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除外なう  作者: 白城 海
―犯人逮捕の日―
16/16

幕間 天海慶次と日常の1ページ

■六月五日 平坂高校 第二食堂。


「肉うどん一つ」

「ケチャップは?」

「入れねぇよッ!それは肉うどんに対する冒涜だろうがッ!」

 カウンターが騒がしい。

 見ればクラスメイトが食堂のスタッフにツッコミを入れていた。

 斜視とも言える目つきの悪さ、三白眼。短めの髪の毛をワックスで逆立て抗議する姿はさながらヤクザかチンピラだった。

 もちろんおかしな事を言っているのはスタッフなのだが、《第二》なのだから仕方が無い。チンピラは諦めて全てを受け入れるべきだ。

 生徒数3000人と言うこともあり、平坂高校(うち)には3つの学食が存在している。

 第二食堂は安さとボリュームと低カロリーが自慢だが、スキあらばカウンターのお姉さんがケチャップを投入してくるので油断が出来ない事で有名だった。嫌な名物である。


「なんだろね。肉うどんに対する冒涜って」

「知らねー。矜持でもあるんじゃないのか?」

 ほのかにコンビーフとチーズの香りを漂わせる女に、いいかげんな返事をする。

 隣では風間がホットサンドをかじっていた。

 俺はと言えば、一杯200円のかけそばを既に食べ終わっている。口の中がケチャップ味で吐きそうだが。底に沈めてあるなんて反則だと思わないか?

「うーん。そうなのかも。神名君っていつもお弁当だし」

「死ぬほどどうでもいい…。親でも寝込んだんじゃないのか?」

「それは事件の香りね!だとしたら高校生探偵の出番が――」

「無い」

 ばっさり斬り落とす。目に見えるもの何でも事件にされたらたまったものではない。

「馬鹿な事言ってないで、早く食えよ。来週から中間テストなんだから。勉強するんだろ?」

「うー。お世話になります。先生」

「と言うか、直前に慌てる人間が部活なんてやってる場合じゃないだろ。どうせ活動してるのかしてないのかよく分かんねーし。この部活」

 ぶつくさと説教。

 全く、世話が焼ける友人だ。 


「それに――」

「…テスト、余裕なんですね」

 もう一つ、二つ文句を続けようとした時、隣で食事を終えた生徒が横から声をかけてきた。

 ショートカットの女生徒だ。綺麗にアイロンをかけた制服をかっちりと着こなした優等生風。

 襟の校章の色から察するに同級生。

 横目で、俺の表情を、感情を観察するかのように覗きこんできている。

「別に。ただ、記憶力がいいだけだよ」

「…そんな事言って、文系科目は学年トップじゃないですか。A組(とくしん)を差し置いて。」

「記憶力がいいだけだっての。あとダブりだしな。理数系は全滅。平均点も怪しいんだ」

 以前も言ったが、俺には想像力や人の顔色をうかがうこと、空気を読むことが苦手だ。

 その性質は学力にも顕著に表れ、数学や英文法などの《組み立て》が必要な科目の点数は軒並み低い。


「記憶力って…ギャグよね?忘れん坊なのに」

「放っといてくれ…」

 軽口を挟んできた風間をあしらう。

 誰か1人くらい信じてくれたっていいだろうに。


「…次のテスト、負けませんから」

 女生徒がからのトレーを持って立ち上がる。

「え、あ。あぁ、頑張ってくれ」

 どうしていいのか分からず、適当な相槌。

 俺の言葉が気に障ったのか、ほんの一瞬睨むような冷たい目を見せる女生徒。

 そのまま俺に背を向ける。

「あらあら。人気者ね。ケージ」

「意味わかんね。ってか、ちょっと聞きたいんだけどさ」

「何?」

「今の、誰?」

「…隣のクラスの生徒よ。A組の。知らないで喋ってたの?」

 風間の声には、何故かため息が混じっていた。

《忘れ》ることはもはや日常なのだ。仕方ないだろ。


「《忘れ》ることのせいで、知らない人間をさも知ってるように話すのだけは上手くなってる気がする」

「ダメじゃないかな…。それ」


 記憶にない人間と話す時は、まず風間に確認を取るように約束させられてしまった。

 お前は俺の保護者か。


「何て言うか、やっぱり不便だよな…」


 こうして、俺――天海慶次の日常は過ぎていくのだった。

最後に日常の一幕。

これにて、《日常編》完結です。

続きは新規作成しましたのでそちらでも宜しくお願いします。>こちら http://ncode.syosetu.com/n5490z/


モチベーションにつながるので、良ければ評価や一言でも感想を頂けると嬉しいです。

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