第七話
〜新学期〜
何度か重ねた勉強会と演劇部の大会の練習をしながら
高校一年の夏休みは終わった。私は水族館デートの
事が今でも夢か現実か分からない程で
学校に着いてからドロシーやルーエに
何度も確認している。
「大丈夫?エルシー?」
「大丈夫じゃないかも。夢みたい」
「夢じゃないぞエルシー。がっつり現実だ」
ルーエがそう励まし私は顔を手で覆った。
「付き合うって何すれば良いんだろう」
そう私が言うとルーエが
「手を繋ぐとかハグとかキスとか」
と語り出した。
私とミスティがそんなことを!?と
私はパニックになった。朝の登校はいつもと
変わらなかったけどいつか手を繋ぐ事もあるかも
しれない。
〜休み時間〜
ドロシーは幼い頃からモテるが返し方が上手く
スルーしている。最近は「ユーマが好きだから」と
返しているらしい。
相変わらずユーマの事を推しているらしい。
ライブにも翼とこっそり行っているらしい。
そんな中、私にも声をかけてくる変わり者が
居た。ただ、中等部の子だった。
「エルシー先輩、俺と付き合って下さい」
顔も名前も分からなかったその子は初対面で
いきなり告白してきた。これは何か罰ゲームでも
やらされてるのかな?と思った私だが一緒に
廊下を歩いていたドロシーがすかさず返した。
「エルシーには彼氏が居るから
あんたとは付き合えない」
そう言うとその男子生徒は「相手誰っすか?」
「対決させて下さい」と言い出した。
「そもそも名乗りなさいよね。名前は?」
とドロシーが問いただすとその子は
「リョウ・ライスターです。中等部2年です」と
答えた。
「分かった。ドロシー達もうすぐ授業だから
そろそろ行くね」
そう言い残し私の手を引っ張るドロシーに私は
小声で「え?どうするの?あれでいいの?」と
聞いた。するとドロシーは「とりあえずミスティに
報告しなきゃいけない問題よ」と言い帰りの時間に
話す事となった。
〜放課後〜
「なるほど、そんな事があったのか」
「そうなんです。申し訳ありません。」
「なんでエルシーが謝るの?僕、受けて立つけど?」
「え!?」
私が驚いているとルーエとドロシーは大喜び。
「やっぱり!流石ミスティ先輩!」
「当然よね。エルシーの彼氏なんだもの」
「その子、バスケ部の子だよ。バスケで対決かな」
とミスティはリョウの情報まで知っていた。
勝算はあるのか?と疑念を抱きつつ私はミスティに
「あの、無理しないで下さいね」
と声をかけた。するとミスティは
「僕の大切な彼女が他の男性に告白されて
黙って傍観してるのは嫌なんだよ」
と言って手を握ってきた。
私は驚いたが慣れなきゃと思い手を握り返した。
「今から中等部行くから。エルシーも来て?」
「ドロシー達も心配だからついてく」
私達は中等部のバスケ部にやって来た。
ちょうどそこでリョウがバスケをやっていた。
私に気づいた彼はキラキラの笑顔で出迎えた。
「あ!エルシー先輩!…とそちらの方々は?」
「昼はどうも。お望み通り対決させてあげに来たの」
ドロシーはそう言いミスティが前に出る。
「君がリョウくんだね。僕はミスティ。
エルシーの彼氏です」
「え?わざわざここまで来てくれたんですか?
