表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/48

優梨奈誘拐事件⑨ 救出


姫ちゃんと出会ったのは自宅警備員になって間も無くだった。


私とお姉ちゃんのが少し早く自宅警備員になっていて姫ちゃんはまだなったばかりだった。



両親の反対を押し切り高校卒業後に上京し自宅警備隊に応募した。


姉は大学進学を断念し私のワガママに付き合う形で一緒に上京した。


私は自立したかったーー


このままでは姉がいなければ何も出来ない人間になってしまうと思ったからだ。


何があっても全て私が手を出す前に姉がやってしまう。


正直今回の上京も一人で来たかったし自分の為だと思っていたのにーー



そんな事を思いながら自宅警備員の活動内容などの説明を聞いていた。


姉は事細かに難しい質問をいくつも聞いては納得いかない部分を更に詳しく聞き直し担当者を困らせていた。


第九支部が私たちの管轄エリアになった。



初の任務時に私たち姉妹にとって衝撃的な出来事がおきた。





「お、おねちゃ・・・おねえちゃん」


自分の首を触って確かめる柚葉。


「ゆず、あなた言葉がーー」


「お姉ちゃん、私ちゃんと言葉話せるよ」


抱き合う姉妹、ニヤけていた表情もほとんどなくなっていた。


「ゆず、良かったわね。でもね、お姉ちゃんはどんなゆずでも大好きよ」


「ーー分かってるよ。でも、私のせいで辛いこと我慢してきたこと私、知ってるから。本当はお姉ちゃんには好きなこといっぱいしてほしいの」


「ゆず・・・」


柚葉は白い歯を見せて笑顔を浮かべていた。


乙葉は初めて見た妹の本当の笑顔だった。

その笑顔の眩しさと愛らしさは今後忘れることなく胸に刻まれた。



更に姉妹の絆が強まった二人は自宅警備員としても無敵のコンビだった。


第九支部の早坂姉妹の名は瞬く間に広まった。



ーーそんなある日のことだった。



乙坂姉妹がいつものようにクリーチャー討伐に繰り出していると見慣れない少女の姿を発見した。


「お姉ちゃん、あの子・・・」


「見慣れない子ね。同じ地区に私たちと同じ年齢の子がいたのね」


一体のクリーチャーが見慣れない少女に銃口を定めていたーー


「ーーヤバイ!あの子気付いてない」


柚葉がいち早く察知し少女に向かって駆け出すーー


「ーーゆず!! ーー全くもう」


乙葉はため息を吐き、少女と柚葉に向かって演唱を始めた。


クリーチャーが少女に向かって発泡した。


「ーー避けて!!」

柚葉は間に合わないと分かり大声で叫んだ。


その声に反応し柚葉と目が合う少女。


バンッ


銃弾は乙葉が創った魔導障壁により回避された。


「ーーお姉ちゃん」

地面に膝間付いて安堵の表情を浮かべた柚葉。


「コラ、勝手に無謀な行動をしない!」

柚葉の頭をポンと叩いた。


「えへへ、ゴメンね」

舌を出して笑顔を見せる柚葉。


そんな二人のやり取りを不思議そうに見つめる少女。


「あなたは誰? 何故ここにいるの?危険よ」


「私は今日、自宅警備員になった乙姫 可憐と言います。宜しくです」


その少女は酷く痩せ細っており服も薄汚れていてまるでホームレスのような印象を受けた。


しかし何処と無く気品のある雰囲気はあり、顔立ちも良くオシャレをすれば綺麗なんだろうなと早坂姉妹は思った。


「初心者でクリーチャーを相手にするのは危険よ。説明は一通り受けたの?」


「ええ、口頭では教えていただいたのですが実戦は経験がないのでどうやってチェンジするのか迷っていたところなんです」


可憐は苦笑いを浮かべいた。


それを見て乙葉は溜め息を吐いているとーー


「私が教えてあげるよ」

柚葉が可憐の隣に行き使い方をレクチャーしてあげた。


「なるほど、ありがとうございます」


「えへへ、同じ第九支部じゃん。同い年の子ほとんどいないし、仲良くしてね」


「こちらこそ、私もお友達誰も居なかったから凄く不安だったの。だから同い年のお友達凄く嬉しい」


「私は早坂 柚葉で隣がお姉ちゃんの早坂 乙葉、双子の姉妹だよ」


「私は乙姫 可憐改めて宜しくね」


三人は手を握って微笑んだ。


これが三人の初めての出会いだったーー





私、初めてお友達が出来んたんだよ。


ねえ、あなたは嬉しくなった?


私は、凄く嬉しかった。



毎日三人でいるのが凄く嬉しかった。



ねえ、だからーーーー



「姫ちゃんもう辞めてよ。大切な友達を傷つけちゃ駄目だよ」



可憐に抱き付いた柚葉。


やっと乙姫可憐の元に届いた時、カケルの魔導力も底をつきレイブルは解かれた。


「・・・ゆず? わたしは一体」


「姫ちゃん良かった、元に戻ったのね」


柚葉の瞳から大粒の涙が溢れ落ちた。


「ゆず・・・」


可憐はそっと柚葉の頭を撫でた。


「姫ちゃん、また暴走してたのよ。柚葉と神崎カケルが身を呈して止めてくれたのよ」


乙葉がゆっくりと二人に近づく。


「私また・・・私・・・」

可憐が両手で顔を覆ったーー


「姫ちゃんもう一人で悩みを抱えないで、私たちが側にいるよ!姫ちゃんは一人じゃないから」

柚葉は力強く可憐を抱き締めた。


「ゆず・・・」


「そうよ、姫ちゃんは一人じゃないわ。何でも相談して」




ーーだって私たちは友達だもん。






こうして、優梨奈誘拐事件の長い一日は幕を閉じたーー


第九支部に勝利したことにより残るは第十二支部と第一支部『道化師』のみとなった。




★ ★ ★



「神崎カケル、世話になったわね」


「特に何もしてないよ。全部柚葉さんの友達を思う強い気持ちが解決したんだと思うよ」


その言葉に笑顔を見せて顔を合わせる可憐と早坂姉妹。


「ーー第九支部は鏡面戦線を離脱する。そうなれば残りは第一支部だけになる。頂上が見えたな! ご武運を祈る」


可憐は笑顔を見せた。


「ーー第一支部はどんな支部なんだ?」


「ーーーー!」


可憐と早坂姉妹は妙な反応を示し三人で顔を見合わせ意外といった感じで目を丸くした。


「第一支部のリーダーはーー」



その言葉と第一支部の実態を知らされた時に何だか全てが繋がった気がしたーー



誰かが言ってた僕たちはこの鏡面世界で実験されている。


全てはこの為だったのか?




『第一支部のリーダーはDr.ドリトルでメンバーはパペット、謂わゆる新種のクリーチャよ』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