第7話 10年間の思い出話 後編
《近眼盗賊団アジト前》
盗賊さんの案内で森の奥を抜けると、やたらと大きな砦が見えてきたよ。
砦の入り口に警備は居ないしみたいだし。中で宴会でもやっているのかな?
「黒仮面の旦那。ここが近眼盗賊団のアジトですぜ。へへへ」
「へ~! 此処がね……なんか地味だね」
「陥落させたらライン様と私の隠し別荘に致しましょう。よくよくは屋敷も建てて……」
「うん。建てないよ。妄想もそこら辺にしておこうね。アリア」
「へへへ……(さっきからなんなんだコイツ等は? ガキのくせにやたら強いし。変な格好をしやが……)……てぇ……」
『異空眼』
ズズズ……と。案内役を終えた盗賊さんを、お仲間さん達が居る異空眼の世界に飛ばしてあげようね。
今頃、危険なモンスター達が鳥獣跋扈している場所でフルマラソンでもしてるだろうけどさ。
《異空眼外壁》
「……何だここは? さっきまでアジトの前に立っていたのに、なんで草原みたいな所に居るんだ?俺は?」
【ゲラゲラゲラゲラ!!】【アハハハハハ!!】
【クスクスクスクス!!】【イヤハアァァ!!】
「何だ? 獣みたいな叫び声が……」
「お、おい! 逃げろ!! 喰われちまうぞ!」
「助けてくれえぇ!! 殺されちまう!!」
「もう嫌だ! 俺、もう悪さしねえから許してくれよぉ!」
「……なんで……居なくなった筈の仲間達が追いかけ回されてんだ?」
【わ、わ、わわわだじぎれび?】
「は?……水色の眼の化物?」
【バダジギレビイイイ!!】
「ギャアアア!! 来るなぁぁ!!」
……今頃、異空眼だと。そんな感じになってるのかな?
「!……ライト様。偵察を任せていたオディさんが戻って来ました」
アリアが盗賊のアジトの砦の見張り台を指さしているね。暗くて迷彩眼を使わないと上手く見えないけど……誰か飛んで来るね。
「……ご主人様。アリア様。ここが最近、クラウディアの南部を騒がしている近眼盗賊団のアジトに違いないですカァ。中には捕らえられている子供とかも居るので、早く救い出してあげたいです。カァ~!」
黒髪美少女が黒い着物と黒い翼を生やして、僕達の方へと舞い降りて来たよ。この娘は変な力によってバ美肉したオディちゃんだよ。
3年前までは焼き鳥君だったのに。今じゃあ、どこに出しても恥ずかしくないバ美肉ちゃんになって、性格もだいぶお淑やかになったんだ。
人って変われば変われるものなんだね。オディちゃんはバ美肉しただけなんだけどさ。
「やっぱりそうなんだ……泳がせて財宝とかたんまりと貯め込んでから、壊滅させようとしてたんだけどね。子供達まで捕まえてたのは計算外だったね」
「カァ……ご主人様。どうにかして子供達を救いだしたいです。カァ……」
オディく…オディちゃんが僕に懇願する《《目》》で僕を見つめているよ。どうしたんだろうね?
「救い出してどうするんだい? その後の面倒は誰がみるんだい? クラウディア家の屋敷に住まわせるのかい? 何人居ると思ってるいるんだい? 多分、ここだけに居るわけじゃないよね? 近眼盗賊団はかなり隠しアジトを持ってるって、執事長のクーヘンに聞いているよ」
「カァ……そうですけどカァ」
「……ライト様」
気まずそうな雰囲気を心配して、僕とオディちゃんの顔を交互に見るアリア。
アリアのそんな顔見たくないんだよね。アリアにはいつも明るくいてほしいんだ……全く。
オディちゃん。優しいアリアに感謝しなよ。
「僕が『聖域眼』で広大に結界を張っている安全地帯で保護しようね。あそこ位の広さなら自給自足もできるし、ある程度大きく育ってもらったらクラウディア領地で暮らしもできるだろうからね」
「ライト様! 流石、ライト様です!」
「ちょっと! アリア。いきなり抱き付かないでよ! 恥ずかしいな!」
「カァ!……ありがとうです。ライト様! 嬉しいですカァ!……キュケェ?!」
オディちゃんもアリアみたいに僕に抱き付こうとしたけど。拒否させてもらったよ。だってバ美肉ちゃんの抱き付きは入らないからね。
「よし。それじゃあ、やる事も決まったし……近眼盗賊団のアジトを陥落させてもらおうか。行くよ! 2人共」
「はい……ライト様」「カァ!!カァ!!やりましょうカァ!!」
……カァ!カァ!うるさいね。敵さんに気付かれたらどうするんだい。全くもう。
◇
《近眼盗賊団アジト内部》
うんうん。アジトの真ん中でドンチャン騒ぎ。オディちゃんの声も聴こえてなかったみたいで安心したよ。
それで、盗賊さん達の回りには……奪った宝の山と檻の中に子供達と……変な蛞蝓みたいな化物みたいなのが、檻に蠢いているよ。何あれ?
