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十四ノ太刀【人のコンレスを抉る以上に悪いことはないッby冬兎】

 転校生というのは少なからず…いや、かなり緊張する。

 担任の先生に会ってから何回かトイレを往復し、必ず「大丈夫ですかー?」と声を掛けられる。大丈夫じゃない、俺は知らない人がいる教室に放り込まれてケロッとしていれるほど強情じゃない。

 繊細なんだ。俺の心はガラスなんだ。

 まぁ、自分でもそのガラスが主に祖父と茉理の性で黒く染まっているのはわかる。

 友達は出来るのだろうか。

 男子の校舎と女子の校舎は分かれているので、どうやら友達いなかった時のヘルプ茉鶴ちゃんは頼れない。話し相手がいないと溜まるストレス。そして茉理の暴力で肥大化するストレス。更に更に新しく現れたストレス要因のツルギ。

 胃炎に将来なるかも知れない。いや、もう胃が痛くなってるから間近だな。末期だ末期。



 そんなこんなで新しい教室の扉の前に立っているのだが――、

 本当に逃げて良いですか?俺もうニートで良いんで?いや、いいんすよニートで。最悪フリーターになりますから。夢追いますから。

「さ、二条院くん、入ってくださーい」

 先生の声が聞こえて来た。扉に手を掛けてからその腕を押さえる。

 待て!今なら引き返せる!八王子に帰って友達と語り合おうぜ!パンツを破き合うレスリングみたいなのでも良いから心の底から語り合おうぜッ!


 ―――――ガラッ

 諦め半分の意気消沈ムードを抱え俺は教壇にいる先生の隣に立つ。


 ――おい、あれ女じゃねぇの?

 ――待て好みだ俺はッ。良いなこのクラス…!若本もいるし男子校舎の潤いだ…ッ。

 ――男装美少女萌えェェェエエエエエ…ッッ!!!


 こめかみに効果音が入った。主に女とか言われたことに。

 先生に「どうぞッ」と白チョークを渡される。なるほど、黒板に名前を書けということか。

二条院(ニジョウイン) 冬兎(トウト)

 そう書くと「名前も女だ」という呟きが聞こえて、効果音が増す。人のコンプレックスを抉るのはいけないと思う。

「冬兎って言います。八王子の方からとある用事で神戸に来ました。宜しくお願いします」

 今度は女声という声がする。抉るな、声変わりしてないけど言うな。茉理にかなりからかわれたことがあるんだから傷口を抉るな。

「はい、先生。二条院くんの席は委員長であるわたしの隣が相応しいと思うのですが、どうでしょうか」

 おぉ、男の校舎でもわたしとか言うやついるんだな。杏樹だけかと思って―――、


(なんでお前がここにいる!?)

(わたしのクラスがフユと違うって可能性しか考えなかったの?甘いよ甘い。フユは昔から少し可能性の分岐点が少ないよ。そこも好きなんだけどね♪)


 心での意思会話が成立したのか、窓側にいるあいつの言葉が手に取るようにわかる。

 しかし、なんで男子校舎にいて委員長までやってるお前だけ女子の制服なんだ。可笑しいだろ。お前等、もう慣れたみたいな顔をするな。徹底講義しろ。

 だが先生はそれを認めたのか、杏樹の隣一列を一つずつずらさせて、席の空きを作る。

 まぁ、あれだ。友達作る手間が省けて万歳三唱ということにしておこう。さもなくば心が折れそうだ。

「若本くんは二条院くんとお知り合いなんですか。なら案内も任せて良いで――」


「いいえ♪知り合いじゃなくて心も体もむさぼり合う仲でふにゅっ」

「お前は黙って!?これ以上俺に心労という重りを乗せないで!?先生!さっさと始めましょうホームルーム!」


 素早く杏樹に近付くと口を塞ぐ。危ない、俺の学園生活が一瞬で薔薇(ホモ)劇場に変わるところだった。茶番だ茶番。

 俺はカバンを隣のフックに掛けると、杏樹を睨む。

「いやん、そんなに見つめられると子供が出来ちゃう…♪」

「それだ…!止めろ…!俺がそっち系に見られたらどうする…!兄貴とやらないか?な関係だと思われたらどう責任取る…!」

「もうわたしがフユの夫になるしかないね…♪一戸建ての家でお庭があって子供が二人いて、お仕事から帰ったらフユがご飯にする?お風呂にする?それともオ、レ?って…きゃ…♪」

「随分と自分勝手な夢なことでぇ…ッ!?だいたい、読者サービスなら妻はお前だろ…!」


『お帰りフユ♪今日もお疲れ様ッ。お仕事大変だったでしょ?ご飯も出来てるしお風呂も沸いてるよ。あ、それとも…もしかして――わ、た、し?♪♪♪(読者サービス故に過激な場面もお許し下さい)』


