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弐十参ノ太刀・中【黒服鬼ごっこisデンジャー】

 お父様は息子が欲しかったから…僕が生まれた時落胆してたんだと思う。お母様は次に子供を身ごもると体に問題が出るかも知れないなんてことも言われた。

 僕は女の子の服を着たことが無いし、これからも着ることはないんだろう。憧れない訳じゃない。僕だって、着飾って…姉様のように可憐にしていたい。だけど、僕はもう、榊原の"息子"だから、跡取りにならないといけないから、もうそれも叶わないんだ。

 それだから、冬兎…くんにバレちゃった時はもうダメかと思った。

 僕はお父様から勘当されて…途方に暮れるんだ…なんて考えて、ネガティブに布団の中で一日ホームレスな自分のことを思い描いていた。

 だけど、冬兎くんは保健室のことを誰にも言わずに遊びに誘ってくれた。今は目の前で、珍しい金髪の物凄く可愛い女の子と喋っている。従妹の子で…彼女…なのかな。冬兎くんも綺麗な男の子だし、似合ってる。

 殴ったりするのは過激な愛情表現なのかな…。僕も、あんな風に男の子と話してみたいな…。きっと、無理なんだろうけど…。


「お〜い、涙、どうしたんだ?」


 気がつくと涙が少し後ろの方を歩いていたので目の前まで歩いて行き、目の前で手を振る。

「え…?」

「お、気がついたか。ぼーっとしてたぞ。どうかしたか?」

 心無しか顔が赤いな。もしかして人込みが苦手だったりするのだろうか。いや、それだったら普通顔色は青くなるだろうが、バカか俺は。

「熱射病か?ここら辺は結構涼しいと思うんだけどなぁ。海近いし」

「だ、だだだだいじょう…ぶ………だよ?」

 何か全然大丈夫そうじゃないな。まるでお前の性別を言い当てた時の会長みたいだぞ。そこ等辺で休ませた方が良いか。


「――――――え?」

 

 手を握ってやると涙が目を見開いてこっちを見て来た。何だ、あれか、それくらい驚くまで俺は意外な行動をしたんだろうか。

 そりゃさ、俺女の子ちょっと苦手だけど流石に放っておくなんてことしないしなぁ。

「ま、嫌なら言ってくれ。公園までは離さないけどな?オ〜〜イマツり〜ん!ちょっと待て〜!休憩するぞ休憩〜!」

「は…?アンタ何言って……あぁ、はいはいわかったわよ」

 一瞬いぶかしげな顔をしたが、俺が手を握っている涙を見ると納得したように頷いて来る。うん、持つべきは暴力的な従妹。意思疎通はこんな時しか出来ないんだな。

 止まっていた茉理の隣に並ぶと、茉理も涙を見てくる。

「確かにちょっと顔が赤いわね。冬兎、近くに公園あるでしょ?そこに行くから」

「了解です茉理さん。ついでに俺も日頃のストレスで頭とか胃、その他もろもろに苦痛があるんですが休ませて貰えませんか?」

「そんなに飲み物が買って来たいなら買って来て良いわよ…?」

「パシリは勘弁して下さい。今日マジでテ○ルズ買う金しか無いんです。お茶の一つも買えないんです」

 涙と繋いでる反対の手でポケットを引っ繰り返すと余る金無いですをアピールする。パシられるのを回避する為の作戦である。

 そうすると茉理がスカートのポケットから財布を取り出して小銭を何枚も一片に投げて来た。これさ、凄いよな。何枚も小銭あるけどそれがちゃんと固まって飛んで来るんだから。ニュートン涙目。

(おご)りにしたげる」

 指ピストルを俺に向けながらそんなことを言って来た。遠回しにパシって来いってことか、なるほど。360円が手の平に乗っかっている。

「お前なぁ、金を邪険に扱ったり投げたりすると罰当たるぞ?」

「アンタ相手だから投げてんのよ…。他の人には投げたりしないんだから良いでしょ」

 俺だけに試練与えてんの?与えてんの?大事なことだから二回言ったけども。

 涙が隣で目を丸くしてる。そりゃこんな曲芸みたいなこと平然とやって退けられたら驚くわな。

「それじゃ、涙頼むぞ。茉理さんにはコーラで良いよねッ!」

「アンタあたしがコーラ嫌いなこと知ってて言ってるんだったら覚悟しなさいよ…ッ」

「…り、緑茶ですね、わかります」



「…榊原くんだっけ。ありがとね、冬兎と友達になってくれて」

 あたしは冬兎がいなくなると横で歩いている榊原くんにお礼を言った。

「い、いえ…僕の方が良くして貰っています…。それに、冬兎くんから…話し掛けてくれたんです…」

「そっか。あのバカは友達作るの下手だからね。良かったらこれからも友達でいてあげてね。バカで悪乗りばっかするけど悪い奴じゃないから」

 …なんか自分で言ってて恥ずかしくなって来たわ…。でも、そっか。自分から人に声掛けられるようになったんだ。良かった…アイツもちゃんと人付き合い出来てるじゃない。


「……あの、冬兎くんと一条院さんは…付き合ってるんですか…?」


 ―――――――はい?いきなり何聞いて来てるのこの子。

 今のあたしの顔を冬兎が見たら登場のすると同時にカラータイマーが鳴り出したウルト○マンとか言われるかも知れない。そんなこと言ったら冥土に送るけど。

「あ、あああああああたしとバカがつ、つつつつつつ付き合ってるッ!?」

「…えと…もしかして、そうなのかな…と」

 バカ言わないでと言いたいんだけど口が回らない。顔が熱くなって来てる気がする。どうしよどうしよ、のぼせた気分になって来ちゃったッ。

「あ…あ…ち、ちがうて…と、とうろとあにゃしは……」

 あれ…ちょうちょが見える。それも虹色の一生掛ってもお目にかかれなさそうな感じの希少種っぽい奴である。

「そ、そそそそんな訳ないじゃない!そ、そそそそうよ!ないッないッないッ!!!」


 ―――ゴッゴッゴォッ!!!(電柱に頭を打ち付ける音


「い、一条院さん…!電柱傾いてますよ…ッ!?」

「そうよ…アイツはあたしのこと女なんて思って無いんだからッ。そんなの有り得ないんだから。アイツ絶対"30歳くらいまで清い体を保ってれば魔法使えちゃうぜ"って言う人達と同類なんだからッ」

