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弐十参ノ太刀・前【俺のマーライオンを見てくれ。こいつを…(以下略】

 会長が目の前で椅子に腰掛けながら汗を滝のように流している。

 俺が女子制服でここを訪れた時は「あら、どうかしましたの?」と格好を付けていたのだが、涙のことを訊くと目が泳ぎ、吹けない口笛をし、最終的には「昨日のクレヨンし○ちゃんのことでしたっけ…?」とか言って来た。見てるのかあれ、お嬢様なのに。いや、偏見はダメか。

「―――ば、バレるとは思いませんでしたわ…」

 なんか会長の周りの空気の温度が10℃くらい下がった気がするのは俺だけか。

 というか、ちょっとはそういう可能性も考えとこうぜ。いや、そういうバカっぽいところが好きだとかいう人もいるんだろうけどさ。会長って成績良いんだよな…確か。あれか、成績良くても頭がダメみたいな感じの人か。

「ど、どどどどどうしてわかりましたの…ッ?」

「そ、そそそそそれはどうでもいいじゃないですか……?」

 まさか姉の前で妹さんの裸見ましたと言える筈が無く。というか裸じゃなくて半裸だったんだけどな。そっちの方が俺的には嬉しいんだけど。


「……ま、まさか涙に何かしましたのッッッ!!!!?」


 まぁ保健室で女の子と二人きりと言うのは何かありそうなフラグですよね。あと興奮したからと言って飲み掛けの紅茶が入ってるティーカップを高級そうな机に叩き付けるのはどうかと思う。

「安心して下さい、俺は何もしてません。間違いは起きていません」

「ほ、本当ですのね!?最近の若者にあり気な間違えてから気付きました、えへ♪みたいなことはないんですわねッ?貴方の血は赤色ですわよねッ?」

「どこのドロドロ展開な昼ドラですか。何か観てるテレビ偏ってますよね?ついでにえへ♪ってとこ要りませんよね?要りませんよね?それと俺の血の色が青かったら涙を襲っていたんでしょうか」

 会長は震える手で中身が半分以上机に(こぼ)れたティーカップの紅茶を飲んでいる。落ち着こうとしてるのか。

「…し、仕方ありませんわ。バレたのですから…そうですわ…わたくしのせいじゃありませんもの…そうよ、言うなればどらえ○んとコ○助を間違えるくらいですわ…二つとも機械ですもの…」

 必死に現実逃避してるな。顔の表情が死を待つ死刑囚みたいになってるぞ。

「ちょ、ちょっと昨日通販で買った"オチツーク"を飲んでも良いかしら…?」

「何ですかその危ない名前の錠剤は!どこから買ったどこから!そして先ず副作用を教えて下さい!」

「…落ち着く代わりに8時間くらいパッタリ寝ると書いてありましたわ♪」

「何で自信あり気に言ってるんですかッ!!!?バカか!!?つぅか今面倒だから寝る気だろ!寝て全部済まそうとか考えてるだろ!そうはさせない!」

 会長が手に持っていたビンを奪うとスカートポケットに入れる。…なんかこれ重いなおい。中身錠剤でギッシリだったし青と白のカプセルだったし怪し過ぎるぞ。うわ、しかも1万円とか書いてあるぞ。

 ピン留めを解いて髪を留め直すと、また会長に向き直る。

「………こ、紅茶が美味しいですわね…」

 あ、何か旦那に裏切られた妻のような遠い目の視線になっている。かなり現実逃避してる。周りに蝶とか見えていそうだ。

「というか何でこんな学校で男装してるんですか?普通に女子校舎行けば全部大丈夫ですよね?」

 言ってから何だがなにが大丈夫なんだろうか。


「わたくしと涙が女だから…ですわよ。だから、涙には男になって貰わなくてはいけませんでしたの」


 …やべぇ、合間すっ飛ばしたみたいに意味がわからなかった。シリアスにしたかったけどシリアスに仕切れなかった感がデカイ。ギャグに聞こえるのは何故だろう。

「ほら、榊原は大手企業ですから。跡取り息子が必要だったのです。だから、姉妹で生まれてしまったことが…悪かったのですわ。姉はもう仕方ないからとお父様は二人目の子供に託していたのです…」

 あぁ、なるほど。息子が欲しかったのに娘だったから男装させたと。

 …なんというか、上流階級の人達は大変ですね。まだそんなことがあるのか…夢が一杯だ。

「だから、涙は男子の振りをし、榊原の一人息子という戸籍でいるのですわ」

「戸籍までやってるって言うのは…徹底してるな…。そんなこと出来るのか」

「お父様なら普通に出来ますわよ。その気になれば、明日には貴方のこの学校の学籍を全て消すことも出来ますから」

 そりゃ怖い。もしあの保健室でとち狂っていたら俺ここにいない訳か。

「…でも、バレたならそれはそれで好都合ですわね」

「―――ひょ?」

「二条院さん、これからも涙と仲良くしてやって下さい。勿論、涙の秘密を守る事も条件に加えさせて頂きますわ。バイト料とか要ります?自給は100円程度ですけど」

 状況が悪化したとしか思えないのは俺だけなのだろうか。あの保健室で見なかった方が仲良くするだけで済んだのに…ッ。つぅか自給安ッ変なところでケチんな!



