第15話 魔法学園の勇者様
《ラグナ魔法学園―――裏入り口》
「カァ……ご主人様。またまた変な人に絡まれました。カァ〜!」
今日は、黒髪美少女メイド姿で馬車を引いていたオディちゃんが、困った顔で馬車の中に居る僕に話しかけてきたよ。
うん! オディちゃんと一緒に旅とかすると変な人達に絡まれる事を学習した僕は、今後はオディちゃんに馬車を引かせない事に決めたね。
「おっ! おほ〜! なんだ。馬車引きのメイドよ。貴様、なかなか可愛いではないか」
「カァ……なんですカァ。あの気持ち悪い笑みは? ご主人様。あの方がこちらにやって来ます」
……オディちゃんから気持ち悪いとか言われるとか、今、外で僕達を通せんぼしてる人はどんだけ気持ち悪い人なんだい。
本当はそのまま馬車を突撃させて、通せんぼしてくる人を退いて去ろうと思ってたけど。怖い物見たさで会ってみたくなったよ。
「オディちゃんが困っている様だから、通せんぼしている人の顔を見に行ってみようか。アリア」
「はい。ライト様……ライト様と私の邪魔をする方に天誅を下しますわ」
ウチのアリアちゃん。太ももにニーソックスに仕込んでいるクナイを手に持って、通せんぼしている人を殺る気満々なんだけど。困った娘なんですけど。
「うんうん。下さい下さいよ〜! 最近のアリアは本当に物騒だね。クナイ没収ね〜!」
「ふぁ……ライトしゃま。何で私の頭を撫で撫でしてくだしゃるんですか〜!」
とういうわけで、荒ぶるアリアは頭を撫でてあげると大人しくなるんだ。クナイも取り上げたから、これで安心と。
「それじゃあ、外に出ようか〜!」
ガチャっとな……
「おい。黒髪のメイドよ。俺様の専属のメイドとなれ。今は雇う程の金はないが、俺はいずれ勇者の称号を得る男。投資だと思い俺に仕えろ」
「カァ……そんなメチャクチャな理論あり得ません。カァ〜! この人お馬鹿さんですカァ」
「なんだと貴様! 俺を誰だと思っている? 俺はラグナ魔法学園の今年度主席合格者なんだぞ。今日はたまたま暇だったんでな。補欠受験の試験でも見学しに来いと、ここの教師に誘われてきたんだ」
「カァ〜! そんなの知りませんし。興味もありませんカァ。どうでも良いですカァラ」
なんだ。オディちゃんにまだ絡んでるのかい? 通せんぼさんは……
「ん? あの姿は……」
「どうされましたか? ライト様」
黄金の金髪に三枚目の平均的な顔。背は僕より結構低くて偉そうな態度。間違いないね。《ゼロ・スフィア》の男の子主人公。ダーク・スターライナー君じゃないか。
なんで、そんな子がこんな誰も来なそうな魔法学園の裏門に居るんだい?
「ん?……お! おお! こっちもまた……」
あ! 僕達に気づいたみたいだね。近付いて来るみたいだけど。挨拶でもしてくれるのかな?
「グフフ……おい! そこの銀髪美少女のメイド。気に入ったぞ。俺様専属のメイドに命じてやる。光栄に思えよ! 俺はいずれは勇者の称号を得る選ばれた存在なんだからな」
「……いえ。遠慮させて頂きます。私にはライト様という将来を近いあった大切なお方がいらっしゃいますので。ごめんなさい」
いや、いつ将来を近いあったんだい。
「な、なんだと? ライト様だと? それはどこのどいつの事だ?」
「こちらのカッコ良くて素敵なお方ですわ。(ポッ///)」
なにがポッだい。なにが……でもこれは、少しめんどくさい事になったね。
学園イベントが始まる前に、この世界の男主人公君ともエンカウントしちゃうんなんてさ。
「素敵なお方だぁ?! どれ! 顔を見てやる……何だ? お前も女の子じゃないか」
「……はい?」
「ブフゥ!……ライト様。女の子と勘違いされてますカァ……くわぁぁ?! 身体が痺れますかカァ」
僕を笑った罪だよ。なにが女の子だい。僕はお母様似の色男だよ。お馬鹿さん。
「いや、僕は男の子だけどね。それと黒髪のこの娘も銀髪の女の娘も僕の専属メイドさん達なんで、勝手に手を出さないでくれかい? 怯えてるからね」
「なんだと? お前は男の子で、極東美少女と銀髪美少女の飼い主だと?」
……言い方が卑猥だよ。男主人公君。
なんかこの子。《ゼロ・スフィア》のゲームとだいぶキャラクターが違うね。
なんでこんなに傲慢なキャラクターになっちゃってるの?
