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十伍ノ太刀【底辺を貫け!わがまま食欲!】

 婆ちゃんはもう死んじゃってるし、ジジィは何を食っているのだろうか。

 実際、茉理がジジィに何か食べ物を運んでいくところを見たことはないわけだし、裏の山菜でも食ってるのだろうか。草食動物なのかあのジジィは。

 まぁ腹を空かせてようと関係ないな。俺はあのジジィに何年も寿命縮められてるわけだし。

 しかし、あのジジィはもしかして光合成でもしてるのだろうか。いや、あのジジィならしかねないな。髪の色が緑になったりして。

 もしくは空気が飯なのか。いや、どっちでも良いんだけどな。



「むぐむぐ…♪」

 目の前でツルギが嬉しそうに昼食を食べている。箸の使い方は本当に上手いもので掴んだ物は取り落としていない。黒豆を軽々と掴み口に運んでいる。

 そして右手にはお茶碗。

「まぁ、前から思ってはいたけどな…お前なんでそんなに食うんだ?」

 炊いた3合のご飯がもう無くなってしまいそうである。6人前を嬉しそうに軽々と食べている。どこだ、その飯はどこに消えている。

 パクパクと食べながらおかずを摘む。

 茉鶴ちゃんは見事に動じていない。その隣で茉理がツルギを恨めしそうに見ている。

「何でそんなに食べて太んないのよ…」

 それだけで親の仇みたいに睨むのはどうかと思うぞ。

 俺達が食い終わった後もまだまだ食べるツルギ。茉鶴ちゃんが新しく米を早炊きしている。おかずが無くなりそうだ。というわけで俺も席を立つ。

「あいつの腹はブラックホールか…」

「きっと、育ち盛りなんですよ。こちらも作り甲斐がありますから嬉しいです♪」

 俺はそこまで料理が好きな訳でもないのだが、この専門料理人は結構レベルアップになってくれる。今までより二倍くらいレパートリーが増えてしまった。

 エプロンを着け、台所に立つ。今日はこれで3度目である。

「出汁巻き卵と…チーズナス。それに…何にするか」

「ホウレン草の和え物とかどうですか?早く作れますし」

「お、それだ。よし、ゴマで和えて見るか…」


 どんだけ家の食材を消費するんだ、あの不思議刀娘は。


「可笑しいと思うのよ!だいたい、なんであの子あんなに食べるの太らないの!?」

 商店街に大量の買い物袋を抱えた少年と、その前をズカズカと歩く少女。俺と茉理である。

 見事に冷蔵庫から食材が消えて今はそれの補充の為の買い物中。というよりこんなに買う必要はあるのだろうか。しかも律儀に安売りしている物ばかりである。

「いやまぁ…最初の方は賛成だが後者は…」

 俺が意見しようとすると振り返ってガルルルと声を出しそうな茉理さん。背後にゴ○ラがそびえ立っているようにも見える。あぁ、ゴジ○が口から光線を――、

「だいたい全部アンタが悪いんだから!あの子を連れて着たのはアンタでしょ!?」


 ギャォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――ッッッッ!!!!!(○ジラの咆哮)