「…あのさ、お前が実は女で、理由があって男って性別にさせられてたらどうする?」


「わたしはねぇ〜…フユの彼女になりたいな〜♪」

 こいつに訊いた俺がバカだったな。さっさとこの屋上からダッシュで逃げよう。昼食の時間が勿体無いし、抱き付かれて頬擦りされるとかなりきつい。甘い香りを感じる。こいつ普通の女の子より可愛いんだよな。

「つぅか離れろ…」

 目を閉じてキスを狙って来ている杏樹の額を手で押す。阻止だ阻止。

「あん♪フユったら冷たいんだから〜ッ」

「お前とキスするんだったら北極行って絶対零度体験して来るわ!」

「フユとだったら、絶対零度も耐えられるに決まってるんだから♪わたし達は、一心、ど、う、た、い♪」

 こいつ一心同体の意味わかってるのだろうか。俺とお前は一心にも同体にもならないからな畜生。一心になったら俺も男が好きになるのかおい。俺みたいな奴が好みになるのか。

「でも…う〜ん、そっかぁ〜。女の子で男の子の格好をさせられてるんだよね?」

 随分変わり身早いな、お前。今さっきまで抱き付いてたのにもう離れてるぞ。

「わたしは自分が男だからあんまり言えないけど、例えばわたしみたいじゃなくて、ルイとか…そういう子だったら苦しいのかもね。無理矢理させられてるんでしょ?」

 こいつ実は全部丸解りだったりしないのだろうか。

「そういう設定で頼む」

「そっか。…わたしなら、女の子でいられるように精一杯手を尽くすかな。それでも無理なら、男の子になって楽しくなるようなことをしようって考えるけど」

 あぁ〜、涙の奴もそういう能天気な思考回路だったら良かったんだけどな。

「ま、最後はそいつの頑張り次第か」

「そうだね。でもね、もしわたしがそこで踏ん張れない人だったら、支えてくれる人がいて欲しいと思うよ」

「ふーん、支えてくれる奴ねぇ」

 いやさ、俺これまで男装してる社長令嬢となんて知り合ったこと無くてですね?こんなこと初めてだから対処も何もかもが全然サッパリなんですよ。支えるってだいたい何を支えるんだ。トイレとか更衣室の前で見張りをすれば良いのか。

 杏樹は弁当箱の蓋を閉めると笑い掛けて来る。

「頑張れ、"わたしの"フユ♪」


 ――――あぁ…"わたしの"が無かったら感動出来たのに。俺お前に恋してたかも知れないのに。いや、それはそれで結果オーライなのか。



「マーライオン万歳!」

「…………血縁関係全部解消してから死ねば良いのに…」

 ちょっとお茶目で言ったのにギャグのわからないマツりんはそんなことを言う。そんな人生こいつのせいで絶望という一色に染まったみたいな目で見るなよ。

「ギャグをわかれ!俺のこのギャグをわかれ!」

「うっさいわね!いきなり友達と一緒に下校するから来てくれとかメールしたのアンタでしょッ!」

 そのメールの文の最後に『来てくれゴ○ラ』と書いておいたらマッハで茉理が跳んで来たのは言うまでも無い。まさか槍投げの応用で掃除用モップを投げて来るとは思わなかった。逃げようとはしたんだけど背中に刺さったのがオチである。まだ背中が痛い。

 そしてその友達とはもちろん俺の誘った榊原 涙である。

「榊原くんだっけ?これと付き合うとろくなことないわよ」

 なんてこと言いますの?ねぇ、これから合コンしようとか言ってる時に友達の欠点上げまくる奴くらいKYですよ茉理さん。

「…え、えっと…」

「あぁ〜…えっとだな涙。この嫌に態度のデカイのが――ガゴフッ!…美人で素晴らしいのが俺の従妹の一条院 茉理だ…」

 人が話しているのに顔へのストレートはちょっと。

 涙は苦笑いをしながらもちゃんと後ろを付いて来ている。うんうん、ここで恐れをなして帰らない所はかなり凄いぞ。俺だったらお近付きになりたくないから一人で帰るだろうけど。

「えっと、一条院さんで…良いでしょうか」

「うん、それで良いわよ。それで何か用があったんじゃないの?」


「実は今日発売するテイ○ズオブの新作を――チョメブッ!」


「一人で買いに行きなさい…」

 ごもっともですが俺には涙と親しくならなければいけないというミッションがある訳ですよ。それと殴るのは止めてくれ、冷静なようだけどメチャクチャ痛いから。

 穴場なのだが、商店街のちっちゃい電気屋がゲームソフトを売っていたりするのだ。ちなみに予約は取ってくれないのである。どんだけシビアなんだ。

「…え、えっと、僕も買いたい物があるんで、大丈夫ですよ」

「ちなみに何を買うんだ?」

 大会社のブルジョアだったら通販で届きそうな気がしないでもない。というかぶっちゃけ届くよなamaz○n辺りで。

「えっと…鬼畜○鏡を…」

「――――――は?」「バカ冬兎〜、早く行くわよ〜。今日あたしが食事当番なんだから〜」

「え?ちょっと待って下さいよ茉理さん、今小さくて聞き取れなかったけど物凄い単語出たよね?全年齢版目指してる小説としては有り得ないの出たよね?そして無視してるよね?俺は今凄く真面目な話してるのに何でスタスタ歩いて行くの?この怪獣マツり――ぐぼはぁッ!!」

 何で方向反転しながらこんな速度で跳び蹴り出来るんだ。ついでに何で男の俺の体が宙を舞うのだろうか。それまたついでに地獄耳だなおい。

ちょっとギャグ少な目でしたけど如何だったでしょうか。

作者的に会長のキャラが気に入っていたりします。

それと、キャラ設定なんですが、会長の髪も金髪だったりします。えぇ、被るから言わないだけなんです。


涙の女だった設定はまぁ、会長のイメージが出た時に一緒に出て来たんでかなり偶然です。もしかしたら会長しか出て来なかったかも知れなかったりします。

だって……設定難しいじゃないですか?

今この後編書いてるんですが早速詰まっています。積むかも知れないけど頑張ります。遅くても次週に間に合わせます…ッ。


あ、ついでにマーライオンはいきなり思い浮かびました。

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