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十六ノ太刀【ラブラブ赤い死の瀬戸際】

 最近“となりのトロロ”にツルギがはまっている。あのブヨブヨが良いらしい。

 そして朝、滅茶苦茶デカイ炎の大刀を素振りしながら「歩こ〜歩こ〜、吾は元気〜」とか言っているところを見て俺は携帯のムービーでそれを撮っていた。

 あれ以上シュールな光景を俺は生きている内に見られるだろうか。

 絶対無理そうだな。シュールを越えるなら爺さんがスキップしながら剣玉をやり、俺に向かって「ハロー♪」とか言わんとツルギの思い出は消えない。

 というより子供扱いするなという割りには滅茶苦茶子供っぽいよな、あいつ。甘党だし辛いものだと冗談抜きで滝のように涙流すし。

 まぁ、あいつはあれでキャラを作ってるから良いのだ、うん。



 前の黒板には大きな文字で『水泳大会』と書かれていた。杏樹から聞いた話だと男女は別なようだ。プールも男と女で違うのかと考えたのだが、どうやら午前と午後で分かれてやるみたいだ。

 そりゃこんなマンモス校とは言え流石にそれはないか。

「とかなんとか言って体育館は二つあるんだよな…」

 すまん、金の使いどころを色々と間違ってると思うのは俺だけなのだろうか。だいたい、男と女の校舎を二つに分けてるのはどうなんだ―――、

「どうなんだッ!?」

「ひぅ!?な、なになに!?フユ、どうかしたの!?」

 しまった不満が声に出てしまったようだ。横の杏樹、他のクラスメイトも驚いているようだ。そりゃクラスでいきなり声上げて騒いだら怖いだろうな。先生もビックリしてるようだ。

「いや、何でもないです。続きをどうぞ」

 俺が謝りながら席に着くと先生が「ほ、保健室のベッドは空いてるそうですよ?」と言って来る。

 すまん、いらんお世話だ。なんだ、俺は先生の中では頭が可哀想な子になってしまったのか。とりあえず口は開かないでおこう。

「どうかしたのフユ?」

 席に着くと杏樹が首を傾げながら訊いて来る。

「もしかして発作…?」

「待て…ッなんの病気持ちだ俺は…ッ!違います…ッ!ただこの学校の変な金の使い方に腹が立っただけなんです…!」

「う〜〜ん、確かにこの学校は別校舎にしてたりするからね。だけど、そのおかげでこの学校は生徒が多いから成果は出してるんじゃないかな?」

 そういえばこの学校って男女を別けてることで来る苦情が少ないらしいんだよな。

「それに、女子校舎の方には鐘茜卯さんや榊原さんみたいに大物の人がいるから、それもあるんだと思うんだけど。あ、榊原さんは生徒会長の人ね」

 あぁいたな。夏休み明けの始業式の時の会長さんか。

 榊原会社って確かデパートとか経営してる大会社だっけ。そんなに評判良いのかこの学校は。会社の社長令嬢って帝王学とか習うんだよな。そんなんも教えたりしてるのか…?

「ねぇねぇ、フユ、一緒にラブラブ赤い糸泳ぎに参加しない?♪」

「よし、ツッコミをしなきゃいけないのはわかったからやる前にその競技の内容の説明をして貰おうか」

「二人の脚をロープで縛って50m泳ぎ切る競技で、やった男の子は絶対に付き合うらしいの♪」

「死ぬじゃん!まさにつり橋効果じゃん!しかもあのプールを行って帰って!?そりゃ相手が男でも親近感沸くわ!知らない男子とでもそれやったらマブダチになれる気がする!」


「ではラブラブ赤い糸・死の瀬戸際!泳ぎに参加する人は挙手してくださ〜い」


 杏樹が自分の腕を挙げながら俺の腕を引っ張って挙げさせる。

「しまった!唐突過ぎてツッコミが浮かばない上に挙手させられてしまった!あぁもう名前が書かれている!しかも先生"死の瀬戸際"を強調したよね!?待ってくれ!俺は参加しないっていうか何で周りの男子が大勢手を挙げてるの!?そんなに人気なの赤い死の瀬戸際は!止めてくれ!辞退します!普段いやだと想っている杏樹とそんなことしたら確実に明日は恋人になっている!」

 というより何でこんなに競争率高いんだこの競技。


 クラスメイトA「俺どっちでも良いな」

 クラスメイトB「いや、俺は杏樹派だな!今年も女性用水着を着て来ると聞いている!」

 クラスメイトC「もしかしたら二条院も女性用水着かも知れないぞ!おぉ、普段むさい学校で可愛い顔の男と付き合えるんだ!」


 なるほど、男子校みたいなところで密閉されると男はこうなるわけか。

 あぁ、明日自殺してこようかな。っていうか俺そんなに女顔なのだろうか。怒り通り越して冷静になってしまった。俺は当日男用の水着で良いのだろうか。胸辺りをじろじろ見られそうな気がする。

