epⅠ 進学と女の子
朝、僕は下ろし立ての制服に着替え、クリスタル結晶を紐に通したネックレスを首にかけ服の中に入れ、手にグローブを填める。
学校指定の鞄を持ち自室を出る。
それが僕の今日からの日常だった。
僕が向かうは市内にある清興鏡学園。そこの高等部だ。
今日から高校生になり、僕は義務教育を卒業した。
僕は半年前に起こった事件を切っ掛けに高校進学を決めた。
それはきっと、あいつ……“アズハ”との繋がりがあると思ったから。
僕は学園の門を抜けた。
出た時間が割と早かったようで、結構時間が余った。
僕は裏庭辺りでも散歩しようと思った。
校舎の裏に回り、人気のない場所を通る。と言っても、元々時間が時間の故に人なんていないのだが。
大きな木がある広い所に出た。そこで僕は校舎の壁に頭を向けて寝転がる。
日陰が広く、気持ちのいい風が吹き抜ける。
ここをベストプレイスにしようと思った。
さっきより強い風が吹く。
「きゃあっ」
突然女の子の叫び声が上から聞こえた。
……上から。
見上げると窓から女の子が降って来た。
僕は咄嗟的に呟いた。
――コネクト、ウインドリンク
手に風の渦が巻き付く。
目には目を、歯には歯を、風には風をなんて。
気付くと僕は女の子をお姫様抱っこで抱えていた。
まさか窓から女の子が落ちて来るとは思わなかった。こんな漫画染みた展開が起ころうとは……この世界も捨て難いな。
「……」
女の子は黙ったまま僕を見上げる。
「大丈夫か?」
「…………」
なんかみるみると女の子の顔が赤くなってゆくぞ。なんか面白い。
このままでもあれだから、僕は女の子を下ろす。
「次からは気を付けなよ。じゃあな」
僕はその場を立ち去ろうと女の子に背を向ける。
「……ちょ、ちょっと待って」
すると女の子が僕に声をかける。
僕は首だけ後ろに向ける。
「……。…………お、お礼なんて言わないからっ」
僕はその言葉に笑って、答える。
「ん、別にいいよ。お礼なんて。じゃあね」
今度は振り向かずに歩いた。
入学式は退屈だった。だけど女の子とちょっとしたお知り合いになったから良しとする。
僕はそう結論付けた。