ありがとうございます!でも、そのか」
リョウが何か言う前にミスティが先手を切った。
「フリースロー3本勝負で良いかな?」
「ひっ!あ、はい。分かりました」
正直ミスティがスポーツバリバリ出来るイメージは
無いのだけれど彼は静かに怒っているように見える。
「おいおいリョウ。ビビってんの?お前の腕なら
余裕でこいつに勝てるっしょ」
同じ中等部バスケ部の子が囃し立てる。
ミスティは構わずバスケのボールを手に取る。
「なっ、こいつって!」
ドロシーがそう言いかけたのをルーエが止め
ミスティはフリースローの位置につきながら
「君がバスケ得意なのは知ってるよ。
高等部の僕の同級生も褒めてた位だから。でもね」
バスケットボールをスッと簡単にゴールネットに
入れていく。次から次へと。あっという間に
3本入れ終わりリョウ達はポカーンとしていた。
「あまり先輩を舐めないで貰えるかな」
と少し怖い顔でミスティはリョウ達に言った。
リョウは焦って自分もとバスケットボールを持ち
フリースローしようとするもその焦りから
1球目から外してしまう。
「ああっ!終わった…」
「これでエルシーの事、諦めてくれるね?」
落ち込むリョウにミスティは顔を近づけて威嚇する。
リョウは悔しがり首を横に振る。
「俺は諦めません!」
「あの、そもそもなんで私?いつから私の事好きなの?」
と私は間に割ってリョウに聞いた。
「中学1年からの一目惚れです。その時はまだ
勇気が出なくて告白出来なかったけどバスケ部で
活躍出来るようになってきたから告白しようと
思って」
「だけど、それって丁度エルシーに彼氏が出来た
タイミングでしょ?何か狙いがあるんじゃないの?」
ドロシーが怪しがる。私も同じ事を考えた。
「最初から知ってた。エルシー先輩はミスティ先輩の事が好きだって。だから諦めようとしてた。だけど
やっぱり諦めきれなくて!!周りに相談したら
彼氏居ても想いは告げた方が良いって」
まさか1年前からの一目惚れだったとは、私も
驚いた。しかし私は彼の事を何も知らなかった。
「リョウくんだっけ?ごめんね気づかなくて。
真剣な告白だったんだね?罰ゲームかと思ってた。
でも私はミスティ先輩の事が好きだから気持ちには
応えられない。ごめんなさい」
そう私がリョウに伝えるとリョウは涙ぐみながら
「分かりました。こちらこそご迷惑おかけしました。
これからは二人を応援します。」
そう言ってくれた。
ミスティも怖い顔から穏やかな表情に戻り
「分かってくれたなら良いんだ。
これからもバスケ頑張って」
と声をかけて私達はその場を後にした。
〜部活終わり〜
ミスティは丁度塾が休みで演劇部の部活終わりまで
教室で勉強して待ってくれた。
「こんな時間まで待ってくれたんですか?
大会近いから遅くなるのに」
私がそう言うとミスティは笑顔で答えた。
「大丈夫。それより一緒に帰りたいから」
そう言うと帰り支度し終わった私の手を繋いで
ドロシーとルーエも連れて外に出た。
これからは朝は歩きで帰りはバスを利用する。
学校と私達の家は近くだがこうやって遅くなる事も
あるし歩きで帰るとなると最終的に私とルーエ以外
一人ずつになってしまう為そうしている。
何より祖父母が心配する。
「ミスティ先輩ってバスケあんなに上手かったんですね」
私がそう尋ねるとミスティは照れくさそうに
「ちょっとバスケ部の同級生に教えて貰っただけだよ」
そう答えた。そして疲れてぐっすり眠ってる
ルーエとドロシーを見た私にミスティは
「エルシーも眠い?寄りかかっていいよ。」
と声をかけた。肩を抱き寄せられてしまった。
どうしよう。緊張する…!しかしそれは最初だけで
段々と温もりが心地良くなって本当に眠りそうに
なった。更に手も握ってきた。
「どうしたんですか?今日やけに手繋いでません?」
ミスティに顔を見上げて私がそう聞くと
「恋人なんだからこれくらい普通じゃないかな?
まあ前からこうしたいって思ってたんだけどね」
と返された。
バスの中でゆったりとした時間が流れた。
こんな日々がこれから続くのかなと思った私なのであった。