 あの朴念仁とあたしがそんなことになるわけないの!そうよ、あたしはアイツを更生させられればそれで良いんだから…ッ。…そ、そうよ…それで良いんだから。

 メキメキと何かが壊れるような感じの音がしてる気がする。

「あ、あわわわわ…で、電柱に手が減り込んでます……」

 榊原くんの呟きではっと我を取り戻すと電柱を掴んでいた手を離す。コンクリートが一緒にもぎ取れたので払い捨てた。

 だ、ダメだわ。あんな一言で我を忘れて暴走するなんて…バカみたいじゃない。

「ご、ごめんね。…驚かせちゃったかな?」

 あたしがそう訊くとブンブンブンと音を立てながら必死に首を横に振る榊原くん。…何か怖い物でも見たのかと訊きたかったけど、訊くとあたしまで怖くなりそうなので止めて置いた。

「とにかく…アイツと友達でいてあげてね、榊原く―――…は!!!?」



 緑茶が無かった…。何か近くの自動販売機が全て炭酸系で埋まっていたのである。何だ、炭酸ブームでも来てるのか神戸は。つぅか何だ『抹茶サイダー』って。気持ち悪過ぎだろ、誰が買うんだ誰が。

 仕方ないから10分くらい走り回って、やっと一本緑茶を見付けた。これで最後の一本だったのだから背筋が少しゾッとしたものだ。

「茉理〜。買って来たぞ〜」

 公園まで走って帰って来ると…俺は前見たことがあるガチムチな黒服を見てジュースを全部落とした。やばいな、18話辺りが頭の中でフラッシュバックしている。何かスク水を着て学校を疾走していた自分が走馬灯のように浮かぶ。

 なんであの黒服いんの?午後の公園で何人もウヨウヨしてんの?かなりシュールで一瞬思考が停止したぞ。

「…で、でででで出たァアアアアアアアアア―――――ッッ!!!」

 一人の黒服とサングラス越しで目が合うと、俺は恐怖の余り走り出した。勿論、落としたジュースを全部拾った後に猛ダッシュである。

 こわっ!何かこわっ!もしかしたら話すと良い人かも知れないけど、あんなシュールな男達と語り合う度胸俺には無い!何されるかわかったもんじゃない!

 そういや茉理と涙はあのシュールな光景の中にいたのだろうか。ちゃんと見れなかったんだけど。いやいやいや、あの悲鳴あげて逃げるまでのタイムで公園見渡せたら凄いって。俺なんてもう黒服だけにしか目線行かなかったもん。一生の思い(トラウマ)過ぎるだろ。

 ちょっと後ろを確認して見ると、足音を全然出さずにゴッツイ黒服達が追って来ていた。今の俺の顔は北斗の○ンかゴ○ゴ13並みだな。

「俺の後ろに立つなァアアアアアア――――ッ!!!?つぅか来んなッ!!!こっち来んなッ!!!」

 とは言え、逃げ足には自信がある。前は会長がいたから逃げ切れなかったが、今回は俺一人。遠慮無しで走り回れるんだぜ。っていうか黒服の男達の足音が全然離れないんだぜ。何だあの後ろのマッチョは、プロのストーカーなのか。

「……って近ッ!?こわッ!こわッ!」

 真後ろにいつの間にかいられるとこんなにも怖い物なのか!

「バカ冬兎!伏せなさい!」

 

「一条院奥義・一閃双葉(いっせんそうは)ッッッ!!!!」

 ―――バキャ!ドゴッ!!ズシャ―――――――ッ…


 曲がり角を曲がろうとした時、目の前の茂みから何かが颯爽と登場して来て俺の顔面にライ○ーキック並みの跳び蹴りをかました。ラ○ダーキックの威力を乗せた俺の体は後ろの黒服を何人か巻き込み、この後爆発するかも知れない飛距離を叩き出す。

 槍だと突きなのに、蹴りだと跳び蹴りなんですね…。

「け、蹴る前に言え…」

「伏せろって言ったじゃない。それと、逃げるわよ。あたし達もこの人達に追われてるんだから」

「伏せろって言う前に○イダーキック構えてましたよね…?もう俺の名前呼んだ時点で宙跳んでたじゃん…」

 あぁ…なんか俺の文句全然聞いて無いし。なんか涙の手を引いて前行っちゃってるし。

 こんな時茉鶴ちゃん恋しくなるなぁ。もう生意気なガキでも良いから俺を構ってくれ、頼むぜ。

おぉ…終わりマスタ…。

やっと書けたと思ったら前・中・後になりました。…うん、そろそろ自分の計画性の無さにブチ切れそうです。


うーん…それとそろそろ新キャラ登場かも知れません。もうちょっと掛るかも知れませんが。

出来る限りはっちゃけられるキャラにしたいとは思うのですが…どうなるのか。

今回のあとがきはこれくらいで終わろうと思います。

次回は長くなると思うので、詳しくはその時にしようと思います。それではまた〜。

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