうにもなる。俺はジジィに大層嫌われているらしく、離れ部屋に済まされている事実を改めて自分に言い聞かせたような気分さえする。自分でここに呼んだ癖に、勝手なもんだ。
「こんなところで話し合ってるのもなんだしな。決してやましい事をしようってわけじゃないぞ?」
「いや、だからなんなのじゃ?」
「俺の部屋に来い。とりあえず今日だけ面倒見てやる」
どんだけ俺は過保護なんだと言ってから自分に苦笑をしましたよ、えぇ。
「むう、寝巻きが変だぞ若造」
「俺のしかないんだから仕方ないだろ…それに若造じゃなくて、冬兎だ冬兎」
風呂にはもう遅いから、ホコリで汚れた巫女服だけでも着替えさせようと、Tシャツとスポーツパンツを渡して置いたのだが…。
「この服はなんだ。ぶかぶかだな」
スパッツ式のパンツは上手く穿けたらしいが、身長差があるからTシャツはぶかぶかだ。こら、裾をたくし上げるな裾を。まるでエロゲの一シーンみたいになってしまうじゃないか。
「しまった。長袖じゃ暑いよな。半袖出してやるから」
「いや、その袖と付くからにはこれの小さいものということだろう?これで良い。元々吾に暑さや寒さの感覚なんぞない。味覚とか痛覚はあるがな」
なんだその中途半端な機能。味覚は良いとしても痛覚要らなくね。
「しかし…随分と不思議な物が置いてあるものじゃな…」
夜中の二時にツルギは俺の部屋を物色し始める。見てて複雑過ぎる。
まあ前屈みになった時にチラリズムで見えるスパッツとか夢一杯なんだけどね。あれは見ていて楽しい。何だか普通のパンツよりちょっと来るな。
「おい若造若造!」
「トウトだ!で、なに?」
巫女服だったからかちょっと雰囲気が重く感じたが、普通の服装をしていたらそれ相応の可愛い女の子だ。
手に目覚まし時計を持ちながら「これはなんだ!?」と興奮したまま聞いて来る。
「時計だよ。針で時間を指してるんだ。それに、時間で音が鳴って起こしてくれる」
「じゃあじゃあッこれは!」
「電話機だな。遠くにいる奴と話が出来るんだ」
「ほうほう♪どんな感じでこれは使うんだ!?」
余りに期待満々な顔で言ってくるので、少し面倒に感じながら充電器に乗せてある携帯を手に取った。自室の子機の番号を入れて、通話のボタンを押す。
――――――テッテッテッテ―テレッテッテ―――
「わひゃうッ!?」
いきなり子機から鳴った後によほど驚いたらしい。取り落としている。
「ほれ、取ってみ」
そういうと、ツルギはまだ音の鳴る電話をおそるおそる手に取る。
「不思議な絵柄のやつがあるだろ?それの緑の方を押して、上の方を耳に当てるんだ」
「む、こっちの方か…それで、こ、こうか?」
呑み込みが早い上に勘も良いな。
とりあえずツルギが受話器を耳に当てたので、会話をしてみよう。
『どうだ、面白いだろ?』
「うひゃわわわッ!」
今度は俺の声に驚いたようだ。またもや受話器を落とす。こうやって新しい物を知らない奴をからかうのは面白い…というか、
「お前、電話も時計もマジで知らないのか?」
声を掛けた途端に、電話に伸ばしていた手をビクッと振るわせる。
どうやらさっきの俺の声にまだ驚いているようだ。こうやって話さなければ可愛いんだよなぁ、こいつは。
震えたのを隠そうとしたのか、ツルギは腕を組むと、「ふんッ」と鼻で笑う。
「吾は日本という国を愛しているのじゃ。こんな洋物など興味ない!」
さっきまでメチャクチャ興味深々だったじゃねぇかと愚痴ってみるが、流石に本人には聞こえないようにする。
少し喋った後気付いたのだが、
「おいツルギ。お前、あの剣どうした?」
「童子切な上に剣ではなく刀じゃ阿呆」
いつの間にか手に持っていたトレードマーク並みの刀が無くなっていたので聞いてみたら、ツルギは空中に手を上げてそれを振り始めた。手は人差し指を立てており、どうやら何かをしているようだ。
「我が真の姿よ。仮初めの姿を糧にし、その堂々たる姿を現さん―――」
なんだか陰陽師が唱えてそうな言葉だな。というか不思議少女は何をする気なんだ。
「悪夢を食い破りし炎の朱雀ッ!荒ぶり光る大刀は月夜なり!五宝刀、二太刀【鬼丸国綱】!」
弐ノ太刀、というわけでプロローグ合わせて3話目でございます。
今回のメインは冬兎とツルギのコントと言わざる終えない話し合いでございます。
ツルギの何事にも引かない高飛車な少女を目指しておるわけでして、引くにも引けない…というか引く気はなさそうですね。
古風な喋り方は彼女が刀ということも関係していますが、それはまたいずれ話すとしましょう。
ボクは刀からオーラなんで出す少女と関わりたくなんてないんですよ?えぇ
ライトノベルは好きですけどね。
この作品はファンタジーラブコメディみたいな感じなんで、無意識にでもラノベに近付いちゃうんですよね。
少し見苦しい点もあるかも知れないですが、それはお見逃し下さい。
まだまだキャラも揃っていなく、寂しい感じですがすみませんw
ボクは出来る限り世界設定をちゃんとしたいタイプなので、頑張っております。
次回が出るかも心配な感じですけどね…。
出来る限りの期待に沿えるようにしたいと思っています!それでは、次回でお会いしましょう!