第00話 プロローグ
第00話
世界の化学の停滞が100年。
各地で起こった核の爆発。
何故それが起こったのか誰も解らない。
ただそこにあったのは、地が抉〈えぐ〉れた円形の土地が残った。
ただ、そこに残った。
一つの国を消し、都市を消し、人を消し。
謎がとけぬまま、新たな人類の幕開けであった。
それから、200年過ぎた世界は、化学の魔法の世界へと発展した。
核の爆発の影響かは定かではない。
少なからずその時から、人間に対して突然変異とも呼べる者たちが現れた。
能力を持った人間である。
所謂『超能力者』、もっと夢心地に言えば『魔法』
また、化学の進歩もまたそれを助長させていた。
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2311年
シンと静まり返っている部屋。
ロータイプのベットに一人の男が眠っている。
成熟した男性ではない。
十代の少年のようだ。
一人の割りにはキングサイズよりももう一回り大きいクィーンサイズのベット。
真っ暗な部屋であるが、それでも殺風景さが際立つ。
ベット以外無いように見えても仕方がない程に。
カタン。
寝室のドアが静かに開いた。
ベットに眠る少年へ音も無く近づいていく。
「何してる」
顔を覗きこまれた瞬間にベットに組み敷いた。
「ご飯あげにきました」
こうなる事は予想していたようで、組み敷かれている人物は神々しい程の笑顔で相手を見つめている。
その笑顔は誰をも虜にしてしまう威力があった。
しかし、その相手は全く顔色を変えない。
ジッと見つめたまま口を閉ざしている。
お互いに見つめ合ったまま動かない。
一方は見つめられて、見惚れて動けないだけだが。
…………その状態が何秒通り過ぎただろう。
…………否、何分か、何時間か。
…………その感覚は永遠に続く気さえした。
突然動いたのは組み敷いた少年の方。
沈黙が耐えられなかった訳ではない。
目の前の人物を見て性的な意味で我慢出来なかった訳ではない。
貪り喰らいつくように少女の唇に絡みついた。
息をさせないキスを受けた相手は一瞬で意識を飛ばしてしまっていた。
「•••飯は?」
不満を漏らした少年は、組み敷いた人物の隣に溜息を一息吐き、何事もなかったかのようにそのまま眠りについた。
ただ、自覚させられた空腹感は全く満たされないままであった。
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