「ギャハハハ!! ジギルのお頭~! 今日のエルフの里への襲撃上手くいきましたね。オマケに上玉なガキもあんなに捕獲できて。豊作豊作~!」
「あぁ、ミーティアス王国への戦争支援だが知らんが。それで自分達の里をおざなりにするのは感心しねえな。なあ? 隣国のエルフ、聖女候補、魔女、獣族の姫さん達よう!」
【ア……ア……ア…スケテ……】【ウエエ……アア……】【コロジデ……ジデェ……】【ヤダァ……コンナスガタァ……イヤダヨォ……】【アアアアアア!!】
「ハハハ! "呪い子の呪い"で気持ち悪い肉塊に代わり果ててなにも聴こえねえすよ。ジギルのお頭。酒どうぞっす」
「おお、気が利くな。バルタル……しかし、おぞましくて本当に気持ち悪い姿だな。コイツ等はモンスターの見世物にもできねえ。汚物みたいな姿だな。こんな姿で生きてるなんてすげえすげえ」
「全く。ジギルのお頭の言う通りっすね。こんな奴等、早くクラウディア家の屋敷に捨ててきやしょうぜ。明日が楽しみすね」
「おうよ! 近眼盗賊団もかなりデカイ組織になった。これを気にクラウディア領地を治める。クラウディアの屋敷を襲撃して、あの一族を殺す。その後はクラウディア領地各地で反乱を起こさせて、俺様が新たなクラウディア領地の支配者だ。ギャハハハ!!」
「流石、ジギルのお頭! 完璧な作せ……」
『洗脳眼』『切裂眼』
スパンッ!
「あん? どうした? バルタル。突然、寝やがって? これから捕まえた雌ガキ達と楽しくやるじゃなかったのか? ん? お……い?……あ?……何だ? 俺の身体に大量の擦り傷……があぁぁ?!」
侵入成功だね。子分キャラは『洗脳眼』で意識を支配した後にそのまま眠ってもらって。
近眼のジギルは生かした状態で僕の今の強さを確かめる為の実験台になってもらおうね。
「殺しはしないよ。君達の隠しアジトも教えて貰わないといけないからね」
「グギギギ!! 『回復の目』!!……ハァ……ハァ……黒い仮面のガキ?……最近、隣国中で噂の盗賊狩りか?」
片目の緑色。あれは近眼のジギルの固有能力『回復の目』かな? せっかく僕が全身擦り傷だらけにして身動きを取れなくしてあけだのに治しちゃうなんてね。
近眼のジギルの異名は伊達じゃないんだね。
「うんうん。そんな感じかな。それにしても珍しいね。『回復の目』の持ち主なんだね。僕が元々持っている『快復眼』よりも劣化中の劣化した目だけど。蒐集させてもらおうかな。コレクションとしてだけどね」
「テメェ!! 調子に乗るなよ。クソガキがあぁ!!」
近眼のジギルが僕に向かって大斧を振りかざして来たけど……
「隙だらけだね……『琥王』」
僕は、ただ突っ込んで来る近眼のジギルの右目部分に、執事長クーヘンさん直伝の『琥王』を喰らわせてあげたよ。
「がぎゃぁ?!……何だ? その力は? 俺の目の力が奪われてい……く?」
ドサッと倒れちゃったよ。大男のくせに見かけによらず弱いんだね。ビックリビックリ。
「……『回復の目』ね。能力統合すれば使い物になるかもしれないから。貰ってはおくよ。《収納眼》」
眼飾展示場に閉まってと。そういえば、一緒に侵入したアリアとオディちゃんの方はどうなっているかな?
