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第106話 代表会議

 

 おそらく、何年経とうとも、人間の悩み、問題などになり続けるであろう議題……恋やら愛とかについて、俺がグダグダ考えていた日の朝――

 

「お、来れたんだな」

「あ……く、黒葉くん……お、おはよ、う……」

 俺は教室に入って来た桃香に、片手を挙げた。

 昨日は早退していたので、来れるかどうか心配だったが。

「おおっ! おっはよ~桃香ちゃん!」

 上繁が元気良く挨拶するので、桃香は一瞬ビクッとした。

「お、おはよう……上繁、くん……」

 返事をされて、上繁の顔がだらしなく緩んでいる。

 大丈夫かこいつ。

「あ! 桃香おはよう!」

 日直だった瑠海が、教室に戻って来て、桃香を見つけて挨拶した。

 そこへ、登校して来た陽愛も加わった。

「黒葉、上繁くん、おはよう」

 ニコリと笑う陽愛に、上繁はまたもだらしない顔で挨拶を返しているが……俺は、夢のことなどがあって、すぐに反応できなかった。

「……?」

「あ、ああ……おはよう、陽愛」

 取り繕うように返したが、それでも陽愛は笑ってくれた。

 夢のことだろ……気にしすぎだ、馬鹿。

 

 ◇

 

「あなたも大変ね」

「いえ……大丈夫ですよ」

 二階の踊り場で、俺は井之輪先輩と話をしていた。

 昼休みに、風紀委員会からの諸連絡で来ていたので、軽く会話。

「一年生で代表選手なんて、滅多なことじゃないって聞いたわよ? もう少し誇ってもいいと思うわ」

 淡々とした口調だが、褒めてくれているようなので、俺は苦笑いした。

「でも、なんで俺だったんですかね……もっと、良い生徒はいるハズなのに」

 ずっと疑問だったことを、井之輪先輩にも訊いてみた。

 しかし、井之輪先輩も首を軽く傾げただけだった。

「まあ、頑張りなさいよ。代表なんだから」

「そう……ですね」

「そうよ」

 力強く言ってくるので、俺も頷いた。

「さて……そろそろ行くわ」

 そう言って、二年生の教室がある三階へと向かって行った。

 その後ろを見送っていると、井之輪先輩はチラッと窓の外を見て固まった。

「あれは……」

「? どうしたんですか?」

 不安に思って訊くと、井之輪先輩は無言で四階への階段へ足を向けた。

「ちょ、何が……!?」

 慌てて後を追う。

 案の定、生徒会室へ向かっているようだ。スタスタと歩いていく井之輪先輩に、小走りで付いて行く。

「あの……」

「聞いてないのだけど」

 厳しい口調で、井之輪先輩は呟いた。

「え……?」

「なんで……第一魔装高校と第二魔装高校の生徒会が……?」

 

 ◇

 

 来賓客玄関を通り、四人の生徒が第3魔装高校校舎へと入って来た。

「あれが……第一と第二の、生徒会長と副会長、か……」

 何十人もの野次馬の中に混じり、俺は呟いた。

 圧倒的オーラだな……。

「ってか……第二の生徒会長って……」

「お、女の子……なんだね……」

 いつの間にか、俺の後ろにいた陽愛が、言葉を紡いだ。

「え、お!? 陽愛!?」

「あ……ごめん、いきなり出て来て」

「い、いや……ただ驚いただけで……」

 少しショックを受けたような顔をする陽愛に、俺は軽い罪悪感を抱いて取り繕った。

 それにしても……まあ、ありえない話じゃないよな。女子の生徒会長ってのも。

 第一の生徒会長は、眼鏡を掛けた長身の男子。副会長は、鋭い目つきの女子だ。

 第二の生徒会長は、温厚そうな女子だ。副会長は、なんだろう……説明し難い。普通だ。特に特徴もない男子だ。

 なんとも言えないな……この組み合わせ。強いのかどうなのか、そういうことも把握しにくそうだ。

 てか、何しに来たんだ?