「君ねえ。初対面の相手に対して、飼い主は失礼なんじゃないかな? 2人とも僕の専属メイドとして大切な存在なんだからね」
「そんな。ライト様……早く私と結婚したいだなんて、照れてしまいますわ」
「カァ〜? いつもオディに厳しいご主人様からそんな言葉が聞けるなんて、夢の様ですカァ」
……アリアには結婚したいだなんて言ってないし。いつもオディちゃんは好きに甘やかしているつもりなんだけど?
「ぐおお!! こんな美少女達にちやほやされやがって! 不公平だ。馬鹿野郎!! 名前を、名前を名乗れ貴様!」
そして、なんで男勇者君はキレてるのさ。意味が分からないよ。
「えっと……ライト・クラウディアです。よろしく」
「ラ、ライト・クラウディアだと? あの悪評判で有名な。悪童か?」
「はい? ライト様が悪童?……この方を切っていいですか? ライト様」
「ドウドウ。駄目絶対駄目……どんな有名なんだい。僕がなにか悪い事でもしたのかい?」
「貴様の悪い噂など有名だ。常に銀髪美少女を侍らせているとか。常に黒髪着物美少女を侍らせて喜んでいるとか。貴族の社交会にも出席せず、引きこもりで勉強と修行に明け暮れているとな」
成る程。銀髪美少女はアリアで黒髪着物美少女はオディちゃんだね。
アリアは僕の専属メイドだからいつも一緒に居るのは当たりなんだけどね。オディちゃんも僕の使い魔で一緒に居るだけだし。
それと、未来で死ぬ運命にあるかもしれないのに社交会に出ている暇なんてあるかい。それなら強くなって死なない為の修行の時間に当てるよね?
お父様達も別に出たくないなら出なくて言いとか言ってたから出なかったんだけど。
たしか男勇者の出身地は王都ミーティアス。王都とクラウディア領地じゃあ、かなりの距離がある。
クラウディア公爵家は、今の王家ともギスギスしてるから悪い噂を立てられてても不思議ではないね。
「うんうん。そうだね。それじゃあ、自己紹介も終わった事だし。僕達はこの辺で失礼するよ。魔法学園の補欠入学試験を受けないといけないからね」
「ん? 補欠入学試験だと? なんだ。お前、あんな簡単な入学試験もパスできなかったのか?」
なんで凄く嬉しそうに笑っているのさ。気持ち悪いね。
いやいや。パスもなにも、受ける事さえしてないんだけどね。この子と話してると疲れるね。無視してさっさと試験会場に向かおうっと。
「まぁ、そんな感じかな。それじゃあ、悪いんだけどそこを通してくれるかな? 試験会場に向かうからさ」
「むふん! ならば俺様にお前の専属メイド達を少し貸せ」
ニタァっと男勇者君はキモい笑みを浮かべているよ。人って性格が顔に出るって本当なんだね。
「はい? そんなの無理に決まっているでしょう」
「絶対に嫌ですか」
「いや、ですがカァ」
アリアとオディちゃんは速攻でそう告げたね。初対面の相手にどれだけ嫌われるんだいこの子は。
「貴様! 俺はふざけるな! 俺様は近い将来。勇者の称号を得る男だぞ」
さっき勇者の称号を得るとか連呼してるけど。たしか勇者の称号ってもう……
『鑑定眼』
僕は朝食の時に『鑑定眼』で確認したアリアのステータスをもう一度開いて見たよ。
◇
アリア・ミーティアス
12歳
種族・人間
レベル802
筋力4001
魔力10000
知力423
体力5022
