表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/219

第43話 人間だって

 

 こんな非常事態で言うことじゃないけれど、俺もヒーローには憧れた。いや、今だって憧れている。

 だから、登場シーンも格好つけたい(たち)なんだよな……陽愛の時も、そうだったけど。

 それが、ヒーロー気取りなだけだったとしても。

 それでも……そんな俺を、格好いいと言ってくれた人がいた――

 

「お……お兄ちゃんっ!?」

 青奈が驚いた顔をして固まった。他の研究者も同様に固まっている。

 しかし……一人だけ、何の反応もしない男――初老の男は、俺をチラッと見ただけだった。

 俺はその全てを無視した。

「なんだかんだ言って、俺とか家族のことを気にしてる、心配してる。そのことで不安があって、他人からの分かりやすい嘘だろうと鵜呑みにする」

 俺は青奈を真っ直ぐに見つめて、喋り続ける。

「その解決のためになら、自分が犠牲になってもいいって思ってる。でも陰では泣いてるのに、強がって頼ろうとしない」

 やっと研究者たちが構え出し、動き出す。

 それでも、俺は青奈だけを真っ直ぐ見る。今回の事件は……俺の責任なんだ。

 だから、これだけは言わなければいけない。

「最終的には、自分が嫌われて解決しようとする。結局、自分で勝手に、いいか、って納得する」

 戸惑う青奈の目を、俺は真っ直ぐに見つめる。

「いい訳ないだろ」

 ずっと……言いたかった。

 いや、言わなければいけなかったんだ。

「あれ――」

 例え伝わらなかっとしても、伝えなければいけない。

 

「――青奈。お前、昔から変わってないじゃん」

 

 人間じゃない?

 そんなことねえよ。不死鳥の魔法がかかる前と、お前は全く同じだよ。

「俺が知ってた頃の青奈で、俺が知ってたハズの青奈で、俺が今も知ってる青奈だよ」

 一歩前に出る。

 泣きそうになりながら、青奈も俺に歩み寄ってくる。

「なんだよもう、泣きそうになっちゃって……それじゃあ、教えてくれ。誰が、お前を傷付けたんだ?」

 全く……気取った台詞、気取った登場……本当に、ヒーロー気取りだよ……ったく。

 でも――だけどな。

 小学四年生ぐらいの頃、男子の上級生が青奈を苛めてた現場に、俺が登場した時……青奈は言ってくれたんだよな。ヒーロー気取りに。

 格好良かったよ、って。

「……あの……人、たち……」

 泣きながら言って、抱きついて来た青奈を、優しく受け止める。

 子供のように泣きじゃくって……よっぽど不安で、怖くて、悲しくて、辛くて、寂しかったんだ。

 誰にも相談できず、何も伝えられず、何も言えなくて……。

「辛かったよな。俺が何も気付いてやれなくて、向き合ってやれなくて、本当にごめんな」

 声を上げて泣きながら、抱きついたまま微かに首を横に振る。

「でも、俺のために、犠牲なろうとまでしなくていいんだよ。そんなことまで、俺のために頑張る必要はないんだよ」

 青奈の頭を撫でながら、俺は優しく言う。

 ヒーロー気取ってるけど、俺は本当に駄目な奴だよ。

 一番近くにいたハズなのに、何にも気付けず、相手のせいにして向き合うことを放棄し、逃げ出した。

「お前は人間だ。怒るし、傷付くし、泣くし、寂しがるし、強がるし、誰かを守ろうとして戦うし……お前は、立派な人間だろ」

 正直なところ、感情があれば人間だとは、そんな綺麗事を無責任に言えるほど、俺は強い奴じゃない。

 だから……無責任じゃない。

 言ったからには、絶対に責任は持つ。責められても、背負う。

 強い奴じゃないけど、せめて、格好いい奴でも我慢してくれ。格好つけてる奴で、なんとかさせてくれ。

 絶対に、綺麗事じゃない、本当の心で言う。人間だって。

「それにさ、お前は笑える。なんかこの頃、見てなかったけどさ……お前の笑顔、可愛いぞ」

 そう言うと、青奈は顔を上げて……本当に久しぶりに、俺を見て笑った。

 涙に濡れた笑顔だったけど……最高の笑顔だった。

 

