~第4次南部戦争 始まりの時①~
ここから、南部戦争に入ります。
クーリー王国王宮
国王 クーリー・レン・オルセス
齢65だが、眼光鋭く、いかにも「国王」といった風貌の男だ。
「我が軍の状況は?メルニス陸軍大臣」
「現在、ナカイヤ帝国との国境の町。北部、イースリーに歩兵第1軍と騎兵第1師団、そして砲兵第5師団が。中部、ウェルニスに歩兵第2・3軍と砲兵第2師団が。南部、スーズには歩兵第4軍と騎兵第2師団、砲兵1師団が待機しております。いつでも進軍可能です!」
「よろしい。オレンス。海軍はどうだ?」
「海軍北部艦隊はそのまま、北部の警戒に。中部艦隊主力と南部艦隊主力はナカイヤ帝国沿岸に艦砲射撃を行います。」
(この世界の陸海軍は、史実の第1次世界大戦時から第二次世界大戦前半頃までになっている。)
「うむ。勝算は?」
「陸軍は総兵力では我らが優勢ですが、帝国の防御陣地に阻まれるとおそらく………」
「過去3回の戦役も、その陣地に阻まれ、進攻出来ぬかったからな。」
ナカイヤ帝国軍が誇る通称「世界最強の防御陣地」こと「ナ38型陣地砲」
速射性は皆無、機動力も無いが65㎝砲の威力は大きく、過去3度の南部戦争では、攻めよせるクーリー王国軍に対しアウトレンジ射撃を行い、ナカイヤ帝国進攻軍5万を撃退した。しかし、海軍は主力艦隊が対ジーナカ・グッチ方面警戒にあたっているため、南部方面の艦隊が弱いため、クーリー王国海軍をどうにか押し返す程度しか出来ていない。
「彼の陣地砲の対処法は?」
「北部は、騎兵の機動力と砲兵の攻撃力を集中させ、撃破します。また、中部・南部は砲兵の攻撃力を持って撃破します。」
「ふむ……新兵器の軽砲はどのように使うつもりだ?」
「夜の闇に紛れ接近し、至近距離より攻撃します。」
「………よろしい。」
そして、国王は皆の顔を見回し、言った。
「……過去3度の戦いに終止符を打つのだ!!」
「「「はっ!!!」」」
そのころ、ナカイヤ帝国宮殿
第12代ナカイヤ帝国皇帝 ナカイヤ・ファール・エルニス
ナカイヤ帝国建国以来、初の女帝であり、史上最年少。齢16の若い女帝だ。
「過去3度の戦いは撃退出来たようですが、此度も問題ありませんね?」
「はっ。此度の進攻も阻止出来ると思われます。」
「ベルン陸軍総司令。「思われます。」と、答えた理由は?」
16歳とは思えない、鋭い眼光でベルンを睨んだ。
「先日、クーリー王国が新たな兵器を開発したとの情報が入りました。どうやら、歩兵が携行できる砲のようです。」
「その砲で陣地砲を攻撃した場合、陣地砲への被害は?」
「詳細は不明ですが、歩兵が携行する以上、そこまで攻撃力は高くないと思われます。」
「……良いわ。次にレンティス海軍総司令。敵艦隊を南部方面艦隊で撃退出来るのかしら?」
先程の鋭い眼光とは違い、少し笑みを浮かべた。が、その目は闇の様に黒く、笑っていなかった……………




