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緑の海のぷーりあ  作者: 阿釜月高
緑の海
4/10

おそと

 曲がり角の先は広くひらけた場所になっていました。

 ぷーりあは知っています。

 ここは『えんとらんすほーる』というのです。

 今までの廊下よりもずっとずっと高い天井の上まで透きとおった板で出来ていて、まぶしい光が差し込んできています。

 お外です。『えんとらんすほーる』はお外につながっているのです。

 ぷーりあは胸がドキドキしてきました。

 ワクワクしているのです。

 ぷーりあはお外のことはよくわかりません。

 よくわからないからワクワクするのです。

 まぶしい光がぷーりあを照らします。

 光の中をぷーりあは走って出口にむかいました。

 出口は透きとおった板で出来た小さいお部屋になっていました。

 小さいお部屋のドアはもうなくなってしまっているようです。

 ただ下からいきおいよく風がふき出しています。

 どうやらこれでお外の空気が入ってこないようになっているようです。

 ぷーりあは空気ではないので出口を通れます。

「ぷー!」

 いよいよお外に出ます。

 ぷーりあはかくごを決めて風のドアからお外にどび出しました。

 お尻がすぅっとして、体がふわり浮き上がりました。

 ぷーりあは軽いですからね。

 体が風に持ち上げられてしまいました。

 コロンとお外にむかって転がってしまいました。

 ちょっとカッコ悪いです。

 でもとにかくお外に出ました。

 地面は灰色のちょっとざらざらした石で出来ています。

 石の地面は遠くのほうまで続いていますが、石の地面の上にはホコリ以外のものは何にもなさそうです。

 石の地面の終わった先には、大きな大きな樹がいっぱい生えています。

 森です。

 

 ――いいえ。

 ――いいえ、あれは海です。

 ぷーりあは知っています。

 なぜ知っているのかは分かりません。

 でも、それはきっとだいじなことではありません。

 というか、今はそれよりもっとだいじなことがあります。

 それは。

 それは。

 それは!



 あついです!



 すごくあついです。

 ぷーりあはこのまま燃えてしまうのではないかと思いました。

 ガマン出来ません。

 とにかくここは風のドアの中に戻るのがよさそうです。

 転がりながら風のドアの中に逃げこみます。

 ドアの中はあつくありません。

 ちゃんとかんりされているからです。

 ぷーりあはゴロゴロころがりながら廊下の辺りまで戻りました。

 冷たい廊下の床がきもちいいです。


 気がつくと透きとおった板から見えるお外の様子が変わってました。

 お空が赤くなっています。

 どうやら少し眠ってしまっていたようです。

「ぷーぅー……」

 寝ころがったままのびをして、のびーっっとしたまま2回3回ゴロゴロしてよいしょとおきあがりました。

 もうすぐ夜みたいです。

 お外はさっきほどあつくないのでは?

 ぷーりあはもう一度お外に出てみることにしました。

 小走りに風のドアに飛び込むと、またぷーりあの体がふわり浮き上がりました。

 浮き上がったままクルリ一回転。

 着地を見事にきめました。

 かっこいいです!

 『じがじさん』しました。

 さてお外のあつさはというと、やはりあっついですがさっきほどではありません。

「ぷー!」

 これなら大丈夫そうです。

 ぷーりあはちょっとお散歩をしてみることにしました。

 灰色のざらざらした地面の上をぷーりあは歩き出しました。

 (なん)にもありません。

 ぷーりあは海の近くにまで行ってみることにしました。

 ざわりざわりと葉っぱがこすれる音がします。

 遠くから見ていたよりも海の樹は大きいです。

 えんとらんすほーるの高い天井よりもずっと高いのではないのでしょうか。

 灰色の地面のはしっこには柵があって、しゃぼんのようなマクがはっています。

 しゃぼんのマクのおかげで海の生き物は灰色の地面のところにまで入ってこれないのです。

 ふと見るとあっちに柵が途切れているところがあります。

 行ってみましょう。

 

 ここが出入り口のようです。

 出入り口にもしゃぼんのマクがはっています。

 ここには柵が無いので地面にちょくせつのようです。

 しゃぼんのマクのむこうには背の高い草がいっぱい生えていて、その奥に海の大きな樹がならんでいます。

 海の中は暗くてよく見えません。

 草のなぎさの波の上を白いカモメが泳いでいます。

 ざわりざわりとゆれる草の上をすいーすいーっとカモメの白い体がすべるように進んて行きます。

 バサバサっとカモメが飛び上がりました。

 長いです!

 足が!

 すごい長いです!

 体しか見えていませんでしたが、どうやら草のなぎさを泳いでいたのではなく、長い足で歩いていただけみたいです。

 「ウケケケケケケケケケケケケケケケケケ」

 大きなトンボが笑いながら飛んできました。

 すぃっすぃっと大きな羽をすばやく震わせて、ギラギラした大きな目で草のなぎさを見まわしていました。

 トンボはなぎさを一巡りすると暗い海の中に帰って行きました。

 ふしぎな海の生き物たちの様子に、ぷーりあの胸はドキドキしました。

 ワクワクします。

 海の中にはどんなふしぎな生き物たちがいるのでしょうか。

 海の中にはどんなふしぎな景色があるのでしょうか。

 ぷーりあは海の中が見てみたくてたまらなくなりました。

 後ろをふりかえります。

 はじめて見るぷーりあの白い大きなお家です。

 (まある)いお家の上には高い高い塔がのびています。

 あの高い塔なら遠くからでも見えそうです。

 ちょっとだけ。

 ちょっとだけです。

 ちょっとだけ海の中を見たら、あの高い塔を目指して帰ってくればいいのです。

 ぷーりあはガマン出来ずにしゃぼんのマクに飛び込みました。

 しゃぼんのマクはむにゅうとぷーりあを飲み込むと、草のなぎさの根もとにぷーりあを放り出しました。

 しゃぼんのマクにさわってみると、むにゅりとぷーりあの手を飲み込みました。

 大丈夫です。

 ぷーりあは出入り自由です。

 知っていましたが、あらためてあんしんです。

 「ぷー」

 ぷーりあはもう一度白い大きなお家を見あげてから草のなぎさに飛び込みました。

 すぐに帰ってきますから。


 けれどその日ぷーりあはお家に帰ってくることは出来ませんでした。

 次の日の朝も、その次の日の夜も、ぷーりあがお家に帰ってくるとこはありませんでした。

 ぷーりあの最初の冒険は、こうしてはじまりました。



自分で決めたことですが、平仮名にする字と漢字のままの字がごっちゃになり始めました……


次回ぷーに緑の海の洗礼。

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