第21話 準備の終わりと黒い影
結構持ってきたお金が一気に吹き飛んだね。
フリック・ラテンバース"の洋服店で、制服以外にも色々と買った僕達は次に魔道具の雑貨屋へと来ていたよ。
ラグナ魔法学園で、使う3人分の魔本の教科書や魔道具を買わないといけないとなると。少し財布の中身が心もとないかな。
「アリア。エアリスちゃん。数秒ここに居てね」
『収納眼』
「はむ!……ナンレショウカ? ライホシャマ」
「もむ!……ドコカニ行かれるですかぁ?」
◇
《眼飾展示場《アイズ・サンクチュリア 》》
ここは僕の魔法倉庫の眼の一部。
眼飾展示場《アイズ・サンクチュリア 》って言う場所なんだ。ここには僕と使い魔のオディちゃんしか入れない特別な場所なんだよ。
「カァ? ライト様。どうしたんですカァ? こんな場所に来るなんて珍しいですね。カァ」
「うん。少しお金が足りなくなってね。足りない分を取りに来ちゃった」
「成る程です。カァ」
この子はオディちゃんの一部しにて、分身のディーンちゃん。ここの管理を任せているんだ。
「カァ。さっき送られてきた。魔道具は一番厳重なシークレットアイズの金庫に閉まっておきましたカァ」
「へ? あれってそんなに凄いやつなのかい? あのお爺ちゃん。ただでくれたんだけどさ」
「なら、そのお爺ちゃんは老眼なんですね。カァ」
「老眼って、相変わらず。毒舌キャラだね。ディーンちゃん」
「ご主人様に似ただけです。カァ……それよりもその老眼はあの鞄の中身はいったいどこで手に……」
「おっと! こんな呑気に話してる場合じゃないんだった。あの2人だけにしていたら、また喧嘩し始めるよ。ディーンちゃん。ノーマルアイズの金庫に案内してくれるかい」
「カァ……ご主人様は相変わらず。忙しい人ですね。カァ……こちらにどうぞですカァ」
ディーンちゃんに案内されて向かうのは、僕が10年前……ううん。産まれた時も含めると12年間。
"夜な夜な世直し"で、悪事を働く悪い人達やモンスターを倒して得た大量の財宝がある金庫。
「ご主人様。解除の眼をお願いしますカァ」
「うん。了解。『施錠眼』」
ガチャ……!
扉を開けた先は金銀財宝。《ゼロ・スフィア》の命運を握るような凄い魔道具が保管されているんだ。
「うおぉ! 久しぶりに金庫の中に入ったけど。壮観だね。ていうか。なんか前よりもお宝増えてない?」
「カァ……最近、ご主人様が昔から従えている使い魔さん達とかが世界中から、かき集めて回ってますからね。カァ」
「へ〜! あの子達。故郷に帰った後も僕との契約解いてないと思ったら、魔力パスはそのままにしてるんだね。自由に暮らせばいいのにさ」
「ご主人様との魔力パスが心地良いのでしょう。カァ……私の本体さんも離れようとしていませんしね。カァ」
「そうなんだ。まぁ、オディちゃんを使い魔として止めさせる気なんてないけどね。もうずっと一緒に居るし。オディちゃんは大切なパートナーだよ……これだけあれば。足りるかな」
僕は積み上げられた金貨の中から、お財布に入れられるだけ、金貨を詰めていった。
ちなみに《ゼロ・スフィア》のお金の単位名は、僕の前世にいた国と一緒で"エン"って言うんだ。それでお金の種類はこんな感じかな。
1万円=白金貨1枚
5000円=金貨1枚
1000円=銀貨1枚
500円=銅貨1枚
100円=赤銅貨1枚
50円=青銅貨1枚
10円=黄銅貨1枚
5円=緑銅貨1枚
1円=黒銅貨1枚
なんでか知らないけど。お金の区分は《ゼロ・スフィア》を作った会社が日本だったせいなのか。日本円を精巧に模範してるんだ。
ゲームで拘る場所間違ってるよね?
