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十弐ノ太刀【珈琲一杯で喫茶店に何分いれる?】

 月と言うものをもう一度見れるとは思わなかった。

 吾の目には丸い月と散りばめられた星が光っている。後ろには寝息を立てながら寝ている小僧の姿。

 障子(しょうじ)を開けて、外に脚を出しながら熱に体を火照らせる。夏というものは良い。冬が嫌いではないなわけではないが、寒いのが苦手なのだ。着物を何枚重ねても体が震えてしまう。

 吾の中で刀達が感動したように震える。やはり感性は吾と同じなのか、嬉しい気持ちになる。

 今夜も月が瞬いている。それだけのことだ。

 目に眩しく、そして懐かしい気持ちになるのに、何故こんなにも吾の心を締め付ける。吾は――――――何を忘れているというのだ。



 茉理の横に少し引き攣った笑みを浮かべた茉鶴ちゃん。その肩には眠そうに顔を掻いているトラジロウの姿。

「警察に追い回されるなんて生涯無いと思ってたのになぁ」

「お、お兄ちゃん、ごめんね!わたしがお姉ちゃんにお買い物に行こうなんて言ったから…」

「あぁ、田村ゆかりさんみたいな声で言わないでくれ!大丈夫だから!茉鶴ちゃんは悪くないから!全部怪獣ゴ○ラが悪いんだから!」


 ――――ニジョウインくん吹き飛ばされた――――ッッッ!!!


 俺はコンクリートの地面に横たわりながら蒸気を出している。

「思ったことを口に出してしまった……」

 ゴジ○というツーテール相手に指を指しながら。

「なんだか空を舞ったような気がするけど、大丈夫、フユ?」

 茉理のアッパーカットで飛んだ俺に手を差し伸べてくれる杏樹。あぁ、杏樹。今なら本気でいえるよ。お前が女なら良かったのに…ッ。

 そして顔を上げた途端に黒いストッキングの間に見える白い下着。

「う〜ん、クラッチ」


 ――――バキッボコッドスッボゴンッ!!!!


「アンタってほんッッッとに節操無しよねッッ!!!」

「もう、フユのエッチ…♪」

 何で見られていない茉理が俺に怒涛の猛攻撃を仕掛けてくるのかわからないけど俺からの蒸気の排出量が増えた。温暖化に悪い意味で貢献中。

 今なら架空の境界線すら見えてしまいそうだ。

「あの、お姉ちゃん…そちらの方は?」

 茉鶴ちゃんは今の杏樹を知らないんだろう。子供の頃は普通に男の格好してたしなぁ。

「若本 杏樹よ。お久し振り、茉鶴ちゃん♪」

 人差し指を口に当て、悪戯っ子のように笑顔を作る。

 一方、茉鶴ちゃんは杏樹という名前の女友達がいたかを詮索中らしい。苦戦しているようだ、当たり前である。杏樹なんて女の友達は茉鶴ちゃんにも俺にもいない。男ならいるけどなッ。

