第8話 眼帯少年の修行日々
近眼盗賊団を完全に殲滅した後、保護した子供達は、僕が支配地域にしている『異空眼』の世界で暮らす様になったんだ。
最初は人数制限を設けて、数を減らそうとしたんだけどね。
「それはあんまりです。ライト様らしくない判断です」
「カァ……そうです。この子達は、私がちゃんと責任を持って育てます。ですから皆、保護させて下さい。ライト様! カァ~!」
「「「「お願いします! ライト様~!」」」」
……なにを数千は軽く越える子供達の前で、僕の正体をバラしちゃってるの? アリアとオディちゃんは。
夜な夜な、こんな世直している事をお母様とお父様に知られたりしたら、僕がお仕置きされるっていうのにさ。
『魔眼輪廻』の絶大な力があるっていっても、そんなの家族感じゃ関係ないから。
力も発揮でお母様に捕まってお尻ペンペンされるのが関の山じゃないか。
それに助けた子供達の中にちらほらと……この後、成長してこの世界で活躍する主人公が攻略するヒロインや主要キャラがいるのはヤバイんだって。
……だけど、アリアとオディちゃんにここまで頼まれたら断りきれないじゃないか。
「……分かったよ。皆、僕が今の《《ところ》》所有している支配地域に住んでもらうよ」
「ライト様……流石です」
「わぁ~! ちょっと! 皆、見てる前で抱き付かないでよ。アリア~!」
「フフフ……私は気にしませんよ。ライト様」
「僕は気になるんだよ」
「カァ~! ありがとうございますカァ! ご主人様。ガァアア?! なんで私のハグを拒否るんですカァ?!」
「いや、オディちゃんって、元々は焼き鳥君だし。普通に拒否るよ」
……オディちゃん事、バ美肉ちゃんがどさくさ紛れて僕に抱き付こうとしてたから拒否ってあげたよ。
「カァ~! ご主人様は私にいつも厳し過ぎます。カァ~!」
「そうなんだ~! それよりもほら、近眼盗賊団から頂いたお宝と、救い出してあげた子供達を異空眼の世界に送り込むからね。ちゃんと先導してあげてよ……あそこら辺のモンスターは殲滅してあるから大丈夫だと思うけど。守ってあげてね」
「カァ~! 了解ですカァ~! では皆さん行きましょう。ここよりも安全な異空眼の世界へ……カァ~!」
『異空眼』
ズズズ!!と子供達が僕の《《眼》》の力で異空眼へと、消えていくね。
「あ、あの! ライト様!」
「ライト様!!」
「ライト君」
「ライト~!」
「はい? 君達は蛞く……じゃなくて、ヒロインズちゃん達」
「私はこの恩は一生忘れません。ですのでライト様のお役に……」
「ライト様の隣に立てる様な相応しい女性に……」
「ライト君と一緒に居られる様にするから……」
「大きくなったら子孫繁栄……ライト。私と子孫繁栄し……」
「カァ~! 早くこちらに来て下さい。姫様達~!」
ズズズ!!とヒロインズちゃん達は、何か言い終える前にオディちゃんに誘われて異空眼の中へと消えて行ったよ。
「最後まで聞き取れなかったけど。あの娘達何が言いたかったんだろうね? アリア」
「さぁ? 美味しいご飯が食べたいとかでしょうか?」
「あ~! 成る程ね。皆、捕まっててお腹空かしてたし。きっとそうかもね」
「……はい」
◇
まぁ、そんな感じで2歳の頃から、夜の眠れない日はアリアを連れて、夜な夜なミーティアス王国や隣国の悪い人達を懲らしめながら世直しをしながら遊んでたんだ。
昼は昼で僕とアリアが同年代の子よりも覚えが早いとかいって、お母様は超スパルタの魔法教育をしてくるし。
「お、お母様~! 待って下さい! 僕はまだアリアをおんぶして最中なんですから~! アリアも僕の背中でリラックスしながら眠らないで~!」
「……ライトしゃま」
「ほら! ライト~! アリアちゃんを守りながらなんで私を倒せないの? それじゃあ、アリアちゃんに嫌われちゃうわよ」
「ひえぇ!! お母様に『魔眼輪廻』の力を見せるわけにもいかないし。魔法を死ぬ気で覚えて戦うしか、お母様に対抗する手段がないじゃないか~! 『光盾』」
ちなみにこの《ゼロ・スフィア》と言う世界の属性魔法は、火、水、雷、風、土、光、闇の7種類あって。
そこから、その7種類の魔法の比率を変える事で自分のオリジナル魔法を編み出していくんだ。
特殊魔法とかもあるけど。それは今は覚えなくていいや。今はただ……お母様の猛攻から生き延びなくちゃいけないんだ!
