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第1話 魔装――纏い魔法の世界

 

 俺が小学生になった頃、魔法というものが実現した。

 そりゃあ俺だって、魔法という存在に夢をみて憧れた。

 けれど、使えても効果がない。例えると、飲みやすい薬は作れたけど、飲んでも病気は治らないよ! みたいな感じだった。

 だから、魔法なんて期待せずに小三ぐらいまで過ごした。

 そこで……政府からの発表により、俺の世界はぐるりと変わった。

 

 ◇

 

 季節はとっくに春に変わっている。

 しかし、今日は妙に肌寒い。

 俺は大きく欠伸をすると、身体を起こした。俺の規則正しい目覚めのおかげで、ほとんど機能が無駄になっているだろう目覚まし時計を見る。

 五時半。

 もう一度欠伸をすると、ベットから抜け出した。

 

 小学校から連れ添った仲間、三年だけだが仲良くやった仲間や先生……色々な奴に別れを告げ、中学校を卒業して半月。

 そりゃ、中学から一緒の高校に来る奴もいるが、俺の知る限りで親しい奴はいない。

 携帯を開き、メール確認……また(・・)あいつ(・・・)か。

 拒否するか……いや、そうするとあいつ泣くしな。

 俺は想像してから苦笑いし、携帯を机に置いた。

 魔法は万能じゃない。

 昔から、機械類などは変わっていないのだ。

 

 二階の自分の部屋から出て、階段を下りて一階へ行く。

 居間には誰もいない。

 俺の父親は単身赴任でアメリカで働いている。母親はいつも早くに働きに行き、遅くに帰ってくる。さすがに今は寝ているだけだが。

 別に父さんの仕送りは少なくない。むしろ多い。だから、無理して働かなくても良いと言うのだが、本人曰く、働いていないと安心できないそうだ。おそらく趣味の部類でもあるのだろう。

 俺には中三の妹が一人いるが、仲が悪くて喋らない。俺としては兄妹仲良くしたいのだが、一方的に避けてくる。

 それなら仕方ないと、家庭内の事情について俺は納得している。

 せめても忙しい母のため、朝飯は俺が作るようにしている。母親は日本人らしく和食派なので、俺は特に何をしなくても、炊飯器がやってくれるのだが。

 それでも、おかずは必要なので、卵焼きなどを焼く。

 味付け海苔などを取り出し、朝飯の支度は出来た。

 鞄の中身を確認していると、母さんが起きてきて、朝飯を食べて仕事に出掛けた。ちなみに仕事は洋菓子店で菓子作りだ。

 

 六時半に朝飯を食べ、部屋に戻って着替えた。

 鞄を背負い、玄関で靴を履いていると、七時にやっと起きだした妹が俺をチラッと見て居間に入った。

 肩まで伸ばした髪はところどころ跳ねていた。

「行ってきます……」

 俺は呟くように言って、玄関の扉を開ける。

 今日は、創立七年の高校の入学式なのだ。

 もちろん、俺がこれからお世話になる学校である。

 

 東京第三魔装高校とうきょうだいさんまそうこうこう

 

 それが、俺の通うことになる高校の名前だ。

 第三というのはそのままの意味で、三つの高校の中で、三つ目に創られたという訳である。

 魔装高校には、周辺に住んでいる人間なら、簡単な面接と実技試験(・・・・)で入学できる。

 万が一受からなかった人は、今では少なくなった普通の学校に通うこととなる。

 それも低確率なのだが、名前だけでも魔装高付属高校まそうこうふぞくこうこうとなっている。現に、少しは魔法の勉強もする。

 

 今は魔法が一般常識として認知されている。

 だからこそ、魔法の効果発揮条件が明かされた時、一年で東京に魔法を主とした学校ができた。

 それから年々、高校は増え続けた。東京に三つあるし、他県にも最低一つはある。

 魔法が、世界の常識なのだ。

 

