表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリスタル∽ゼロ―双月姫の誓い―  作者: 宛 幸
第1章 クリスタルとギア
4/4

epⅢ 少し落ち着こう

帰り道、交差点側に寄り道した。

少し遠回りだが、問題ない。

「……なんでこんな道通るのよ。その分聞く時間が増えていいけど」

一つを除いて。

ぶつくさと文句を垂れ込みながら着いて来るクラスメイトの椎梛。

もう今更言わないけど、強いて言おう。文句あるなら着いて来るなよ。と

道行く人達や巨大モニュメントやスクリーンからの喧騒は日々増している気がする。

それもそうか。もうすぐアレの公開が迫っているのだから。

「……あ、ギア」

椎梛が呟く。

椎梛が見る先は例の物、“エレメント・ギア”の広告されているテレビのスクリーンだった。

エレメント・ギアとは特殊なクリスタルから選出された科学技術の武具だ。身体の一部分に装着し、四大元素である火・水・風・土の四大系統を操ることが出来るという優れ物だ。

それは僕の知るものと似ていた。

コネクトマジック。それは体のどこかに刻まれる紋様が出た者にしか扱えない所謂魔法。

そしてギア。ギアは段階的に強大な力を得ることが出来るシステムで、それは僕はよく知っていた。

……だってそれは…。

「……ちょっとねぇ。ねえってばっ」

「……え?」

僕の目の前に椎梛の顔があった。

「――うおあっ?」

変に声を上げてしまった。

考えごとをしていたせいで意識が沈んでしまっていたらしい。

「やっぱり聞いてない」

椎梛が呆れた声を出す。

「……わるかった」

「……なんか素直ね」

そりゃ別に僕は無視する程非情じゃないからね。返事くらいはする。

「別にいいだろ。そんなこと」

「……いいけど」

なんなんだ。

「で、なに?」

「……あんた、“ギア”って知ってる?」

それかよ。

「エレメント・ギアのことだろ?」

「違うわ。本物の“ギア”のことよ」

本物のギア。それを訊くということは、何かしら知っているということだろう。

「……どういうこと?本物ってさ」

「また惚けるつもり?ま、いいけどね」

「……はぁ」

「溜め息?溜め息吐きたいのは私の方よ」

そう言って肩をすくめる椎梛。

どうしてギアを知っているのか、どこまで知っているのか、知りたい気持ちはあるが、そうするとこちらまで情報提供しなければならなくなる。

それはめんどうなので、僕は黙る。

「……まあいいわ。行きましょ」

偉そうに先陣を切る椎梛。だが、すぐに歩みを止める。

「ん?どうした」

「…………いい」

「?」

「どこに行けばいいのか、って訊いてるのっ!」

こんな往来で怒鳴らなてもいいじゃないか。

これじゃあ観衆の注目の、的じゃないか。

「……ほら、行くぞ」

仕方ないと思い、椎梛の腕を掴む。

行き先は喫茶店“ぷらなりあ”だ。なぜこの名にしたかわからないが、きっとなにか深い訳があるのだろう。そう僕は信じる。

「いらっしゃいませ~」

営業スマイルで出迎えてくれる店員。

僕達は禁煙席に座り注文をする。

「僕はホットココア。椎梛はどうする?」

「私はコーヒー……て、なんで――」

「じゃあそれで」

メニューの確認をして去って行くウェイトレス。

僕は用意された水を一口含む。

「ただ僕はここの方が落ち着くだろうと思ってね。特に意味はないよ」

往来でごちゃごちゃ言われたら堪ったものじゃないし。

「そ……それだけ?」

「それだけ。別になにも話すことないしね」

それから僕と椎梛はほとんど話すこともなく解散した。

次の日僕はどつかれたがそれは別の話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