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彼方の地で、輝きたる“縁”を  作者: 白色彼方
第1章 旅行先で
2/3

助け -きっかけ-

さすがに女の子を背負って駅内を歩くのは恥ずかしかった。

平日の昼過ぎなのでそれほど人は多くなかったが、それでも少ない視線が痛い…。

わざわざ自分が面倒を見る必要もなく駅員さんにでも任せればいいのだろうが、僕はそうはしなかった。


背負っている少女はいろいろな意味で柔らかく、相変わらず甘い香りがする。

驚くくらいに華奢な体つきで背負ってもほとんど重さを感じない。

「(まあ、体のある部分も物凄く華奢みたいだけど…。)」

自分の背中に当たる部分に意識を向けてみる。

「…うん。小さい。」

「…んっ?」

おっと、聞こえてしまっただろうか?これは失言だったかもしれない。



駅から出ると近くに小さな公園があった。とりあえずベンチに彼女を座らせる。

辺りを見回してみれば、すぐ近くに自販機を見つけることが出来た。

「とりあえずお茶で良いかな。好みもわからないわけだし。」

飲みやすそうな麦茶をチョイス。それを少女へと手渡す。

「ほら、麦茶だけど良かったかな?」

「はい…どうも、有難うございます…。」

少女は弱弱しくも冷たい麦茶を受け取り蓋を開けようとする…が、一向に蓋が開く気配がしない。

少女の手はぷるぷると震えており、頑張って開けてます感はある。

「…ほら貸して。僕が開けるから。」

「うぅ…すみません…。」

見た目通りのひ弱さのようだ。




少女がお茶を飲み始めてから数分後。先ほどまでの苦しい表情は多少収まったようだった。

「もう大丈夫かな?動ける?」

「はい…いろいろとご迷惑かけてすみませんでした。」

まだ万全には程遠くは見えるが、とりあえずは一安心。

「しかしね、君みたいな女の子が一人で出歩くのはあまり感心しないというか…。」

「それに体調が良くないんじゃないのかな?無理はしちゃいけないと思うけど。」

それを聞くと、少女はため息混じりに口を開く。

「今日、体調が悪いのではなくて、私は生まれつきこういう体質なのです…。」

「ちょっとでも歩くとすぐに息が切れて動けなくなってしまうので、普段は友達についてきて貰っているのです。」

「いやそれを聞く限り、余計に無理しちゃいけないと思うんだけど…。」

少女は「うぅ…」とちょっぴり項垂れている。いちいち仕草の可愛い娘だ。

「それで、その友達は今日は一緒じゃないんだ?」

「学校の研修とかで1週間くらい遠くに行っちゃってるんです…。うぅ…こんな大事な日なのに…!」

…何となく事情がわかってきた。

「つまり、無茶だとわかっていてもやらなければならない用事があるから一人で出かけて、今に至ると。」

「つまり、そういうことです!」

小さな胸を張ってドヤ顔をする少女。あまり誇らしいことだとは思えないが。

「親について来てって頼めばよかったんじゃないか?」

「お母さんは今お仕事中なので…。お父さんはいませんし。」

「あー…何だか、ごめん。」

それだけで、彼女を取り巻く環境をすぐに把握できた。

「気にしないで下さい、です。助けて頂いた恩人さんなのですから、むしろ感謝なのです。」

見た目通りの柔らかい優しさと、良く出来た人格をお持ちのようだ。


「んーしかし、無理してでも行かなきゃいけない用事と言えば…何か買い物とか?」

「はい、その通りなのです。今日が発売日と聞いていましたから。」

「ふむ、君みたいな女の子が欲しそうな物と言えば…ブランドもののアクセサリーとか…」

「今日は“History of Battlefield 5”の発売日なのです!」

「あー…そういえば今日だったか…。」

…って、え?何だか、この子の口からは出てこなさそうな名前が出てきたような。

「え、“History of Battlefield 5”(略称HoB5)ってアレだよね。人気FPS(first person shooting)の最新作…聞き間違いじゃない?」

HoBというのは海外で人気のFPSゲームのシリーズタイトルで、今作はそれの5作品目というわけだ。

最近は日本でも人気が高まりプレイヤーも続々増えつつあるとのこと。

「はい!その“HoB5”です!」

僕もよくFPSをやるからその名前は勿論聞いたことがある。すぐにではないが、購入する気もあった。

「…まさか、君みたいな女の子の口からその名前が出てくるとは思わなかったよ。」

「えへへ…友達にもよく言われます。」

「お兄さんもこういったゲームをよくやられるのですか?」

「まあ…そうだね。最近は仕事が忙しくてご無沙汰だったけども。」

仕事をしては寝るだけの毎日だったからなぁ。息抜きの旅行もハプニング続きだし。


「…というか、そんなに欲しかったのなら、ネットなりなんなりで取り寄せればいいと思うけど。」

「…あっ。」

その手があったか!と言わんばかりの表情を見せる少女。

本当に表情豊かな可愛らしい女の子だと思う。



とにかく、ひょんなことから助けたちょっぴりドジで儚げな少女はまさかのゲーマーでした。

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