第13話 隻眼の魔法使い
ミーティアス王都の夜の建物を駆け抜ける人物が3人――――
《王都ミーティアス 6番街》
最初に放った魔弾は軽く躱されたよ。今は『隻眼の魔法使い』さんと追い駆けっこ中。
いや〜! まさか王都到着初日で『隻眼の魔法使い』さんと追い駆けっこになるなんてね。
「チッ! 付いて来るな――――『幻影廻廊』」
なんだいあれは? 不審者さんの掌から白い煙が出始めてる。
「………目の前が真白になっていきます。黒仮面様……眠いで……す……ライ……様……」
それを嗅いだアリアが眠り始めた?
「それ以上吸っちゃ駄目だよ。銀輝花嫁! それは毒だからね」
『恢復眼』
僕は眠りかけているアリアの背中に手で触れると、なんの躊躇いもなくアリアの為に『恢復眼』を発動した。
「チッ!………あれが最近、世界各国でルシフェル教会の邪魔をしていると噂の黒銀団か。目障りな」
「……えっと?……黒仮面様。私はいったい?」
「フゥー、眠る前に起こせて良かったよ。銀輝花嫁。1度でもあの白い煙を吸って眠ると"眠り人"になってずっと眠りぱなしになるからね」
「私……眠りそうになっていましたか? すみません。ライ…黒仮面様」
「うん。《《強制的》》に眠らされそうになってたよ。銀輝花嫁が無事で良かったよ」
「黒仮面様。そんな! 永久に私を愛するだなんて……照れてしまいますわ」
「そんな事は一言も言ってないけどね。それよりもさっさと、あの不審者を追い詰めちゃうか……僕の大切な専属メイドを"眠り人"にしようとした。お馬鹿な『隻眼の魔法使い』さんにさ。『紅蓮眼弾』」
「何だ? その武器は? そんな武器がこの世界に存在するのか?」
赤色の弾丸が『隻眼の魔法使い』に向けて放つ。
この《ゼロ・スフィア》には、銃と言う武器や造る為の技術もない。
だけど僕には生前の知識があって、オープンワールドなゲームの広野の世界で戦っていて、素人だけど銃の種類もうろ覚えだけど知っている。
だから作ったんだよね。前世の知識と『魔眼輪廻』の一部を使って創造しながら作ったんだ。僕オリジナルの魔法銃をね。
そして、剣と魔法の世界に住む人達は銃に対する知識も知らないし。防御手段も持っていないんだ。
だからさ。初見で銃弾なんか放たれたら戸惑うに決まってるよね。
「チッ!……左肩に喰らってしまった」
とか考えていたら『隻眼の魔法使い』さんの左肩に僕が放った銃弾が当たったみたいだね。
「そうなんだ。じゃ……『燃えよ《イグナイト》』」
「な? 左肩が体内から燃え……クソッ!」
別に僕は剣術、槍術、武術、魔法なんでも普通の人よりも上手く使えるけどさ。
剣術や武術に関しては、いつも一緒に居る方相方のアリアが、超超超一流の剣士でね。
隣で剣術や武術なんて使ってたら、比べられていつ敵に僕が馬鹿にされるからさ。僕は戦闘中は剣術や武術をあまり活用しなくてなったんだよね。
「よくも。私を眠らせたようとしましたね。ティアス流剣術『天空』」
「チッ!……凄まじい殺気と……剣技……ここは一端退散させてもらう」
「逃がさないよ」
『切裂眼』
「馬鹿か? 私は隻眼の異名を持つ魔法使い。遠距離攻撃が可能な魔法使いを警戒してないわけなかろう。『蜃気楼』」
「な? 黒仮面様!」
僕周辺に白い煙を? あの『隻眼の魔法使い』魔法使い同士の戦いに慣れているのかい?……なんてね。別に慌てる程の攻撃でもないや。
『暴風眼』
「弱々攻撃だね。その程度の力だと。まだ"赤蛇の神眼"は見つけられてない感じかな? 『隻眼の魔法使い』さん」
「チッ!……子供だからと油断していたようだな。『排気楼』」
「ティアス流剣術『隼』……避けられてしまいました」
音速を軽く越えるアリアの攻撃を避けた?……いや、避けたというよりも霞めたと言った方が正しいのかな?
さっきまでアリアの場所に居たと思ってたら、もう僕の背後に居るしさ。
これは『隻眼の魔法使い』さんの固有能力かなにかなのかな?
「……左肩は大丈夫かい? 『隻眼の魔法使い』さん」
「こんな傷は血を吸えば治る。それよりも私の質問に幾つか応えろ。黒仮面」
……なんかイライラしてる感じだね。僕達。彼の癇に障る様な事をしたかな?