「どうどう茉理さん。素が出ています」

「…………先ずあの子の食欲をどうにかしなきゃいけないと思うのよ…じゃないとあたしの苦労が報われないじゃない」

 そういうと、茉理は俺の持っているビニール袋から一本の小瓶を取り出す。

『青い!食紅!』と毒々しいラベルの貼ってある小瓶だ。なんだか嫌な予感がする。

「これを料理に入れれば、嫌でも食欲が落ちるでしょ…?」

「お前は悪魔か!?止めてくれ!それ俺と茉鶴ちゃんにもダメージ来るだろ!?」

「ただ食べ物が青く染まるだけじゃない!食べれる物だから良いでしょ!なによ、アンタなんてジャンクフードばっかり食べてるじゃない三分男!」

「俺は三歩しか記憶が持たないニワトリと同等か!?酷いよね酷いよね!日○その他三分カップラーメンを作ってる会社に謝れ!?」

 バカみたいな会話を繰り返していると周りからヒソヒソ話が聞こえて来る。

 あぁ、どうやら周りの人には俺と茉理が痴話喧嘩をしてるように見えたようだ。噂好きの奥さん達の好奇な視線視線。

 隣の茉理はそれに気付くと耳まで真っ赤になるほど赤くなり――、


「は、はわ…はわ…はわ…ハワワ…」

 ―――――――ピュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ゥゥ…ボンッ


 茉理が犬の犬種のチワワを掛けたらしい言葉を言った後、顔から蒸気を出した。

 お前やっぱりあれだな。漫画とかアニメの世界の住人だな。いつかやってくれると思ってたぜ俺は。

「し、し、しししシシシ死ねェエエエエエエエ〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!」

「ぶほぅッ!?なんで俺が殴られなきゃいけないの!?違うよね!明らかに俺関係ないじゃゲフゥ!」

 その他通行客になろうとしていた俺を掴まえると茉理が拳の連打を繰り出して来る。

 いや、関係ないとまでは言わないけどこれは俺のせいではない。絶対に違うんだ神に誓って。

「うるさいうるさいうるさ―――いッ!!死ね!死んで詫びなさい!」

「チョブッ!ベブラッ!なに!?何に詫びなきゃグホゥ!」


 ―――――バスッズドッシュトーンッゴガンッ

 キャいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんッッッッッッ!!!!!!!????


 二条院…夏。逆恨みという言葉を始めて心の底から理解した時だった。



「というかさ…明日から授業なのに体ボロボロってどうよ…」

「と、とりあえず応急処置はしたのでなんとかなるかと…。あ、お兄ちゃん、パイナップル取ってくれますか?」

 俺は茉鶴ちゃんの隣で体に鞭を打ちながら夕飯のカレーを煮込んでいた。少しドロドロな方が好みなのである。

 今は安いタッパーのパイナップルを茉鶴ちゃんがカレーに入れている。

 というか――、


「ほら、ちゃんと(かわ)かすの!畳が濡れちゃうじゃない!」

「ぬぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!止めるのじゃぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!吾自慢の銀髪をぐしゃぐしゃにするなぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!」

「大人しくしなさい!ほら、ドライヤー当てるからジッとしてなさい!」

「にゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!熱風が!熱風が髪に掛かっているのじゃぁぁぁぁ!!!若造ぉぉ〜〜!!!助けるのじゃぁぁぁぁぁ〜〜!!」


 誰が人を名前で呼ばん奴を助けるか。

 一緒に風呂に入ると、茉理とツルギは髪で喧嘩をする。ツルギは訳もわからない機械から出る熱風が苦痛でしかないらしい。しかし、綺麗な髪だから仕方ない。乾かさなきゃ風邪を引くし枝毛も出てしまう。

 茉理は茉理で半月以上一緒にいるとツルギといることが少し楽しくなっているようだ。小動物みたいだから世話を焼きたくなるのもわかるけどな。

「まったく、最初から大人しくしてれば良いのよ。ほら、髪梳かしてあげるから、こっち来なさい」

「むぅ…わかったのじゃ」

 不服そうにしながらも茉理の膝の上に座るツルギ。髪の色は違うけど、こう見ると性格も姉妹みたいに似ているのだ。

「なんだかんだ言っても、お姉ちゃんは可愛い物好きですから。ツルギちゃん、ちっちゃいですから…………ね」

 ツルギのことを小さい子と言った茉鶴ちゃんのテンションが下がる。確かに茉鶴ちゃんはツルギに匹敵するものがあるけども。

「ま、茉鶴ちゃんもツルギも、可愛いから良いじゃないか。今のままじゃ確かに問題ありかも知れないけど、年で大きくなるんだから、自分に自身持っとこうよ。俺だって女顔だけど…ね」

 俺が言うと茉鶴ちゃんは少し間を空けたが、ちゃんと笑ってくれた。

「は、はい」

「さぁ〜〜て、そんじゃあの暴食魔人が鍋一個分のカレーをどこまで食えるか試してみようか」

「…はい、そうですね♪」

「ほら餓鬼〜!せめて運ぶのだけでも手伝え〜!」

「誰がガキじゃガキ〜〜〜ッッッ!!!」

あとがきは次回にさせて頂きます。

楽しんで頂けたら幸いです。

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