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速水 千夏


「エリカちゃんってカケルくんのこと好きでしょ?」


「えーなんで?そんなこと聞くのよ」


「じゃあ好きじゃないの?」


「ーーす、好きだよ」


「どんな所が好きなの?」

目をキラキラさせる千夏。


「どんなって言うか・・・私さ、あんまり学校とかにいい思い出なくて。友達とか全然いなかったから本当に人を好きになった事なかったのよ。男の人とこうやって毎日会って他愛もない話して笑って過ごすことなんて今まで一度もなかった。自宅警備員になって神崎カケルの名前は知っていた。スコアリーダーでランクAとかどんな人だろうって思った。きっとオラオラで自分が一番だみたいな人だと思ってた・・・」


エリカは前髪を自分の人差し指にくるくると巻きつけながら続ける。


「ーーけど、カケちゃんから第十二支部のメンバーで集会をやるってメールきて初めてカケちゃんに会って、その後戦闘になって抱き抱えられて助けられて・・・あの瞬間に胸が締め付けられる位嬉しくて私、この人しかいないって思ったの」


顔を真っ赤にして千夏に笑顔で話すエリカ。


「エリカちゃん本当にカケルくんのことが大好きなんだね。カケルくんのこと喋ってるエリカちゃん可愛いの」


顔を手で覆いながら、

「ちょっと、からかわないでよ。千夏こそ好きなの人いないの?」


「ーーーー」


「千夏?」


「ーー私は、好きな人を捜すために自分で志願して自宅警備員になったの」


「千夏、志願者だったの?」


「私ね、アニメオタクだからクラスではいつも一人浮いてた。チビで鈍間でオタクだから誰にも相手にされず、居ても居なくても変わらない存在だった。ある日席替えがあって隣になった男子が『速水の隣とかマヂキモい。誰か変わってくんない』その男子の一言をきっかけにイジメが始まったの。毎日、キモいとか言われて机やノート、教科書に落書きされてーー本当学校行くの辛くて、結局そのまま家に閉じこもってしまったの」


肩を震わせ声も震えていた。


「チャットでイジメられていて辛くて死にたいと書き込みをしたの。あの時は本当に死にたいと思っていたの。だから、誰かに自分の気持ちを知ってほしかったの。誰かに優しい言葉をかけてほしかった。そんな時にチャットで励ましてくれた人がいたの。その人も引きこもっている人だったけど私のこと本当に心配してくれてどんな相談にものってくれた。

嬉しかった。誰かに話を聞いてもらえて。

初めて一人じゃないって思えたの。

その人とは毎日、毎日チャットで連絡を取り合っていつしかそれが当たり前になっていた。

だけどある日ーー」

千夏は、窓に映る自分の姿をぼんやりと見つめながら続けた。


「その人から連絡があって自宅警備員に召集されたと言われたの。いつもは決まった時間にチャットをしていたけどその人が自宅警備員になってからは時間もなかなか合わなくなってきてしまったの。

ある時その人から『一度会ってみない?』って誘われたの。

嬉しかった。私も心の片隅には会いたい気持ちがあったから。

ただーー自分に自信が無かった。

会ってガッカリさせたらどうしよう?

気持ち悪いと思われたらどうしよう?

もうチャットも連絡もしてくれなかったらどうしよう?

そんな事ばかり考えてたら急に会うのが怖くなって断ってしまった。

それを境にその人とは連絡が次第に取れなくなってしまったの」

千夏は、大きくため息を吐いた。


「ーーだから、私は自宅警備員に志願してその人に今度は自分から会いに行くと決めたの」


「その人の名前とか分かってるの?」

「チャットネームとあと本名のイニシャルなのかな?K・Kってことまで分かってるの」

エリカは、心臓が飛び出そうなほど驚いた。

( K・Kって神崎 カケルじゃないよね? )


「エリカちゃん今、カケルくんじゃないよね?って思ったでしょ」

「えっ? そんなことないわよ」

千夏は、悪戯っぽく笑った。


「カケルくんは、チャットとかしなさそうだもん。チャットの感じの人とカケルくんだと何かタイプ違うから違うと思うよ」

千夏の笑顔とその話でエリカは少しホッとした。


「千夏がその人見つかるように私も応援するね」


「うん、ありがとう。私もエリカちゃんのこと応援してるからね」



『 keyくんへ


お久しぶりです。お元気ですか?

自宅警備員は忙しいですか?


私も自宅警備員の仕事に就くことが出来き毎日一生懸命に戦っています。


私のいる第十二支部は人数が少なく大変だけど信頼できる仲間と毎日楽しく過ごします。


keyくんに会ってみたいです。

この前は自分に自信がなくて嫌われたくなくて拒否してしまったけど今度は胸をはって会える自信があります。

keyくんさえ良ければ会って下さい。


お会いできるの楽しみにしてます。


ちい』

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