第194話 罪と罰
明かり一つない通路を、月音がゆっくりと歩いて行く。吸血鬼の能力の影響を受ける月音の身体は、暗闇に視界を塞がれることはない。そして現在、意識は吸血鬼のものとなっているのだ。むしろ、夜であったことが幸いなほどだろう。
危なげなく、瓦礫などの障害物を避けて、階段を上る。
二階に来た月音は、目の前に光景に脚を止めた。
床には無数の穴が空き、壁は砕け散っている。大規模な戦闘があったことは明らかだった。
比較的安全そうな足場に目をつけ、軽やかな動きで月音の身体が宙を舞う。ステップを踏むように、三階に続く階段まで到達する。
第二都市の月音の自宅まで変える手段をなくした吸血鬼は、とりあえず黒葉と合流することを目指した。
廃墟に辿り着き、マイペースに上に向かう中で、吸血鬼は精神力が少しずつ回復するのを感じていた。だが、月音の身体は、吸血鬼の感覚ではしくじる場合がある。羽を出現させ、飛行して帰るには危険だ。
『まったく、不便なものだね』
呟いた吸血鬼は、そこで急に事態の深刻さについて考え始めた。
黒葉の勝ち負けについて、あまり拘りを持っていなかった吸血鬼だったが、黒葉が死ねば月音が悲しむことは知っていた。
吸血鬼と月音は、『同調』する前の記憶などは共有していない。だからこそ、七つの大罪の話を黒葉に伝える時、一度意識を吸血鬼に変える必要があった。
それ故に、月音は黒葉の正体については理解していない。魔装法について、そもそも詳しくなかった月音にとっては、吸血鬼状態で戦った不死鳥の魔法は、ぼやけたものでしかない。
自分の存在を守るために月音を守る。吸血鬼の理念はそれであり、月音に下手な知識を備えさせることは危険に巻き込むことに繋がると理解し、黒葉のことや研究のことは教えたりはしていない。
だから月音の目の前で、黒葉を死なせたりする訳にいかないのだ。それは吸血鬼の防衛意識に反する。
『やれやれ……思っていたより面倒だ。まさか、負けたりしていないだろうな……』
戦闘音がしないことに、ある種の予感が吸血鬼にはあった。
しかし、三階に近付くにつれて大きくなる三人分の声に、吸血鬼は別の結論に至る。それから小さくため息を吐いて、自分の次の行動について頭を悩ませことになった。
◇
黒葉が気を失ってから数分後に、桃香も目を覚ました。陽愛と同様に、すぐには事態が呑み込めていなかったが、黒葉の姿を見てすぐさま行動を開始した。
床の上には、全身から血を流しながら目を閉じる黒葉が横たわっている。頭の上側には瑠海が、左側には陽愛が座っていた。桃香も右側に滑り込むように座る。
「ねえ……! どうなってるの……!?」
瑠海がいつもの調子に戻っていることも、黒葉がボロボロでいることも、そもそもこの場所がどこなのかも、全て分かっていない桃香が声を大きくする。
ハンカチを右手に巻き付けて回復魔法を全力で使い続ける陽愛は、ただ首を激しく振った。
「ごめん……! ごめん、なさい……!」
大粒の涙を流しながら、回復魔法を使えない瑠海は黒葉の止血を図っている。ハンカチだけでは無数の傷を塞ぎ切れず、自らのTシャツの端を切り裂いて使っていた。
桃香は説明を求めることをやめ、黒葉の心臓の動きと呼吸を確認し始める。
相当危険な状態であることを理解した桃香は、まだ練習途中である回復魔法を使うことにした。陽愛に倣ってハンカチを手に巻き付け、傷痕の酷い両脚を見る。
「……! こんなっ……!」
脚の傷を見た桃香が、思わず目を逸らす。
「桃香! お願い! 力を貸して!」
叱咤するような強い口調で、陽愛が叫ぶ。その額から汗が流れ落ち、血だまりの中に沈む。
煌々と月が照らす部屋で、必死の応急処置が続いていた。
「きゅ、救急車は……?」
「呼んでる! でも、このままだと――」