「カァ……ご主人様。本体さんもそれを聞いたら大喜びですカァ」
そして、ディーンちゃんは何故か涙を流しながら、カァカァ踊っていたよ。流石、オディちゃんの心の分身。変態行動が多いね。
◇
《リンゴリッツ雑貨店》
ズズズっと元の場所に到着。
まぁ、こっちだと数秒位しか時間は経過してないから。
待ってた2人には僕が一瞬消えて、直ぐに現れた様にしか見えないんだけどね。
「ただいま……あれ? 2人共。変な人達に絡まれてるし。何してんだろう。アリアとエアリスちゃん達」
僕は、皆の様子を観察する事にしたよ。
「おい! 銀髪メイドよ。ライト殿はどこに居られる? 我が主。ユリウス様がご所望なのだ」
「リンク。そんな一方的な聞き方止めて。相手は女の子なんだよ!」
「なんですか? 貴方達は……ライト様は今、不在です。(何か怪しい気配を見せたら。直ぐに粛清します)」
「オーホホホ! やっと見つけましたよ。ドスケベエルフさん。貴女、私の専属メイドになりなさい」
「意味が分かりません。私はライト様のアルバイトメイドですから無理です!」
「そんなの関係ありませんわ。オーホホホ!」
……あの濃いキャラ達は。たしか補欠入手試験に居た。合格者さん達じゃん。
なんでこんな所にいるのさ。皆に注目されてるし。
そろそろ止めに入らないと。アリアとエアリスちゃんが暴走し始めちゃうね。
「ちょっと! ちょっと! 僕のメイドさん達にちょっかいをかけないでくれないかい? 怯えてんじゃないか」
「怯えているだと? この殺気だらけの銀髪メイドのどこが怯えて……」
「あんまり騒がしくしないでくれるかい? 君、うるさいよ」
「つっ!………す、済まん」
ユリウス君の執事みたいな子に一瞬で近付いて、カッコ良く脅してあげたら怯えちゃったよ。
「ライト様。怖かったですわ!」
「ライト様〜! 変な女の子に絡まれてました。助けて下さい〜!」
うんうん。そして、アリアとエアリスちゃんは僕に抱き付かないでね。遠巻きでお客さんが見てるからね。
「……君は! ライト君」
「……あら? 貴方はもしや?」
僕の存在に気づいた。マブダチのユリウス君と……前世でやっていたゲーム版で悪役タッグを組んでいたヨワールちゃんが僕の方へとやって来たね。
「わぁ〜! ライト君。こんにちは。また会えて嬉しいよ〜!」
「ユリウス君。数日振り〜! どうやら完全に元気になったみたいだね。良かった良かった」
「うん! これも全部ライト君のお陰だよ。ありがとう〜!」
うおぉぉ! 凄い光属性な性格。眩しいよ。腹黒の僕とは全然違うや。
「オーホホホ! 始めまして、クラウディア家のご子息様。ヨワール・パープルアイですの。以後、お見知りおきあそばせ」
「あ! うん。ライト・クラウディアだよ。宜しくね。ヨワールちゃん」
「……あら? 貴方、なかなか良いですわね」
「? なにがかな?」
「いえ、クラウディア家のご子息は貴族の社交界にも顔を出さない変わり者と聴いておりましたけど……色々と違う様ですわね。勝手な偏見を持ってごめんなさい」
あれ? ゲームと違って、だいぶ印象が違うね。リアルなヨワールちゃんって、こんなにちゃんと謝れる娘なんだね。
「あ、うん。こちらにこそ。なんかごめん」
「いえいえ。あのドスケベエルフさんが貴方のメイドさんだと。もう少し早く気づくべきでしたわ……お買い物の途中ですの?」
「う、うん。ラグナ魔法学園用の道具を揃えにね」
「そうでしたか……それでは、私達は邪魔ですわね。ほら! ユリウスとリンクなんちゃらさん。帰りますわよ。オーホホホ!」
ヨワールちゃんはユリウス君と執事っぽい子の腕を掴むと歩き始めた。
「へ? まだ。僕ライト君に、ちゃんと」お礼を言えてないんだけど!」
「離して下され。パープルアイ嬢。ユリウス様のご用心がまだ終わっておりませんので!」
「いいから。ここから急いで離れるのよ。今の私達では足でまといになるわよ」
「「足手まとい?」」
「そうですわ! それではクラウディア君とその専属メイドさん。それと……ドスケベエルフさん。また入学式でお会いしましょう。オーホホホ!」
「だ、たれがドスケベエルフですか。私はライト様のアルバイトメイドです!!」
なんて、やり取りしながらパープルちゃん達はどっかに行っちゃったよ。
「……エアリスちゃん。ドスケベエルフなの?」
「ライト様までなにを言っているですか! 違います!」
「……脳内のエアリスちゃんのプロフィールを更新しました。ドスケベエルフと……メモメモ」
「更新もメモもしなくていいですから! 私をいじるのは止めなさい! アリアさん!!」
またキャットファイトを始めたよこの2人。
「しかし。あのヨワールちゃん。なんか意味深いこと言ってたけど。何だったのかな?」
その後、僕達はリンゴリッツ雑貨店で、日用品とラグナ魔法学園で使う魔道具なんかを買え揃え始めたんだ。
《リンゴリッツ雑貨店 地下》
「一瞬。気配がなくなったと思い来てみれば。直ぐに戻って来るとはな。あの小娘達を人質に取り。次に、クラウディア公爵家の子息を拉致する算段だったが。パープルアイ家の小娘め。騒ぎ立ておって! 近付けなかったぞ」
「落ち着け。ディオル、時期に私達に有利な夜へと至る。その時に狩ればいいさ。今はまだ日中、騒ぎ立てずに気を待てば良い。クラウディア家の子供を捕えられば、莫大な金と"眼"が手に入るかもしれないのだからな。金さえあればまた王都で暗躍も可能となる」
「何を偉そうに言ってやがるんだ?……元はと言えば、お前がファースト共とあの店を黒銀団とか言う意味の分からないガキ共に奪われたせいだろう! 何故、ファーストごときに店の権利書を渡してたん…ごがぁ?!」
「何を口答えしている。ディオル……貴様もこのミーティアス王国の何処かにあるとされる、"赤蛇の神眼"の情報1つ探せていないではないか? その責任はどう取るつもりなのだ?」
「があぁぁ!! ヤメロオォ!! 血が抜け……」
「いいか。黒銀団が本格的に、眼の争奪戦に動き出したとという事は、何れはルシフェル教の奴等も動き始める……『十二星座』『魔法学園協会』これ等の組織も動き始めれば世界各国も"神の眼"の価値に気づき始め、奪い合いになる」
「ばがったぁ……ゲホゲホ。俺が悪かった……ハァ……ハァ……」
「分かれば良い……その中の何れでも良い。先ずはどの組織よりも『十四色の神眼球』の何れかを先に1つ手に入れた者がリードする――――《ゼロ・スフィア》の……新たな時代の神の座をな」