「さて、と……会議室へ行きたいんだが?」

 第一の生徒会長の言葉に、一番近くの生徒が慌てて答えている。

 ああ……声からして分かる。こいつ、かなりの自信家だ。

 四人は生徒を押し退けるようにして、会議室のある四階へ向かって行く。

 俺はその後ろを、静かに追いかけた。

 

 ◆

 

「さすがに……早すぎないかい? 俺は放課後を予定していたはずなんけど?」

 第三魔装高校、四階の会議室に、六人の人物が集まっていた。

 組まれた長机を囲み、重苦しい雰囲気を出して、パイプ椅子に座っている。

 鋭間が呆れたように言うのを見て、第一の生徒会長――雲類鷲(うるわし) (がい)が、馬鹿にしたように笑った。

「残り日数もないから、授業放免で来てやったというのに……随分じゃないか、輝月」

 鋭間は鼻で笑って、第2の生徒会長――不舞(ふまい) (かや)の方を見た。

「不舞は……忙しいって聞いたけど?」

「まあ、そこそこ忙しいのだけど。伝統的な話し合いだもの」

 栢は、微笑んで答えた。

「そうか……悪いな。本当は、第二でやるはずだったのに」

 鋭間が詫びると、苅は首を振った。

「そんなのはいいのさ。集まればそれまで。どこでもいい」

「そこについては、私も同感なの」

 栢も言ったので、そうか、と鋭間は姿勢を正した。

 隣に座る副会長、羽堂 今晴に記録を取らせる。

「じゃあ、始めようか……聖なる魔装戦セント・フェスティバルの、各校代表合同会議」

 

 ◇

 

 会議室の扉の前で、姿勢を低くした状態の黒葉は、耳をすましていた。

 何人もの生徒が来ているが……先頭にいる。

「各校代表合同会議……? ってことは……俺が選ばれたのは、特別ルールじゃない?」

 特別ルールというのは、聖なる魔装戦セント・フェスティバルを取り仕切るにあたって、各三校の代表が集まっての会議で決められる、文字通りの特別ルールである。話し合いによって様々だ。

 黒葉は眉をひそめた。

 既に、各校代表会議は行われたものだと思っていたのだ。

 それが今日……しかも、平日だ。

「はいは~い! 皆、戻ろうね~! 生徒会以外は、通常授業だよ~!」

 聞き覚えのある、ハイテンションな声が後ろから聞こえる。黒葉が振り向くとそこには、生徒達を押し戻す水飼 七菜の姿があった。その後ろには、品沼 悠もいる。

 そして、七菜は黒葉を見つけると、わざとらしく目を見開いた。

「おゃおや!? こりゃあ、クローバーくんじゃぁないかい!? 君が気になるのは分かるのだけども、ねえ~……これは、正式な会議なので、盗み聞きは御法度である!」

「は、はあ……すいません」

「いやいや、分かればよろしい! 戻りたまえ~」

 大仰にジェスチャーする七菜に、黒葉は苦笑した。

 少し気になってはいたようだが……黒葉は大人しく、教室へと向かった。

 

 ◇

 

「……では、その件は解決済みで?」

 鋭間が眉を上げて訊くと、両生徒会長は頷いた。

「ああ、問題ないね」

「大丈夫なの」

 各校の副会長が、記録用紙へ決定事項を記載していく。

「さて……特別ルールについてだ」

 鋭間が切り出すと、全員の眼光が鋭くなった。

「やっとか……こればかりは、簡単に決められないなあ」

 苅がニヤリとして言った。

 決められるルール数に限りはないが、全員が同意できるものでなければならない。

「俺からの提案は特にない。今更、代表者についてのルールは作れないだろ?」

「ああ、それなら――」

 鋭間の言葉に、栢は微笑んで続けた。

「私としては、一年生出場のルールを定めたいの」

「……っ……」

「……何?」

 突然の提案に、鋭間が眉を上げ、苅が目を細めた。

「どうして、一年生の出場を望むんだ?」

 不審そうに苅が訊いた。

 微笑んだまま、栢はゆっくりと口を開く。

第二(私のとこ)では、生徒会役員で一人ずつ選定をしたの。その中で……庶務の子が選んだのが、一年生の女の子なの。決まったことだから仕方ないけれど、可哀想だと思ったの。それで」