 俺は机に激しく頭を打ち付ける。

 やめろ、お前は自覚無しなんだろうが堀江由衣の声に似てるんだよ!妄想だけだと女の子の体になってやがる。男の妄想は果てし無い。

「こらこら和兎(カズト)、ダメでしょ〜。あ〜もう、冬杏(フユリ)も〜♪メっでしょ〜♪」

 子供の名前を付けるな。甘い声で叱るな。ていうか先ず妄想に溺れるな。だいたい男×男なら子供は出来ん。

 杏樹が妄想をしている間にドンドンとホームルームが進んで行く。

 俺は後で職員室に教科書を取りに来てくれと言われ、それでホームルーム終了。

「もう、フユったら…♪子供が出来ても甘えん坊さんなんだから―――え?チャイム?」

「ホームルームが終わったんだよ。お前がオーバーヒートをかましている間にな」

「だ、だって…フユがあんなに激しく求めて来るから…♪」

 はい、もう独り言を言っていると言うことにしましょう。そういえば茉鶴ちゃんに早く帰って来てくれって言われてたっけ。

 先生に教科書を頂いてさっさと帰りますか。


「いやん、もうフユったら…あ、あれ?フユ〜フユ〜ッ!わたしのフユ〜!」


 

 なんだか寒気がする。有らぬことを言われているような気がする。なんだろうこの鳥肌。

 俺は職員室で「はい、これで全部ねッ!」と言いながら何冊もの教科書を渡そうとしてよろけた教師を受け止め、本をバッグに詰めた後、すぐに校舎から脱出して来たのだ。あのまま校舎内にいたならば杏樹が追って来たことだろう。くわばらくわばら。

 さっさと帰るかと通学路を戻ろうとした時、いきなり襟首を掴まれた。

「ぐぇぇぇぇぇぇぇ……ッッ」

 息が詰まって死に掛けたが、咳き込んだだけで済んだ。

 もう見なくてもこんなことするやつは俺の中で一人だけしかいない。いや、最近やりそうな小生意気な餓鬼が一体増えたが。

「…何、先に帰ろうとしてんのよ」

「茉理さん。先に帰るも何も俺は君と約束した覚えがない――ぐぇぇぇぇ」


「…………………脚…怪我…ちゃったの…」


 途切れ途切れの言葉だったので上手く聞き取れなかったのだが、脚という言葉に下を向く。

 茉理の細い脚、左足のニーソックスが脱げており、そこには白い包帯が丁寧に巻かれている。

「茉理ちゃ〜んッ!動いちゃダメなんだってば〜!」

 遠くから慌てた表情で走り寄って来るポニーテールの女の子。

 本校生の制服を着ており、リボンの色が青。一年生の証である。俺と同い年の子か。

「大丈夫ですよ先輩。これくらい慣れてますし、鈍っちゃいますから」

「ダメだよ!茉理ちゃん、わたしをかばって階段から落ちちゃったんだから、傷の手当てはわたしがしなきゃ……へ?」

 女の子が俺の方を向く。

 いや、ホントに真正面から見ると可愛い。茉理も外見だけでは引けを取らないが、目の前の子からは気品のようなものを感じる…気がしたがあの慌て様で吹き飛んだ。

「あ、もしかして、君が二条院くん?」

 どうやら茉理はこの人に色々と俺のことを話しているみたいだ。

「そうなんだが…」

「なるほどなるほど…。だけど、茉理ちゃんはもっとこう…ギラギラした目付きの人で何処からでも掛かって来い、みたいな人が好みだと思ったんだけど…うん、でも優しそうな人だね。うんうん、茉理ちゃん、わたしは応援してるからね」

「な、なななな何を言ってるんですか先輩ッ!?」

 しかしなんだ。茉理にはやっぱりお堅い奴じゃなくてこういう大人しくて優しそうな人が合いそうだな。


「わたしは鐘茜卯(レイセンウ) 美琴(ミコト)。宜しくね、二条院くん」


「あぁ、こちらこそ………って、鐘茜卯!?あの、音楽器具総まとめにしてる鐘茜卯グループだよな!」

 鐘茜卯と言えば音楽に携わってる奴なら知らない人はいない。

 バイオリンからオルガン。はたまたエレキギターまで多く取り扱い、それ全てが満足という感想ばかりという大会社。楽器だけしか取り扱って無くても、裏を返せば楽器なら右に出る者がいないグループだ。

 何を隠そう俺も鐘茜卯の作ったギターを愛用してたりする。

「そ、そうなんだけど……」

 まずい。鐘茜卯さんがドン引きしている。しかも苗字が一緒だからって漢字が違うこともあり得た筈なのに何舞い上がってるんだ俺ッ。

「あのさ―――あたし、怪我してるんだけど」

「ん?あ、すまん、完璧に忘れてた。なんだ、おんぶでもしてやろうガッ!!!?」


 教訓。思ったことを口に出すと殺される可能性があるから気をつけろ。

どうでしたか?主人公がめだってたでしょうそうでしょう。

だって目立たせようとしたんですから!


―――ザシュリッ


すみませんすみません主人公の外見が曖昧だからやりたかったんですごめんなさい。

新しい子は全然話になっていないし…どうしよう。

次回もよろしくお願いします。

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