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茨城説話

曾祖母講釈 七福神

作者: 遥 夏

 筆者が幼少のおり、曾祖母に口伝えされた七福神の話を紹介する。

 一般的に知られている七福神の姿とかぶる部分もあるが、やや独特な面も見受けられる。



【毘沙門】

 七福神のなかでは、いちばんおっかねぇ顔をした神様だ。

 罰当たりなことをすっと踏み潰されっちまうんだわ。

 人を踏み台にして上を目指さなきゃなんねえときの神様、勝負事の神様でもあんだっぺ。


【恵比寿】

 商売繁盛の神様だわ。

 海の神様で月の神様だけんと、(ささげ)を乾かすときに箕を使うのは恵比寿さまと関係あんだと。

 男の双子が産まれっと、恵比寿・大黒ていうんだわ。


【大黒】

 五穀豊穣の神様で、特に米を生み出す神様だっぺ。

 米俵に乗っかっていいのは、人間でも神様でも大黒さまだけなんだわ。

 子作りの神様でもあってよ、米俵には白粥がはいってんだと。


【福禄寿】

 こんなに頭のなげえ人間はいねぇべなあ。

 んだから、人がもとになったんではねえくて、宇宙人なんではねえかな。

 仙人の姿でよ、頭が良くなるようにお祈りする神様で、そっから出世の神様でもあるみてえだわ。

 福禄ってのは、天っからの贈り物っつうことだっぺ。


【寿老人】

 正月近くになっと、真夜中だけ南の空さでてくる星があってな。

 それが寿老星だって話だわ。

 珍しい星だもんで、それを見たら一年が幸せになるんだわ。

 長寿の神様だから、赤い服を着てんだと。

 クリスマスのサンタクロースと似てんだわなあ、時期も近いけんど。

 寿老人は鹿が乗りもんだけんとが、サンタさんはトナカイだっぺ。


【布袋】

 ふくぶくしい和尚さんだ、子孫繁栄の神様だっぺ。

 袋をもってんだけんと、これを「子種袋」つうんだわ。

 男の神様だけんと、妊娠してんだって話だど。


【弁財】

 男の兄弟のなかに女の子がひとりだけ産まれっと、弁天様っていうんだわ。

 男の子どもでも、稚児衣装さつけたときは弁天様っていうわな。

 弁天様は女の格好してっけど、七福神に女の神様はいねえんだ。

 んでも、美人だからよ、男のひとに言い寄られて困ったんだっぺな。

 あんまり男が近寄んねえように、弁天様のまわりにゃ必ず池があんだ。

 男が外でおしっこをすんのを「雨鳥」つうんだけんど、弁天池は「雨鳥池」つうんだ。

 デートをするのに弁天様の神社にいっちゃなんねえ、弁天様の嫉妬を買うんだと。

 男なのに女の姿だっつうんで、男でも美しさを目指す場合の神様だわ。

 舞台を踏んだり、音楽したり、芸術を見守る神様だっつうわな。





 

 曾祖母は明治生まれ、21世紀の最初の年に亡くなる。

 そのわりに、サンタクロースやデートといったカタカナ語を用い、また、老境の考察には目を見張る。

 筆者が小学二年のときに聞いたものなので、覚えている限りしか書けなかったが、弁天に関してのこの一節が、私の人生に大きな影響を与えたことは間違いない。

 宗教と性の姿を最初に教わった記憶であるといえる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めて聞く解釈でございました(笑) 福寿祿を見て宇宙人とするその発想はまさしく斬新の一言につきます(笑) 驚いたのは弁天様でした。カップルでお参りしてはならないということは知っていました…
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