運 999
スキル 家事全般 メイドのお仕事 完璧ご奉仕 ティアス流免許皆伝
称号 剣豪 専属メイド ご主人様絶対主義 ライト・クラウディアの花嫁
固有能力『万能剣』『光の勇者』『お世話係』『究極メイド』
◇
………アリアのステータス欄に既に『光の勇者』って固有能力が付いているんだよね。
たしか勇者の資格がある子供が本物の勇者の固有能力を得るには、産まれて来てから今までの"善行値"によって決まっていたはず。
それで、アリアは僕と一緒に小さい頃からずっと"夜な夜な世直し"で人助けや盗賊狩りをしてたから善行値が上昇し続けていたんだね。
まぁ、アリアが『光の勇者』の固有能力を持っている事は伏せといておこうね。この世界のキツイメインシナリオに、僕の可愛いアリアを巻き込みたくないしさ。
アリアが私が『光の勇者』です。なんて、回りに風潮して広めなくても。自称未来の勇者様がこの世界の……《ゼロ・スフィア》を悪の脅威から守ってくれるんだからさ。
……ついでに男勇者君のステータスも確認しておこうかな。
◆
ダーク・スターライナー
12歳
種族・人間
レベル1
筋力10
魔力10
知力10
体力10
運 1
スキル なし
称号 ホラ吹きの初心者 パチもん勇者(笑)
固有能力なし
◆
「弱っ! ていうか、初期ステータスのまんまで今まで生きて来たの?」
いや、よくよく考えれば。男勇者君ことダーク・スターライナーって、下級貴族の王都育ちだから危険な外の世界には行った事がなかったんだよね。
「なんだと? 貴族!! 俺が弱いだと? 馬鹿にしているのか?」
「ん? あっ! いやいや。違うよ。違う……ダーク君にヨワ……ヨワールって可愛い女の子を今度紹介してあげるから。今回の補欠試験会場に向かわせてほしいなってね」
「な、何? 俺様に可愛い女の子を紹介してくれるのか? ほほ〜う! なんだお前良い奴だったのか。俺はてっきり美少女を侍らせてる屑野郎と勘違いしていたぜ。済まん済まん」
「はい? 私のライト様が屑野郎。切って良いです? この方を切って良いですか? ライト様」
「カァ〜! やめて下さいカァ。アリア様。やっと話が終わりそうなんですカァラ〜!」
アリアが鬼の形相でペン型の仕込み刀から短剣を抜こうとしているよ。
「ふむう! 良かろう。そのヨワールちゃんとやらの紹介楽しみにしておいてやる。落ちこぼれ達が集まる《《補欠入学試験》》頑張って受かれよ。俺の親友候補筆頭のライト・クラウディア! 去らばだ! ガハハハ!」
自称勇者の男主人公ことダーク・スターライナーは大笑いしながら、魔法学園内に入って行ったよ。
「誰が親友だい。誰が……第一ヨワールなんて女の子架空の女の子なんだけどね。だから紹介しようがないよ。ダーク君。ガハハハ!」
僕は自称親友のダーク君の笑い声を真似しながら、ラグナ魔法学園の補欠試験会場に向かったんだ。
◇
《ラグナ魔法学園 補欠入学試験》
「オホホホ!! 補欠番号1番。ヨワール・パープルアイですわ。以後、お見知りおきを! オホホホ!」
「ヨワール……パープルアイ?!……そんな……うそおぉ!!!」
居たよ。忘れてた、ヨワールちゃん。忘れてた。ゲーム《ゼロ・スフィア》で僕とタッグを組んで勇者の邪魔していた悪役令嬢役の女の子がさ。