「家族ごっこは終わりかい?」

 青奈の後ろで、ずっと見ていた研究者たちが不意に言葉を発する。

「実験台だから傷付けないようにしてたけど、もう済んだなら――」

「黙れ」

 マジで言えば、こいつらがさっきの感動シーン中に何かしてきても、対応できる余力はあった。

 だから、別にいつでも良かった。

 妹を苛めた奴らを懲らしめるのは、いつでも構わない。

「……待ってろ」

 まだ少し泣いている青奈を、俺は後ろに移動させる。そして、壁の陰に隠す。

「お兄ちゃん……」

 心配そうに見上げてきた青奈の頭を、一回撫でて、俺は研究者たちへと向き直る。

「麗しき兄妹愛か……見ていたくもなかったが……」

「うるせえぞ。容赦はしねえからな」

 喋りだした一人の男の言葉を遮り、俺は拳銃(パラ)を抜き放つ。

 俺は……キレている。

 九対一なんて、とても余裕な状況じゃないが……妹の(かたき)、というか代わりだからな。

「来いよ。実験、付き合ってやる」

 挑発した瞬間、近くにいた女が一人、俺へ飛び掛かって来た。

 手には……魔装法用でもない、本物の黒光りするナイフが一本。

「あまり、調子に乗るなッ!」

 ……残念だったな。

 全員で攻撃、連携されれば勝てなかったが、所詮こいつらも研究者。

 決闘者じゃない。

「甘いんだよ……」

 一瞬の内に、女は地面に倒れた。

 ナイフが当たる前に、女の右手首に、俺が下から素早く腕を強くぶつけた。

 それによってナイフは飛ばされ、右腕は上に払われ、左腕だけ残る。その左腕を掴んで、足を払って床に叩きつけた。

 これぐらい、俺が今までやってきたことの初歩だ。

「どうした? 遠慮してんのか?」

 俺が更に凄むと、近くにいた男が二人、ビビって後ずさる。

 その一人に、風魔法を使った銃弾を撃ち、大きく一回転させて吹き飛ばす。

 すると、さすがに他の奴も攻撃に出てきた。

 最初に部屋にいた女の一人が、銃を抜いて俺に撃ってくる。急いで弾道を読み、防御魔法を集中させて腹部への二発を防ぐ。

 そこにすかさず、男が一人飛び込んで来て、下から鉄棒のような武器で殴りかかってきた。

 俺はその攻撃を右踵落としを被せ、強制的にキャンセルさせる。そこから間髪入れずに、左足で横から攻撃魔法で蹴り抜く。

「三人……」

 呟きながら、俺は左腕でナイフを抜く。

 移動魔法で近付き、ビビっていた男にナイフで一撃、雷魔法を使って昏倒(スタン)させる。

「こいつ……属性魔法を二つ……!」

 驚いた近くの男を、ナイフで攻撃する。

 しかし、防御魔法を使った腕などで上手く防御される。

 こいつ……戦うのが上手いな。

 後ろからの攻撃に気を付けながら、俺はその男を追い詰める。

 左手でナイフの連続攻撃をかけながら、パラで三発撃ち込む。

 すると、移動魔法を上にかけ、大きく飛び上がった。

 その後ろから、女が一人、俺に拳銃を向けている。

「チッ……! いちいち上手いなッ!」

 俺も移動魔法で上に飛び上がる。

 しかし、これではただの的だ。

 なので……風魔法で移動する。横に風で動き、飛び上がっていた男を殴りつけて、下にいた女に叩き落とす。

「うわッ……!」

 押し重なった二人の上に、更に風魔法で落下加速をかけた蹴りを入れる。攻撃強化も使ったので……むしろ、死んでないかが心配なぐらいだ。

 背後から迫ってきていた女には、前を向いたままパラで一発。

 雷魔法で感電させて倒す。

「さて、と……」

 俺はとりあえず武器をしまって、残った二人を睨む。

「あんた達はどうする?」

 残ったのは、隠し部屋にいた男が二人。

 柴山と、初老の男だけだ。

 どちらも冷静で、戦う気配はない。……今のところは。

 柴山は眼鏡を取ると、磨いて喋りだした。

「ん~……やっぱ強いよ、お前。非力な研究員の俺たちだけど、七人一斉に倒せるもんかね?」

「実際倒してんだろ。さて、どうすんだ」

 こいつらを許す気はないが……戦う意思がないってんなら……。

 ちょっと痛めつけるだけにしとこう。

「さて、と……」

 柴山は眼鏡を掛け直し、俺に向き合う。

「昨日の続き、やる?」

「戦うのは、賢明じゃないんじゃねえのかよ」

 一瞬で移動魔法で距離を詰め、柴山とぶつかる。

 右膝蹴りを入れるが、いつはめたのか左手のメタルズハンドで止められる。

 そこに至近距離から発砲するが、見事に躱される。

 制服から放電し、柴山に攻撃するが、バックステップで避けられる。

 確かに……この放電攻撃は、範囲は狭いが……。

「この間合いなら、分かってんだろうな!?」

 銃口を向け、風魔法を使って三発撃ち込む。

「……サイクロン」

 呟いて、更に二発撃ち込む。

 柴山は防御魔法を使いながらも、威力は封じられずに……後方に吹き飛んだ。

 なんだ……? 何か、違和感が……。

「お兄ちゃんっ!? 上っ!」

 突然の青奈の声に……慌てて上を向く。

 そこには……昨日もやられた、鉄片が大量に飛び散っている。

 マジで……いつの間に……?

 抜け目ねえどころじゃない……こいつ、幻惑魔法まで使えんのか!?

 そんな風に、俺の頭はフル回転で動いているのだが……体は縫い付けられたように全く動かず……鉄片が爆発魔法で弾けるのが見えた。

 

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