ぷーりあがおきました
――――のロックを解除します。
どこかで音がしました。
だれかの声のような気がします。
でも、何を言っているかはわかりません。
目をあけると白い天井が見えました。
天井はしっこからはしっこまで全部がうすぼんやりと光っているようです。
「ぷー……」
ゆっくり起きあがってみると筒の中にあるベッドの上にいるのに気がつきました。
どうやらこのベッドで眠っていたようです。
いつから眠っていたかは思い出せません。
でも、それはきっとだいじなことではありません。
筒のはしっこにつかまって外を見てみました。
となりにも筒がありました。
ふりかえると反対側にもありました。
ちょっと違うのは、となりの筒にはふたが閉まっていて中にベッドがあるのか分かりません。
下のほうはどうなっているのでしょうか?
筒のはしっこからのり出して下をのぞき込みました。
――どすん!
おっこちました。
いたいです。
「ぷぅーーー」
ちょっと泣きそうだけど泣きません。
つよい子ですから。
見あげるとちょっと高いところに筒がならんでいるのが見えました。
あたりを見まわしても、ハシゴも階段もないみたいです。
ベッドに戻れなくなってしましました。
しかたがないのですこしあたりを探検してみることにしました。
ここは広いお部屋の中みたいです。
おっきな机とおっきなイスがならんでいます。
巨人の机と巨人のイスです。
見あげてもよく分らないくらい大きいそれが、なぜ机とイスだと気がついたのかはよく分りません。
でも、それはきっとだいじなことではありません。
机とイスのむこうは行き止まりでした。
見まわすと壁はずっとむこうのほうまでつづいています。
一か所だけ壁がすこしへっこんでいるところがあるみたいです。
てくてくと近よっていくと、へっこんだ壁はほかのところと少しちがっているようでした。
ほかの壁は白くてつるつるですが、へっこんだ壁は銀色でピカピカにみがき上げられて鏡みたいです。
ピカピカの壁にうつった自分を見てみました。
ちっちゃな青いおめめとちっちゃなお口。
フサフサのおおきなお耳は、背中のほうに垂れ下がってフワフワゆれています。
モコモコのからだからのびたちっやなお手手とちっちゃなあんよ。
どこからどう見てもかわいいです。
おどってみたらきっともっとかわいく見えます。
おどってみましょう!
ちいさな体を左右にふって、かわいいお尻も左右にふって、ちいさなお手手も一生懸命ふっておどりました。
どこからどう見てもかわいいです。
ちょっとつかれました。
「ぷー……」
息をついて床に座るとピカピカの壁にうつった自分が見えました。
よく見るとお腹に何だか丸いものがくっついています。
なんだか固そうです。
石みたいです。
おそるおそる手をのばしてみました。
手がとどきませんでした。
――この子の名前はぷーりあ。
今はまだちっちゃなぷーりあ。
ぷーりあにはこれから先、たくさんのたのしいことや、たくさんのうれしいこと、そしてたくさんのつらいことが待っています。
でも、それはまだちょっと先の話。
今はまだここだけの内緒です。
おっかない黒い女王と黒いドラゴンに出会うちょっと前。
大好きな、たいせつなおともだちに出会うちょっと前。
大冒険のはじまりのちょっと前。
今、ここからはじまります。