「ひえぇ!!」
「……ライト様」
「うん! 良い才だわ。これはもっと本格的に魔法を覚えさせた方が良いわね。私のお師匠を呼んじゃおうかな~!!」
「ハァハァハァ……お母様のお師匠様?」
お母様のお師匠様ってたしか、主人公パーティーの1人。『万物の……
「『最古の魔女』ラミエルじゃ。可愛い弟子に頼まれて、小僧と小娘に1から魔法を教えてあげてほしいと頼まれたんじゃが……とりあえず。ワシの攻撃を避けよ。その後、お主達が生き残っておれば。ワシの全てを教えようぞ。『天地半開』」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい~! なんでこんな場所で固有能力使ってるんですか。お母様もラミエル先生もめちゃくちゃだよ~!」
「……ライト様。おんぶして下さい。眠いです」
「そうだね。昨日も2人で夜更かししてたから、寝不足だよね。アリア~!」
僕とアリアの魔法の修行はそれはもう厳しいものだったよ。
クーヘンさんの剣術や武術の修行並みにね……
「ライト坊っちゃん。そんな剣捌きでは、自分の身も守れませんぞ。アリアを見習って下さい!」
ガキンッ!と大の大人が成長途中の子供に本気で斬りかかってほしくないんだけど。
ていうか。あの剣豪のクーヘンさんに褒められるって、アリアの剣術ってどれだけ凄いのさ……隣で剣術の修行をしているアリアをチラッと見ようかな。
「ティアス流剣術一の型……『煌』」
スパンッ!
「素晴らしいわ。アリア。貴女なら後、数年もすればクーヘンさんから免許皆伝を貰えるわ」
「セレスティナお姉様……ありがとうございます///」
剣の修行用の藁の塊をいとも簡単に切り刻んじゃったよ。たしか、《ゼロ・スフィア》の女主人公の才能は剣術だったから……それをフルに発揮してるって事ね。
◇
12歳になるまでの10年間。アリアとオディちゃんと一緒にひたすら修行と世直しの日々に費やしていたね。
剣術の才能が全くない悪役貴族の僕と違ってさ。
「隙ありですぞ! ライト坊っちゃん!」
「ぐえぇ?! お腹に容赦なくクーヘンさんの木刀攻撃が僕に命中した? 嘘? 魔法障壁を何重にもかけてるんの……に?」
ドサッと倒れたよね。クーヘンさんの攻撃。何なのあれ? 魔法論理とか物理法則ガン無視なんですけど。
「ライト坊っちゃん。それはでは大剣豪の道もまだまだですぞ。剣の才能が全くなくても、クラウディア家のものなば気合いと根性で一流になるのです」
「……いや。大剣豪って……そんなのならなくていいよ。別に……(ガクッ)」
魔法、剣術の超英才教育と続いたら、今度は学術や芸術のお勉強なんだけど。
これは後にクラウディア家のメイド長まで出世する。ムッツリエルフのセレスティナさんが僕とアリアの先生になってくれたんだ。
「エルフ族は長命な為に暇を持て余します。その為に、世界各国の学術や芸術に触れる為。知識も感性も芸術性も超一流なのです。良いですか。ライト様。アリア……つまり私から学問と芸術を学べば、世界のありとあらゆる技術を覚える事ができるのです」
インテリ眼鏡をクイッと上げてムッツリエルフさんが何か言ってるよ。
「はい! セレスティナお姉様」
「……はい。セレスティナ先生」
このセレスティナさん。確かに凄い博識なんだけど。性欲も異常だから授業中に突然変な事を言い出すんだよね。
それを聞いたアリアに悪影響が起こらない事を僕は祈るよ。
「セレスティナお姉様。今日も素敵です」
あーあー、アリアはセレスティナさんの事を実のお姉さんみたいな慕っているから、あのエロフさんの真の姿を知らないんだね。
でも僕は知っている。ゲーム内でのセレスティナさんの変態的な本性をね……
(あん! 触手は最後のデザートですうぅ!!)
とか言って、女の子主人公のアリアに分からされてたれてだよね。
それがこっちじゃあ、メイドの先輩と後輩で、アリアはセレスティナさんをお姉様とか慕うとか。どんな悪夢なんだい?
「それでは早速、各国の夜の営みについてお勉強しましょう」
「はい! セレスティナお姉様」
「……誰か来てえぇ! 天真爛漫なアリアにセレスティナさんが変な事を教えようとしてるから、誰か早く止めに来てえぇ!!」
なんて日常がこの10年間続いて。時々、大きなイベントや試練もあったで本当に忙しなくて楽しい日々だったね――――
《クラウディア家 庭園》
そんな10年間を思い出しながら、僕はアリアが入れてくれた紅茶を優雅に飲んでいるよ。
心温まる午後ティーをね。
「うん。美味しい紅茶だね……後、数日で魔法学園での生活だね。アリア」
「はい。ライト様との王都での世直しも楽しみですわ。」
「王都の世直し……あぁ、色々とオディちゃから連絡を受けているあれかい?」
「はい……夜な夜な王都に現れる『隻眼の魔法使い』。この捕獲を手伝ってほしいとお手紙が届いておりますわ。ライト様」
アリアが胸元から取り出した黒色の手紙。これはオディちゃんの手紙だね。
「……早速、世直し依頼かい。良いね。王都に着いたらさっそく情報収集に当たろうか。僕達、黒銀仮面の出番だね」
僕はオディちゃんの手紙を読みながら不適に笑ったのさ。