桃香の問いに答えた後、その言葉の続きに詰まり、陽愛が唇を噛みしめる。
救急車が連絡してから到着するまで、一番近い場所からは約七分。その間に、どこまで命を繋ぎ止められるかが重要になる。
「ごめん……! ごめんね、黒葉……! 私が、私が……」
しゃくり上げながら、瑠海が吐き出すように言い続ける。
その部屋に、足音が響いた。
『ちょっとだけ、時間を』
短い言葉を言いながら、月音が四人の元へと歩いて来る。
急な登場に驚きながらも、陽愛と桃香は集中を切らさないでいた。
『もう精神力が限界でしょう? 下に行って、助けを呼んで。全員、一旦出て』
刻んだような言葉で、月音がそれだけ言う。確かに、陽愛の精神力は限界で、桃香の魔法もこれ以上の効果は見込めない。
戸惑いながら、陽愛と桃香が顔を見合わせた。瑠海は顔を上げず、涙を零している。
『早く。助けたいなら』
その言葉で、陽愛と桃香は意を決して立ち上がった。嗚咽を漏らす瑠海を、両脇から二人が抱える。
「月音ちゃん……頼んだよ」
「お願い……!」
陽愛と桃香の声に、月音は振り向かずに頷いた。
三人分の足音が遠ざかっていくのを聞き届け、月音は黒葉の傍らに座り込んだ。
『随分と派手にやられたな』
「……私、やります」
『! ……起きたのかい』
月音の目が一度閉じられ、静かに、再び開かれる。
「さっき、起きました。ギリギリですけど、多分魔法も使えます。私が使った方が、少しは効率がいいんですよね?」
吸血鬼の意識からシフトした月音が、目の前の惨状を改めて認識し、顔を歪ませる。
『それはそうだが……ちゃんとできるのかい?』
「はい。吸血鬼さんも言ってたじゃないですか。いつでも吸血鬼さんにお願いしていると、私の在り方に影響するって」
月音はそう言って、近くに落ちていた瓦礫を拾い上げる。尖った個所を左の手のひらに当て、思い切り縦に滑らせた。
「~~~!」
戦闘中には気にならない痛みも、平常時に自分でやると訳が違う。そんなことには慣れていない月音は、想像以上の痛覚を、目を閉じ、唇を引き結んで耐えた。
月音の左の手のひらから手首まで、赤い鮮血が伝う。
瓦礫を捨てた月音は、左手をそっと、黒葉の顔の前にかざした。
傷口から流れ出た血が、数滴、黒葉の口に落ちる。
「あ、あの……今更なんですけど……この能力って、衛生面とか、色々と大丈夫なんでしょうか……」
『君がちゃんと発動できればね』
軽く唸ってから、月音は黒葉の傷口に巻かれていたハンカチを手に取った。それを自分の傷口に当て、黒葉へと向ける。
「不死身の鮮血」
黒葉の傷口が、煙のような白い靄を上げ始めた。月音はそれを見て、強く目を閉じ、左手を握り締める。
救急隊員が部屋に入って来たのは、それから数分後だった。
◇
目を開けたら、どこか見覚えのある病室だった。通り魔事件で刺された時と、もしかして同じ部屋じゃないのか、ここ。
時間を確認すると、十一時半。外は明るいし、もう十六日になっているのだろう。そもそも、俺がマモンと決着をつけた時点で、日付は変わっていたのかもしれないが。
……死ななかったらしい。俺の身体は傷だらけだが、奇跡的に生きていたんだ。
あのままだと普通は死んでいたハズだから、きっと陽愛が回復魔法で助けてくれたのだろう。いや、それだけでも間に合わないな……出血量も酷かったし。どうやって助かったんだ? 俺は。
扉が開く音がしたので、俺は上体を起こす。
「起きていらっしゃいましたか。体調はいかがですか?」
医者かとも思ったが、俺の予想は外れた。雁屋さんだ。
「さっき起きました。調子はなんともないです」
雁屋さんは頷いて、手に持っていた果物籠をテーブルに置き、ベッドの横の椅子に座る。
俺が口を開くより先に、雁屋さんが深く頭を下げた。