 バスでも自転車でも行けるが、今日は早めに出発し、徒歩で向かう。

 中学でも魔法の実技系はあった。しかし、それも所詮は投げたボールで木の板を破壊する程度だった。

 高校では、それが一気に過激化するらしい。

 楽しみだなんて思ってはいないが、どれほどのものなのか興味はある。

 

 魔法について、詳しく話していなかった。ここで説明しよう。

 魔法とは、魔法式(まほうしき)を作ることで発動する。

 魔法式とは、手順であり、とりあえず頭の中に浮かべることが重要だ。火を起こすなら、まずは頭の中で火をイメージする。

 本当に、正直それだけだ。物理ではないものにはイメージ力が重要なのだ。

 魔法式とは、そのイメージと一致する魔法陣(まほうじん)を描くことだ。魔法陣ぐらいは聞いたことがあるかもしれない。

 しかし、魔法陣と聞いて思い浮かべたものとは、多分大きく違うと思う。

 最初に思い浮かぶのは、円の中に複雑にギリシャ文字みたいなのが組み合わさっているものだろう。おそらく。魔法式は、そんなに難しいものではない。

 魔法のイメージと一致すれば、もうその人の魔法は完成なのだ。

 『火を起こすには丸と十字を描けば良い』、そうイメージして、その通り魔法式を描く。

 その瞬間に、呪文ではないが、やはりこれもイメージした言葉を言えばいい。この言葉はそれほど重要ではない。ただ、魔法式強化のものだ。

 これで魔法は発動する。

 魔法式は簡単なほどすぐに出せるが、その分、魔法効果としては弱くなる。複雑なら強くもなるが、時間はかかるし、イメージが崩れたら発動は無効となる。

 言葉はさっきも言った通り強化なので、そこまで必要ではない。

 簡単だ。

 ただ、イメージが一番大事である。イメージと、その中の更にイメージした自分の魔法式。これがシンクロしなければいけない。

 魔法式を描くといっても、空中にやっても良いし、本当に描いているイメージだ。

 しかも、訓練すれば頭の中で魔法式を描き、その上に魔法発動をイメージすれば魔法は使える。

 訓練といっても高校生でも出来る技だ。

 

 ここまで来ると、本当に思い浮かべるだけ……の、簡単なものだと思うだろう(実際そうなのだが)。

 しかし、人には得手不得手がある。

 海で溺れて水が怖くなった人は、水の魔法はイメージ出来ない。したと思っても、魔法は発動しないのだ。それは、恐怖があり、雑念があるからだ。トラウマを克服して使えるようになる人もいるらしいが、小さい頃であればあるほど、それも難しい。

 魔法は様々で役立つものも多いが、それが全て使える訳ではない。

 さっきの水の魔法云々は例えで、それじゃなくとも使えない人はいる。理由は詳しくは判明していないが、やはり得手不得手なのだろう。

 それを小学校の上級生や、中学校で調べて理解するのだ。

 

 魔法研究者が魔法を発見するのに苦労したのは、そういう理由がある。

 それだけでなく、イメージが大事だという結論には、なかなか達せなかったからだ。あくまで科学者な彼らは、魔法さえも科学で説明したがった。

 結局、それは無駄、魔法は独立した全く別の力として、なんとかイメージの境地に辿りついた。らしい。どういう経路でその結論を

 今までなかったもののイメージとは、案外難しいのだ。

 

 ついに七時四十分、校門前に着く。

 大きく息を吸い、俺は校門を抜ける。

 

 そうだ……さっきの説明で、一番重要な事を忘れていた。

 魔法発動には……()がいるんだ。道具や武器が。

 

 そう、実践的な高校の授業……それは、危険が伴うということだ。

 

 これから待ち受ける魔法と日常に少し緊張しながらも――

 

 俺、白城しらぎ黒葉くろばは魔装高校、その校舎に足を踏み入れた。

 

  

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