「杏樹さん……って、確かわたしの知る限り男の子だったような…」

 茉鶴ちゃんが困惑しているのをこれ以上見て置けない俺は立ち上がって杏樹の肩を借りる。

 それで人差し指を杏樹の頬につけながら「こいつ、男」と教えてあげた。

「―――――――――――――え?」

 物凄い間を開けてから茉鶴ちゃんはやっと一文字だけ口にする。

 その表情は自分の部屋で異臭を漂わせるカメムシの死骸を見るような顔だ。もしくはカサカサ動き回る黒い悪魔を見たような。

「女の人…ですよね?」

「うん、外見だけはね♪結構似合ってると思うんだけど、どうかな」

 化粧をしなくても完璧に美少女だからなこいつは。ある意味で怖いわ。

 しかし場が和んでいた次の瞬間――――茉鶴ちゃん失神。綺麗に横に倒れた。トラジロウは危険を察したのか、バッと俺の顔に飛びついて来た。爪が痛い。



 まぁそりゃね、昔遊んだ友達がいきなり女になってたら俺でも倒れるわ。

 俺達は、ツルギを一度連れて来たカフェに茉鶴ちゃんを休ませる為に入店。

 俺はまたも普通のアイスコーヒーで済ませている。皆はカフェラテやカプチーノと様々だ。

「アンタ、たまには別の頼んだら?」

「100円の違いでも節約したいんだよ。それに、もう慣れたしな」

 奥のテーブルにある長椅子に茉鶴ちゃんを寝かせてから、俺達は普通の椅子に腰掛けた。

「フユは、ガムシロップ一個だよね」

 杏樹が角砂糖をアイスコーヒーに入れようとしたので抑える。

「俺はブラックで良いんだ。茉理のやつに入れてやってくれ」

「あたしのは普通に甘いわよ!っていうかアンタを挟んで座ってるんだから無理じゃない!」

 カプチーノをテーブルに置くと抗議してくる。おぉ、真横だと迫力が違うな。

「目尻に涙溜めて言う台詞じゃねぇな!カプチーノでも苦いの!?」

「うるさいうるさいうるさい!アンタは黙ってブラックでもなんでも飲んでれば良いのよ!」

「酷い!俺だって砂糖とかガムシロも使います!」

 甘党と苦党の論争。


「仲良いね二人とも。ちょっと妬けちゃうなぁ〜」


 俺と茉理はどうやら同じタイミングで杏樹の方向に向いたようだ。杏樹は口元を押さえて笑っている。

「このバカとあたしの仲が良いですって!?」

「バカ!ゴジ○とガメ○みたいなもんだ―――ゾッッッ!!!!?」

 言ったと同時に俺の顔が苦痛に歪む。茉理が足の甲を踏んできやがったのだ。

 アイスコーヒーのグラスを力一杯握り締め、口から声が出るのを堪える。

「でも、明後日にはもう学校だしね。わたしにも挽回のチャンスはあるね…」

 何の挽回だと聞こうとしたが足が痛くて今度は声が出ない。

「………………そうだ…学校まで後二日しかないんだ…」

 いや、夏休みの終わりには確かにちょっと(うつ)入るけど、この入り方は以上だろう。なんだ、明後日でこの世が終わりなのかお前は。

 だけど夏休みの課題でギャァーギャァー言わないのはいつも通りに終わらせているってことなんだろう。

「まぁ、勉強嫌いだからなぁ…」

 そう言いながら俯いた茉理の頭を撫でると顔面にトラジロウが飛来。困ったような表情をしていた。

「………トラジロウは武器じゃぁないぞ」

「良いのよ、擦り寄って来てたから武器にしてって言ってるのと同じ」

 俺は顔面に傷跡を残しながらトラジロウを引き剥がす。かなりの痛さだ。

「大体お前は何でもかんでも―――」

「アンタは存在自体が―――」


「「大雑把なんだッッッッ!!!!」」


 その日、あるカフェの中で杏樹の笑い声と俺の悲鳴が木霊した。

 こんなんで本当にちゃんとした学園生活なんて送れるのだろうか……ガクッ。

今回も最後の最後で主人公の悲鳴が響きました。

絵でも描いてありますが主人公は美少女顔です。えぇ、僕の趣味が混じっています。


今回は普通のギャグだけで終ってしまいましたが、暴力沙汰が多かったですね。

えっと、今回は新キャラを目立たせるだけの話だったので、余りデカイギャグはしませんでした。

杏樹の苗字、若本というのは声優のあの方から貰いました。

アナゴさん良いよアナゴさん。

わかる人はわかるというやつでしょうか。


考えてみればもう十話を越えている。早いものですね。

やってみると中々大変なところもありますが、それ以上に文章を書くのが楽しいです。

タイピングが最近早くなっていますから打つのが大分楽になっていますしね。


それではまた次回。

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