「今回は、本当にすみませんでした。私の監督不行き届きです……本当に、すみませんでした」
「いやいや、やめて下さいよ……俺の敵が、瑠海を人質に取ったんです。だから、雁屋さんの責任でも、瑠海の責任でもありません」
「いえ、瑠海とは既に話しました。あの子が、自分の心の弱さに付け込まれたこと、みなさんを傷付けたこと、全て事実です」
う~ん、やはり知っていたか。
当然だな。半日近く眠っていた訳だし、俺のいないところで、大まかな話の摺り合わせは終わっているのだろう。
「あの子たちがいると話せないこともあるかと思いましたので、病室からは追い出しました」
俺の考えていたことを見破ったかのように、雁屋さんが静かに言った。
自嘲するようにため息を吐く。
「瑠海は、どういう調子ですか?」
「そうですね……とにかく、あなたの意識が戻るまでは一睡もしないつもりだったようです」
「だった?」
「私が強制的に眠らせました」
…………はい、聞いてないよ。
「みなさんにも、私にも、ずっと謝っていました。何があったかは、よく覚えていないそうです。お祭りからの帰り道、その途中までは覚えているそうですが、そこからはあやふやだと」
覚えていない、か。
どこまで覚えていないんだろうな。俺との会話は、みんなには言い辛いだけかもしれないが。
何にせよ、ちゃんと後で話さないといけないな。
「その……厚かましいかもしれませんが……あの子を許してあげて下さい。それに……嫌いには、ならないであげて下さい。あの子が悪いことをしたのは事実ですが、それでも……」
冷静な口調で涼しい顔のままだが、雁屋さんの言葉には、どこか懇願するような響きがあった。
言われるまでもない。
「大丈夫ですよ。俺だけじゃなく、みんな大丈夫だと思います。友達、ですから」
友達。
そう、友達だ。それ以外に、特別な理由も、特別な関係も、俺にはいらない。
「それに、たまたま瑠海が狙われただけです。誰にだって、秘めたる願いや望みはありますし、それを隠して生きているのが普通です。それを表に出せば貪欲だと言われますし、多ければ強欲だとも思われますよ」
誰だって自分の好きな通りに生きていける訳じゃない。世間と帳尻合わせをしながら、なんとかしてるんだ。
悪魔と行き当たってしまった。それは本人のせいじゃないのだから。
「……ありがとうございます。あの子にはもう、罰のようなものは与えてますから」
ちょっとだけ、雁屋さんが口角を上げた。
「罰? ですか?」
「ええ、嫌がってましたけど、さすがに素直でした。明日の午後から、お母様の会社の新作発表会を兼ねたパーティーがあるので、それに参加させます」
思わず苦笑してしまう。確かに、瑠海にとっては苦痛だろうな。
「やっぱり、継がせたいんですかね?」
「そうだとは思いますよ」
雁屋さんはどこか素っ気ない。
瑠海が、母親の家具メーカーを継ごうと思っていないのは知っている。雁屋さんは瑠海に感情移入してしまっているが、雇い主であるその両親の意向には口を挟めない。
だからこそ雁屋さんは、敢えて興味のないような態度を取っているのだろう。
「じゃあ、この件はもう貸し借りなしで」
俺は言ってから、あることに気付いた。
「いや……すみません、一つだけ、お願いしたいんですけど……」
雁屋さんは訝し気に眉根を寄せたが、すぐに頷いてくれた。
青奈は学校に行っているので、見舞いには来なかったが、電話をかけてきた。
いつものようにお叱りから始まったが、今回は俺だけの問題でなかったのもあって、すぐにため息を吐いて終わりにしてもらえた。
「病院、小鈴ちゃんも連れて行ったんだよ? 物騒だから」
「ありがとな。母さんは?」
「普通に家にいた。多分大丈夫でしょ、って」
母さーん、さすがに薄情じゃないですかねー。
俺の家ってのは、男に厳しすぎるんだよな。特に俺に対して。
