第44話 生命危機
自分の目の前で、視界を覆うほどの爆発が起こった……。
それと同時に、俺に横殴りの衝撃が起こり、大きく横にぶっ飛ぶ。
「え……ぐあッ……!」
地面に打ち付けられ、咳き込む。
素早く体勢を立て直して、さっきまで俺がいた場所を見る。
「おい……まさか……嘘……だろ?」
青奈が、倒れている。
俺を助けるために、突き飛ばすというベタなやり方をして……。
自分が、爆発のダメージをくらった。
「チックショウッ!!」
急いで駆け寄って、抱き起こす。
なんで、助けに来といて、格好つけて登場して、こんなことになってんだよ……。
どうやら……何も考えずに飛び込んだじゃなく、ちゃんと姿勢を低くして、頭を下げた状態で助けてくれたみたいだ。
なんて、言ってはみても、甘い状態じゃない。
逆に、中途半端な体勢だったせいで、頭部にかなりの衝撃を受けたらしい。
体のあちこちにも、火傷をしている。
「ヤバイ……俺は回復魔法、使えねえし……治療道具もない……」
急がなければいけない。
正直言って……命に関わってる。脈が、弱い。
そうだ……俺はこういう時に弱い。
傷付く前から助けようとして、戦うことばかり。
傷付いた後、弱っていても、俺は何も出来ない。
「待て」
青奈を抱きかかえて立ち上がった瞬間、後ろから声がかけられた。
苛立って振り返ると、唯一残ってる初老の男が俺たちを見ている。
「うるせえ……お前の相手をしてる場合じゃねえんだよ」
吐き捨てて通路に出ようとした時、急に体が震え出した。
「な……」
「今までは、争わない方向だったが……折角の実験台、失う訳にはいかないんでね」
こんな時に、ふざけたこと言ってんじゃねえ――
青奈をゆっくりと通路に寝かせ、男に振り向く。
「その発言だけで、戦う理由としては充分だぜ」
早期決着のため、移動魔法で詰め寄ったが……その一瞬で俺は床に倒れていた。
「は……? なんだ、これ……?」
この、振動か……!
振動系? 珍し過ぎて、対策方法なんてないぞ。
床に振動魔法を使って、俺の足に伝える……つまり、足が痺れた状態の強化版、それを俺の足に施したんだ。
それで、俺は足に力が入らずに倒れた。
「接さなきゃ、いい話だろ」
風魔法で少し浮遊し、そのまま飛び掛かる。
しかし、触れた瞬間に、俺の全身から力が抜ける。
駄目だ……少しでも触れたら、さっきと同じ状態になってしまう。
「戦りにく……ッ!」
俺が歯軋りした時、力が脱けて寄り掛かってしまった。同時に、男の拳が俺の腹部を打つ。
「ゴフッ……」
更に、体中に小さい切り傷が発生した。
これは……超音波のような、細かい振動で対象を揺らすことで、砂のような細かい物質に刃物の役割をさせているんだ。
結構床に転がっていたからな……体中、切り裂かれるのも無理はない。
「う……が、ああ……」
転がって距離を取り、パラを抜いて男に向ける。
それと同時に、男が瞬時に詰め寄ってきて、俺の右手を蹴りつけてきた。パラが床を転がって離れる。
ヤバイぞ……既に俺は、かなりの魔装法を使ったせいで疲れている。
これ以上の魔装法は……。
「うあああああああああッ!」
最後の力で、制服から雷魔法を放つ。
この総量なら、直撃で気絶はするハズだが……。
移動魔法を使ったのか、雷魔法とは逆方向に恐ろしい速さで回避した。
威力を絞ったせいで、範囲が狭かったんだ……今まで戦ってなかったからって、完全に油断した。
そんな……限界だ……。
魔装法はもう使えない。
あの、元不良の先輩と戦った時以来だ。
「や、べえ……」
男は、倒れている俺を見下ろしている。
「ふう……まあ、お前があの八人と戦ってなければ、俺に勝ち目はなかったな」
通常の肉弾戦に持ち込むか……?
いや、振動魔法を使われたら、勝負にならない――
「なんて、構ってられるかッ!」
即座に立ち上がり、通常の右拳を振るう。
「無駄なことを……」
すぐに力が脱けて、よろめく俺の体に衝撃が走る。
再び倒れた俺の目に、男の全身が映る。
……拳銃だ。
男の手に、古めかしい回転式弾倉が握られている。
「なんだ……持ってんのかよ……」
「何も言っていないだろう?」
これは……いよいよ勝ち目がなくなってきたな……。
ボーッとする頭で考えながら、拳銃が突き付けられるの無感情に眺める。
引き金が引かれそうになった時……。
カチャッ。
男の背後で音が聞こえた。
男が振り返ると……そこには、俺のパラを持った青奈が立っていた。
な……どうやって?
あんな重傷で、あんな状態で、なんで?
「お兄ちゃんに……何も……するな……」
クソ……何してんだよ、俺。
青奈に無茶させてんじゃねえ……。
必死に立ち上がろうとした瞬間、男の表情が見えた。
笑っている。
さっきまで、特に変わったこともしていなかったこいつが……何かに気付いた。
「やめろッ!!」
俺の叫びは虚しく響き……男は青奈に銃口を向けて、引き金を引いた。
それとほぼ同時に、青奈がパラの引き金を引く。
青奈の銃弾は……ある意味では狙い良く、男の右足腿を貫いた。
男は後ろへと倒れる。
その後頭部をすかさず俺が殴りつけて、昏倒させる。
これで……研究者、九人全員片付いた。
しかし。
男の銃弾は――
青奈の心臓を真っ直ぐに射抜いた。
青奈はそのまま、ガックリと膝を折り……前のめりに倒れた。