「突然、だな……」

 そう言いながらも、鋭間は特に動じてはいなかった。

「それは、そちらの都合だろう、不舞。悪いが、否決だ。既決のメンバーを泣かせる訳にはいかないので」

 ただ、苅だけは首を振った。

 確かに、一年生ルールというのは苦しすぎる。時期も遅い。

「そうだな……こればかりは、否決だろう」

「そう……仕方なし、なの」

 少し残念そうに栢は呟いた。

「まあ……あの子の力は……私も、計り知れてはいないのだけど……」

 

 ◆

 

 放課後……輝月先輩に呼ばれた俺は、生徒会室へと向かっていた。

 今日の代表会議といい……俺には、理解が追い付かない。

「失礼します」

 例のごとく、ノックして返事が来て一礼して入る。

「やあ。待ってたよ、白城くん」

 柔らかい笑顔を浮かべ、輝月先輩が俺に喋りかけてきた。

 室内には既に、千条先輩、小園先輩、瓜屋先輩がいる。

「さて、と……早速だが、代表会議で決まったことをお知らせしようか」

 全員の気が引き締まる。千条先輩だけ、欠伸と共に脱力している。

「まずは試合順番だが、変更希望はなかったので、前に連絡した通りだ」

 すぐに続ける。

「特に連絡することはないのだが……それでも、特別ルールだが――」

 俺が一番気になっていた事……もしや、そのルールで選ばれたのかとも思っていたぐらいだ。

 とても気になる。

「――それも、特には決められていない。つまり、シンプルな試合になる訳だ。しかし、言うなれば……最終代表戦だ」

「……」

 つまり、俺の試合だ。二度、戦う事になる。

「順番のことさ。もちろん、有利なのは、最終一回戦と最終三回戦を戦える者だ。かなりの休憩が得られるからな」

 最終代表者は、自分以外の最終代表戦を見ることができない。相手の情報を知って、有利になってしまうからだ。

 更に、最終代表戦一戦毎に、回復魔法などでコンディションを整えてもらえる。しかし、それも決まっている一定量。どれだけ、余裕を持てるかも鍵だ。三十分のインターバルで、自然回復など微々たるもの。一試合分の休憩はかなり有利だ。

「最終代表戦は……一回戦、第一対第二。二回戦、第二対第三。三回戦、第一対第三。ということになった」

 クソッ……よりによって、か……。

「以上だ。後は……特訓の話だが――」

 

 ◇

 

 あの後……俺は帰宅もせずに、お馴染みの旧校舎へと向かった。

 特訓を再開……して下さるそうだ。

「やあ」

「……どうも、羽雪さん」

 頭を下げる。

 木の枝に腰掛けて、羽雪さんが俺を待っていてくれた。

 あんな俺の暴走があっても……特訓をしてくれると。

「ああ、今日はさ。ちょっと楽しくいこうと思うんだよ」

「楽しく……?」

 驚きのワードに、素直に眉をひそめる。

 羽雪さんは軽く頷いた。

「今日、校舎内を使おうと思う」

 そう言って、今は使われていない古びた旧校舎を指差す。

「それは……勝手にしても……」

「勝手じゃないさ。許可はあり」

 軽く笑って、旧校舎へと入って行く。

 楽しく、か……。

 聖なる魔装戦セント・フェスティバルでは、コロッセオのようになっている、大きく殺風景な闘技場だ。シンプルフィールド。

 だからこそ、屋外戦闘訓練をしていたのだが……今回は、ちょっとひと工夫、か。

 いいじゃんか……俺、好きだよ、こういうの。

 

  

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