「傷の見た目の割に、全然目を覚まさないから心配したんだよ」
「それは俺も不思議なんだよな……傷の割に、というよりも、傷が治り過ぎていたんだよ。どうしてか分からないけれど」
担当の看護師に訊ねたところ、救急車に乗せた時には既に、危機的状況は脱していたとか。聞いた限りだと、陽愛や桃香のお陰じゃない、らしいのだが。
となると、こんな劇的な治療ができるのは、一人しか思い浮かばない。
「ま、どうせすぐ出れるんだよね? ご飯作って待ってるから」
素っ気なく言ったつもりかもしれないが、口調の中に、明らかな含羞があった。それに気付いて、ついつい笑ってしまう。
「ああ、ありがとう」
「も、もう切るから! 安静にね!」
見抜かれたことで更に気恥ずかしくなったのか、青奈が乱暴に電話を切った。ちょっと前まで、何を考えていたか分からなかったのに、最近はとても分かりやすい気がするな。
少し浮かれ気味だった俺は、病室に戻った瞬間に、引き戻された。
「生還おめでとう、白城くん」
「……今まで何してたんだよ、江崎」
雁屋さんの見舞い品である果物籠から勝手に林檎を取って、そのまま齧り付いている江崎がいた。こいつ何してんだ、マジで。マモンの事情で俺から電話をかけて、それから連絡一切なしだぞ。
「調べたら連絡する、って言ってたよな? え? あれ? 全部終わったんですけど?」
「ごめんごめん、そう怒るなよ」
軽い調子で言って、江崎はいつもの白衣を翻した。でも……顔には疲れが浮かんでいるし、隈も酷い。責められる見た目じゃないな。
「七大罪の情報は、結局はまあ、集まらなった訳だ。仕方ない。サーフィスの連中も、生み出したはいいが、コントロールできていなかったんだから」
懐から取り出した紙束をテーブルに置いて、江崎がため息を吐いた。
いや、まずは林檎を置け。
「調べられたのは、基となった少女のことだけだね。どうやら、父親が酷いギャンブル依存症でね……母親が病死して、金に困窮していたそうだ。そこで、闇取り引きで娘を売ったらしい」
「……! そんな……だって、あの子は……」
「小鈴の件を忘れたのかい? 研究者の中には、手段を選ばない者もいるんだ」
……それでも、信じられない。
それに、あのマモンは笑顔を浮かべていた。あの少女の笑み……あれにはどこか、潜在的なものを感じたのだ。
あれが父親の影響だと言うならば、皮肉などというレベルではない。
「とりあえず、一つの罪はクリアということかな」
そこで俺は、いくつかの疑問を思い出した。
「マモンは……俺の不死鳥の炎を受けて、身体が灰になった……何故だ?」
吸血鬼はそうではなかった。月音の意識が決着をつけたとはいえ、不死鳥の炎によって吸血鬼を抑え込んだのは事実のように感じる。
少しバツの悪そうな顔をして、江崎が林檎を齧った。
「これは仮定の話だけどね。前に言った、人間の意識もなければ交神魔法は完全じゃない、という話に繋がる。僕たち、と言うよりも僕の考えなのだけれど、交神魔法という不確かな存在を、人間の知識で保っているんじゃないかと思うんだ」
「どういうことだ?」
「つまりだね? 伝説上の存在を知っていることで、その存在を保つことになるんだ。僕たちが、魔装法が存在すると知っていることで、その発動と効果が保証されるように。つまりは自家発電するために、人間の意識がいるんだよ」
言いたいことは、なんとなく分かる。
月音が吸血鬼を知っていることで、その吸血鬼の存在が保たれているということか。外部に知られずとも、月音が意識をせずとも、存在を知っていれば、交神魔法は在り続ける。
その存在は異物だ。少なくとも、この世界にはありえない。それでもこの世界に存在し続けるには、交神魔法として、人間の知識と意識に頼るしかない。