「あ、杏樹…俺はどうしたら良いと思う…?」

「あはは、わたしの水着貸してあげようか?予備があるから」

 だいたいお前が水泳大会で女用競泳水着を着たのがそもそもの間違えだったんじゃないのか。やばいな、転校したくなって来た。

 


「ん?その競技あたし達のところでもあるけど」

「赤い死の瀬戸際がぁ?俺は男がもがき苦しむのを楽しく見る為に作った競技だと思うが」

「バカ。あたし達のは"ラブラブ二輪百合花"とかいうやつ。しかも縛るのは腕だしロープも長いわよ」

 なんだ、男側のはお笑い芸人真っ青な罰ゲームなのか。

 俺は杏樹、茉理、茉鶴ちゃんと一緒に屋上で弁当を突付きながら話をしていた。言わずもかな、赤い死の瀬戸際の話である。

 なんの冗談かは知らんがくじ引きは見事に杏樹と俺のペアで死の瀬戸際をやれと言ってきたのだ。あぁ、ここ廃校にならないのかな。なんか細工がしてあったとしか思えない。

「わたしのところにもその競技があって…クラスの女の子に一杯誘われました…」

「あたしもよ。で、逃げて来たら屋上にアンタがいるし」

「それは俺もだ。わかるか、男に『俺の愛の中で溺れて見ないか』とか言われるんだぜ?勢い余って学校で暴れるかも知れん」

 すみません、実は若干廊下で暴れました。消火器振り回しました。

「だけど、まさか学校に男女共用の屋上があるなんて知らなかったな」

「わたしも来たのは初めてなんだけど人っ子一人いないなんて思わなかったよ。これも、わたしとフユの愛があってこそ♪」

 絶対ないからこれは偶然ということにしとこう。

 それにしても、ツルギは今何してるんだろう。まさか俺の押入れを漁ったりしてないよな。あそこには俺の夜の相棒がいるんだ。


 ――――ゴジ○ゴジ○ゴ○ラがやぁて来た〜〜♪

 

「ん?電話…って俺の家電?」

 なぜか俺の部屋の電話番号が携帯の画面に出ていた。まさかツルギか。あいつもう電話掛けられるようになったのか。

 ボタンを押すと電話を耳に当てる。

『お、若造か?』

「おう若造だ。で、なんだツルギ」

 俺の電話相手がツルギとわかったからか、茉鶴ちゃんは嬉しそうにしている。ツルギが元気だとわかったからだろうか。

『なに、実はだな。押入れの扉を開けたら箱があってな?開けたら"ロリッ子だらけ"とか"ゴスロリプッシュ"という表紙の本を見付けたんだが、何やら女体(にょたい)だらけのこの本は何だ?』

「――――――――――」

 なんだ、今日は俺に地獄を見せてやろうという悪魔の計らいなのか。

「良いかツルギ。その本をちゃんと箱に戻して押入れに入れるんだ。良いなッ?」

『むぅ…ならば茉鶴に代わってくれまいか?』

 何だろう、茉鶴ちゃんに用件があるのか。まぁ、相棒を隠してくれるなら良いんだ。

 茉鶴ちゃんに携帯電話を渡して「ツルギが代わってくれって」と言うと、茉鶴ちゃんは嬉しそうにそれを受け取る。うん、可愛い子だ。

 俺が弁当を再び食べ始めると、茉鶴ちゃんはいきなり顔から湯気を出した。

「…もってけクラスメイト…?」

「ぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ―――――――――ッ!!!!!」

 俺は相棒の名前が茉鶴ちゃんの口から出て米を吹き出した。そりゃいきなり言われたら吹き出すって。

「お、おい待て茉理…」

 茉理はそれを無視し、固まってる茉鶴ちゃんから携帯を受け取る。


 その後、俺は見事に今朝先生が言ったとおり保健室行きになってしまった。なんと歩けないほどの傷を負ってしまったのだ。理由は言わずとも…。

 ついでに俺の相棒は全て焼き払われてしまった。お粗末。

今回はギャグ少なめでおおくりしました。

最近ツルギの出番がドンドン少なくなってきたような気がする…気のせいだろうか。

とにかく無事に書き終えたからよしとしよう。


しかしまぁ、なんというか全体のキャラが壊れつつある今日この頃。

まずいなぁ、いつかこれは誰だとか思うようになるんだろうなぁ。

一話目からいきなり10話を読むとわけがわからなくなりそうな気がする。

ツルギは出番が無いからキャラの変わりようが無い…。良いのか悪いのかわからない。

次の話はきっと二話構成になると思います。

次話もよろしくお願いします。

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