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老婆を通じての大学生ラブストーリー

ある日、いつも通り大学へ行こうとしていたダイスケは、たまたまある老婆と出会う。この老婆とひょんなことで再会し、この出会いが大学で友達のいなかったダイスケを変えることになるのだが…

「はぁ、また今日も学校か…」


強い北風が吹く冬の冷たい空気の中でこう言いながら、ダイスケは自転車を学校の方へと進めている。


ダイスケは大学受験で惜しくも希望の学校には合格しなかったものの、第2志望に合格した文系の新入生である。


彼には悩みがあった…それは彼女も友達もいないということだった。もともと引っ込み思案な性格であり、高校生の時もさほど友達はいなかったが、中学からの付き合いでなんとかなっていた。


だがしかし…彼の大学は家から3時間ほどの場所に存在していて、同じ高校からこの大学へ入った人も一人もいなかったため、彼は大学で孤独の道を歩んでいたのだ。


「なんか良いことないかなぁ…」


ダイスケは最寄り駅に自転車を止めて、駅の改札へと向かった。エスカレーターは人が詰まっていたため、階段を慣れた足裁きで1段飛ばしで登っていった。なぜならこれは彼の毎日の習慣となっているからである。


そんないつも通りの日だったが、まさかこのあと彼にあんなとんでもない事が起きるということは、当然知る由もなかった。


階段を颯爽に登っていると、脇目に重い鞄を背負い、杖をつきながらゆっくり登っている老婆がいた。


「お荷物、持ってあげましょうか?」


ダイスケは昔から困っている人を見たら放っておけないタイプの人間だ。その日は大切なテストが1限にあったが、気がつくとその老婆と共にゆっくり階段を登っていた。


「あなたは学生さんかい?」

「あっ、はい、そうです…よ」

「今どきの若い人は優しいんだねぇ」

「あ、まぁ、それほど…でも…」


家族以外の人と久しく会話をしていなかったため少し言葉に詰まったが、ダイスケはなんとも言えない達成感を味わった。


「ありがとうねぇ、学生さん」

「い…いや、とんでもない、それでは失敬」


どこかのテレビで言ってたような台詞をなんとか思い出して、ダイスケは改札へと向かった。もうおそらく1限には間に合わない…それでもダイスケはテスト以上の大切なことをした気がして、強い幸福感に襲われた。


「う…うん…それで…は失敬…あぁ!」


慣れないことはするものでない。案の定、ダイスケは電車で寝てしまい、学校の最寄り駅を通過してしまったのである。


「どうしよっかな~、まぁ、人生諦めも大切!」


何て楽観的なのだろう。ダイスケは今日は学校へは行かず、寝過ごしてたまたまたどり着いた駅の周りを探索することにした。ところが…


「ブー!」


改札を出ようとした彼にブザーがなった。そう、電子マネーの残高不足だったのだ。引き返すという選択肢しか彼の目の前には取り残されていなかった。


「電子マネーも俺に大学に行けって言うのか?まぁ、でもせっかくここまで来たからには、改札の直前まで行って風景でも眺めるか…」


そう思っていた矢先、彼は愕然とした。

目の前にさっき出会った老婆の姿があったからだ。

藁にもすがる思いで、ダイスケは老婆のもとへと駆け寄った。


「あ、あの…さっきのおばあさんですよね?」

「あなた誰?」

「ご、ごめんなさい。人違いでした」

「うそだよ、学生さん」


老婆はジョークも言える元気さがあった。


「あの…本当に申し訳ないのですが…財産を…じゃなくて…お金を貸していただけませんか?」

「良いよ。ただし、ただで貸すのもつまらないから、ひとつだけ条件を課してもいいかい?」

「条件とは…?」

「私も大学の授業を受けさせてほしいなぁ」

「それは無理かと…」


ダイスケはお金がない時でも、至って冷静に物事の可能性を判断できる能力がある。


「他にはありませんか?」

「そうだねぇ……じゃあ、私の家の手伝いをしてくれるかい?」

「それなら…良いですよ。」

「でも、そしたら今日は大学には行けないねぇ」

「あっ!そうだった」


狡猾な老婆である。


「わかりました。じゃあ、一度学校へと行ってみましょう。」

「久しぶりの勉強、楽しみだねぇ」


学校がこの老婆に授業を受けさせるはずがないのを分かっているダイスケが不安に怯える一方、何十年来の勉強が出来ると楽しみにしている老婆、これら2つの相反する感情を乗せた電車は、着々と学校の方へと進んでいった。


この老婆が後にダイスケの大学生活を変えてしまうほどのきっかけになるのはまだまだ先のことである。


「どんな景色なんだろうか…大学というのは…」


電車の窓から外を見ている老婆の目は、超高層ビルの最上階からの景色を楽しむ子供たちのそれと似ていた。









この後、ダイスケは宇宙について研究する専門家となった。

「どうしよっかな~」

彼のこの台詞の裏側には、明るい未来があるのかもしれない。

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