「それで、不死鳥の炎に急激に抑えつけられたために、その存在が保っていられなくなった。七大罪としては、人間の意識がない分のディスアドバンテージは、基となった身体の存在力を利用していたのだろう。それでは、存在が揺らげば繋がっていた肉体も滅びる」
どう足掻いても、元の少女には戻らなかったということか。最早あれは、悪魔に憑かれたと言うよりも、悪魔に就かれた身体、なのだろう。
父親に売られ、訳の分からないままに悪魔を植え付けられ、殺された少女――いや、その子だけじゃない。ベルゼブブも、ベルフェゴールも、元は人だったんだ。
「同情しているのかい?」
俺の表情を見てか、江崎が静かな声で言った。
「それは……するだろう。運が悪かった、と言えばそれまでだが、それだけだ。それだけで、どうして死ななきゃならない」
「君が言うと重みがあるね。だけど、今更そんな理不尽さを訴えても仕方ない。もっとクールにいかなきゃ」
「クール、ね」
「そうじゃなければ、君が死ぬよ」
単刀直入に、江崎が警告してきた。
目を合わせず、どこか遠い場所を見ているような顔で、淡々と俺に告げてくる。
「今回、君はギリギリまで追い詰められた。悪魔との戦いが、残りまだ六回はあるというのに、相手に感情移入している場合じゃない。相手はもっと、クールであり、クレイジーだ」
俺が何も言えないでいると、それと、と江崎が声の調子を変えた。
「七大罪、と言うからには、一つの罪が消えれば全体が弱体化するんじゃないか、という希望的観測は真っ向否定された。むしろ逆だ」
「逆……? パワーアップするってか?」
ふざけたこと言うじゃねえか。あのベルフェゴールやベルゼブブが、更に強化されるって?
「劇的にじゃない。分かりやすく言うと、彼らは“七つの大罪という器”から、存在力という液体を、“それぞれの罪の器”で掬い取っているんだ。その“罪の器”の形は日によって大きさを変える。これが彼らの調子の波だ」
江崎がテーブルの果物籠を持ち上げて、中の果物を取り出した。
果物籠が“七つの大罪の器”で、果物が“罪の器”ってとこかな。
「マモンの器が消えたことで、彼らの取り分は増えた訳だ。けれど、彼らの器の大きさも限度がある。だからまあ、パワーアップと言うよりは、調子の波に変化が出るという感じかな」
江崎はそう言って、芯だけになった林檎をゴミ箱に投げ捨てた。
七つの大罪という器がある以上は、あいつらは一人になっても存在できるのか。
「その“七つの大罪の器”ってのを破壊できないのか?」
「分かるだろう? 比喩なんだからさ、無理だよ。まあ、方法はあるさ。全人類から、七つの大罪という知識を消去し、本やパソコン、あらゆるデータを全て消せれば、だけど?」
「遠慮しとくよ」
こう言っちゃなんだが、それなら一人ひとりぶん殴っていった方が早い。
いやいや、それは分かったけれど、俺にはまだ、根本的な疑問が残っている。
「そもそも、どうして不死鳥の魔法は交神魔法を抑えられるんだ?」
あまり触れてはいなかったし、今まで気にはしていなかったのだが。
「あ~……うん、それについては、もうちょっと確証が得られてから話すよ。もう少しで、助っ人がリバースに来るしね」
「助っ人? リバースに?」
秘密組織、だろ? 一応さ。いいのかよ、外部の人間を招いたりして。
「ああ、君も楽しみにしておくといい。……さ、僕はもう行くよ。林檎はご馳走様」
「ご馳走様じゃねえよ」
「一応言っておくけど、気は抜かないことだ。悪魔にとっちゃ、君が弱っている内に畳み掛けたいだろうからね」
ひらひらと手を振って、江崎は病室を出て行った。俺のツッコミは全スルーだ。
やれやれ、とベッドに座り込む。
江崎が置いていった資料を見ながら、俺は安堵のため息を吐くのだった。




