六 封筒
姫神くんが帰ってくると手には封筒があった。
「それはなんだい」
「郵便受けに入っていたよ。気づかなかったかい?」
「うん。まったく」
「足音一つありませんでしたよ」
彼からその封筒を受け取ると、封を切る。
中には便箋と、ライターに似たの機械のようなものが二つ。
そして、ライターのような物を収めるためのケースと思われるもの。ベルトに装着することができるらしい。
「なんだろうね、これは……」
「爆弾とか?」
「スイッチも付いてるからあり得るね」
差出人の名前は書いていない。
便箋には「君と彼に霊能異理を授ける。どう使うかは君たち次第だ」とめちゃくちゃでかい文字で書いてあった。
俺を視力の弱い奴だと思っている奴の犯行だという事が分かる。
まぁ、糸目・狐目と揶揄されながら生きてきた者の宿命だろう。
便箋の裏には「霊能異理」とやらの使い方が書かれている。
スイッチを押しながら「霊能異理」と唱えると、身体に秘められた特別なエネルギーが人間を逸脱した「この世とは異なる理の中で存在する能力」が現れる──らしい。
何を言っているんだ?
使い方を教えると、姫神くんはこういう事が好きらしく、目を輝かせて「やってみよう」と言った。楽しそうでこちらも嬉しい。
「爆弾だったらどうするんですか! 開けた場所でやりますよ!」
「開けた場所?」
俺たちはスキー場にやってきていた。
この時期はなんだかまだ準備の一つもしていないらしい。スキー場には詳しくないが、もう十月なのに。
「じゃあやってみよう。まずは物部くん。君からだ」
「君からでいいよ。いち早くやってみたいんだろう」
「いいのかい? やったね」
かわいい。
「霊能異理」
姫神くんがそう唱えると、姫神くんは赤い鎧包まれた戦士になった。頭も赤く、そして青いバイザーに黄色の複眼。彼はそれを見て「すごいや」と興奮気味。かっこいい。かわいい。
「次は君だ。物部くん!」
「そうだね。俺もやろう。霊能異理」
俺が唱えると、俺の身体は、今度は黒地に銀色のラインのはいった骸骨のような頭部の怪人になった。
「かっこいいね。ガイコツは男の子みんな好きだ」
「こんな姿をそういうのは君だけだろうね」
俺は黒い複眼を撫でた。どうやら目を覆っている硬質の膜のようなもので、目ではないらしい。
「あれ、そのライターもどきなんか変わってますよ」
「え? あっ、ほんとうだ」
見てみると、側面に何か文字がある。俺にはそれの読み方を即座に理解して、思わず口に出した。
「〈代緑〉」
「〈弑儺〉」
逆側の側面には俺の生年月日もある。
昭和五十三年八月十日。
おそらく姫神くんのものにも同じのがあるのだろう。
昭和五十三年五月十二日。
「変身したんだからこのくらいあるでしょうと思うが」
「変身しちゃったからね。怖くも何ともない。それにしても、物部くんかっこいいよ。君は背丈もあるから、より筋肉が映えるね」
どうやら変身したので筋肉が増強されたらしい。
「君も、かっこいいよ」