「何かな? 別に良いけど。僕が応えられる範囲内でなら良いよ」
「チッ!その仮面の奥にある色彩豊かな眼はどこで獲た?」
「内緒だね」
「……その可笑しな造形の武器は何だ? どこで手に入れた」
「それも内緒だね」
「……あの強力な剣士は誰だ。何故、あれ程の大剣豪が裏社会で暗躍している?」
「それも内緒だね」
「私の部下であるファースト達はどこに向かわせた」
「内緒だってば」
「結局。なにも応える気はないという事か。だが最後に質問しよう。何故、このような時期の王都にのこのこやって来た?」
「あ! それには応えられるよ……"赤蛇の神眼"だよ。やっぱりさ、この世界でプレイするなら集めたいと思うじゃん。どんな夢を叶えられる"神の眼"なんてあったらさ。『火炎眼』」
「最後の質問に応えてくれただけでも。聞く価値があった。形が意味が違えど神の眼の情報を知る者に会えるとはな。《《お前》》だけは捕獲させてもらおうか。『濃霧楼』」
高熱を帯びた火炎と湿気を大量に含んだ濃霧が、夜空でぶつかり合って魔法爆破を起こしてるよ。
それにしても、王都ミーティアスの中心地でこれだけドンパチ戦っているのに誰も来ないとはね。
『隻眼の魔法使い』さんが結界でも張ってるのかな? 王政や魔法学園に自分が王都に潜伏しているって事をさ。
「チッ!……右目の力を使っていないでこれだけの力を操れるのか?」
「当然。それりゃあ伊達に産まれた時点から、魔力操作や魔力増強の修行しているんだからね。『紅蓮眼弾』」
「また体内を燃やす攻撃か……厄介な。『雲隠霊』」
「……『隻眼の魔法使い』の身体が霊体化した?」
「黒仮面様。私がターゲットに近付きて、細切れにしてきます」
「いや、ちょっと待った。銀輝花嫁」
「はい?」
「多分、罠だね。『隻眼の魔法使い』さんは。僕よりも銀輝花嫁を脅威と感じているみたいだね」
さっきから奇抜な攻撃ばかりしてくるね。『隻眼の魔法使い』はさ。こんな攻撃のゲームの時はしてこなかった筈なんだけどね。
「チッ! やっと左肩の傷も治り始めたか(……姿を変えてはいるが。どちらも少年少女なのは雰囲気で分かる……だが、先程から受けている攻撃はどれもこれも一撃必殺の力を内包したデタラメな力だ。ファーストとも連絡が取れなければ、あの店の経営も難しくなるか)」
「ファーストさんなら、僕が心のケアーをしてあげてから。僕のお手伝いさんになってもらうから安心してよ。『隻眼の魔法使い』さん」
「お前……いつの間に私の背後を取っていた?」
「人って考え事に集中し過ぎると回りが見えなくなっちゃうものだよね? 『隻眼の魔法使い』しんが人かどうかは置いておいてさ」
「……貴様。私の正体に気づいているのか? だから、先程から手加減しながら戦っているのか?」
「さぁ? 別に僕は『隻眼の魔法使い』さんの正体には興味はないしね。本気だって一瞬だけは出してあげているよ。優しいからね」
「チッ!……その嘗めた態度。まるでクラウディア家の者のようだな。辺境で自由に生きるのは良いが王都での評判は最悪の……があぁ?! な、何をする? 私の左肩を?」
「ん〜? そうだね。僕の故きょ……クラウディア領地の人達には昔良くしてもらったからね。それを悪く言う君は許せなくなっちゃったかな?」
「クソッ!……子供くせに何故、これ程までの力を使える……『水冷楼』」
あれ? 拘束していた筈の『隻眼の魔法使い』さんの身体が液体化して逃げていく?
「ハァ……ハァ……ハァ……お前達の様な奴等が動き出す前に動き出しておいて正解だったな。14の神眼を奪い合う強者達の戦いは始まったという事だ」
……僕やアリアが傷を負わせた筈の部位が治ってる? やっぱり。この『隻眼の魔法使い』はゲームの頃の『隻眼の魔法使い』とは少し身体の特性が違う?
「それにしてはフライングし過ぎだと思うけどね。あんな立派なレストランや部下まで居るなんて……まぁ、あの場所は僕が貰うけどさ。だからさ。赤眼のある場所も教えてほしいんだけど。『空絶眼』」
『空絶眼』
「これは? 意識外からの攻撃か?……チッ!……左腕がねじ曲げられる……『切付けの目』」
何だろう? スパンッ!と自分の左手を切断した?
「チッ!……これで致命傷は避けられたから……今は逃げ延びる事が先決。『空の目』」
あの不審者、今度は場所そのものを移動したのかい?……僕がいつも使う『異空眼』よりもよっぽど制度は低いけど。
「……気配が消えたね。」
「はい……逃げられてしまいましたわ。ライト様」
『隻眼の魔法使い』を捕獲する為にアリアには、近くに隠れてもらってたけど。逃げられちゃったね。
「あの力は本物だ……あの『隻眼の魔法使い』さんは本物で間違いないみたいだね。アリア」
「はい?」
「"隻眼の魔法使い"ブラッド……僕が探していた14つの神眼の1つ。"赤蛇の神眼"の本物の在りかを知っているね。あの吸血鬼はさ」
手がかりは『近眼の魔法使い』自ら切断した左腕。
これから僕達が見つけるべき人物は、左手を失って日の光を浴びれない人物だね。