「ティアス流剣術―――『白銀』」
「「「ギャアアァァ!!」」」
「……よくも未来ある子供達をこんな姿に……許さぬ。『黒羽』」
「「「ギイィヤアア!!」」」
うん。アリアもオディちゃんも凄い暴れ回っているよ。
流石、この世界の主要キャラ。産まれ持った高ステータスをかさに、モブ盗賊さん達を容赦なく攻撃してるね。モブ盗賊さん達はお気の毒だね。
【アアアア!! ゴロジデェエ!!】
「ん?……さっき遠目からみた蛞蝓みたいな肉塊? あぁ、これ……単に"呪い子の呪い"の末期状態にあるだけなんだ。高濃度の魔力でも浴び続けたのかい? 今、完璧に治してあげるよ」
『恢復眼』
生者だったら、どんな怪我や呪いでも治す『恢復眼』を呪い子の呪い状態の子達にかけてと。
「アウゥ……殺して……えぇぇ……あれ?! 私の身体が?!」
「モウイヤァァ……こんな醜い姿?……へ?」
「タズゲデェァ……ええーん!!」
「ジニダィジニダィ……いのよ。私は?……戻ってる」
僕がかけた『恢復眼』に反応して、蛞蝓みたいな形の子達の身体が光って人の形へと姿を変えていってるね。
「うんうん。皆、元に戻れたね。良かった良かっ……た?」
あれ? この小さい女の子達。どこか見覚えがある様でないような……あ~! この娘達。ゲーム《ゼロ・スフィア》で主人公の攻略ヒロイン達じゃん。
まだ小さい女の子だけど面影ありまくるもん。個性豊かな面影がさ。
……これは少し不味いね。たしか隣国で行方不明になった子達は皆、死亡扱いで捜索もされていないんだよね。
オディちゃんとの約束もあるし……何? 僕が未来で主人公が攻略する筈のヒロイン達を養わないといけないって事?
「あ、あの! 貴方が私達を救い元の身体に戻してくれたのですか?」
この赤髪の女の子は隣国のお姫様のカレンちゃんだね。
「感謝しますわ。救世主様。このご恩はこの身を一生捧げてお返し致します」
この青髪の優しい顔立ちの女の子は、聖国の聖女候補のフローラちゃんだね。
「……深く感謝するわ。故郷だと死人扱いだろうから。これからの人生は貴方に付いて行くわ」
この金髪エルフ耳の女の子はエアリスちゃんだね。
「お前。良い奴……私、行き場所ないから。私の事を飼って! ご主人」
茶髪猫耳の女の子は獣族のマテリちゃんだね。
……これは色々と不味いんじゃないかな? 皆、元の姿に戻って裸だし。こんな所をアリアにでも見られたりしたら。
「……ライト様」
「ひぃ! アリアこれは違……むぐぅ!」
「「「「な?!」」」」
「……ぷはぁ……私以外の女の子との浮気は絶対に許しません。ライト様……ライト様は私だけのご主人様なんですからね」
「ま、待って! アリア~! 皆、見て……むぐぅ!」
「………ぷはぁ………大好きです。私のライト様」
こうして、近眼盗賊団を壊滅させた僕達は、他の隠しアジトも襲撃したりして大量の金銀財宝と捕まっていた子供達を救い出して保護したんだ。
そんな事をアリアとオディちゃんとかと、10年間もやってたから、ステータスも2歳の頃よりもメチャクチャ上がったよね。
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ライト・グラウディア 12歳
種族・人間
レベル998
筋力610
魔力100000000
知力501
体力2022
運 999
スキル 漏らし隠蔽
称号 漏らしの鉄人
固有能力『魔眼輪廻』
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まだまだ育ち盛りだっていうのに、僕っていったいどこまで強くなれるんだろうね? 末恐ろしいや。




