第五話
〜夏休み〜
「ようこそ、私の家へ」
3年生の先輩白石和花のお屋敷へと招かれた私達は
広いお屋敷に感動していた。
「いつ来ても凄いよね和花先輩の家」
と凛子が元気よくぴょんぴょん跳ねる。
「あまりはしゃぐな小鳥遊。勉強嫌いの
陽輝と依馬は捕まえてあるか蕾」
「OKっすよ渉先輩」
和花と同じ3年生の渉は怪力な1年生の蕾に
2年生の陽輝と依馬を運ばせている。
「ミスティ先輩、来てくれてありがとうございます」
私はミスティに感謝を述べた。
「いやいや。ユーマはやっぱり来ないってさ」
「そうなんですね。ドロシー、大丈夫?」
「平気。エルシーありがとう気にしないで。
それより皆で勉強するの楽しみ」
「皆さんお飲み物は何が良いかしら?」
和花が皆に勉強中に飲む飲み物を聞いて回った。
麦茶・紅茶・コーヒー・スポーツドリンク・水……
最後の番で「あ、俺ミルクティーで」とルーエが答えた。
「あらルーエさんは紅茶が好きなのね。私もなのよ。紅茶好きが増えて嬉しいわ」
「ガムシロップ無しで飲めるの?」
とドロシーが聞くと「いや飲めない」と
ルーエは即答した。
「お茶菓子もあるので勉強の合間にどうぞお召し上がり下さい」
「メイドさん、ありがとうございます」
「勉強嫌なんですけど、やらなきゃダメなの?浅木先輩」
「留年したくなければ頑張りたまえ」
咲間陽輝と永井依馬はブーブー言っているが先輩の
浅木渉はスルーしている。私と同じ1年の赤松環は
黙々と勉強を始めている。
「数学はミスティさんに任せて、私達は何を皆さんに教えたら良いかしら」
「和花先輩の得意科目は〜国語!特に作文」
「私の苦手な作文だ〜!」
つい自分の口から本音が出てしまった。
それに対してルーエが反応した。
「エルシー、それ俺も苦手。双子の共通点が見つかって嬉しいよ」
「え?ルーエくんも作文苦手なのかい?」
「はい。そう言うミスティ先輩は?」
「僕は苦手科目ほとんど無いかな」
「完璧超人じゃないですか!尊敬します!」
「ミスティ、ここ全部教えて。分からない」
「はいはい、相変わらずドロシーは勉強苦手なんだね」
ドロシーはいつもミスティに勉強を教えて貰っている。
小学生の基礎的な学習もミスティや私に教えて
貰って理解している。
「ルーエは得意科目ある?」
「英語だな〜お父さんの影響で外国語は凄い叩き込まれたから」
「そうなんだ、私は日本語しか話せないな」
祖父母がドイツ人だが私は学校で習った日本語と
英語しか話せない。たまに祖父母がドイツ語で
話してるのを聞いた事があるが全く分からない。
「俺はお父さんの仕事の都合でヨーロッパ行ったけど凄かったな。モデルの仕事も貰ったし」
「ルーエくんってその時からモデル始めたの?」
そう皆が聞くとルーエは頷いた。
「じゃあ知名度は外国の方があるんじゃね?」
と依馬が聞いた。するとルーエは「まあね」と頷いた。
なんでこんな凄い人が私の双子の兄なんだろうと
その時私は思った。
「ルーエくんは何故日本に来たの?妹のエルシーに会う為?」
「勿論。父さんから初めて聞いた時から会いたくて仕方なかった。」
そう言うとルーエは私の手を握りじっと見つめてきた。私は恥ずかしくなり視線を逸らそうとしたが
ルーエはそれでもじっと見つめてきた。
「ルーエくん?今は場所をわきまえて貰えないかな?」
見かねたミスティが声をかけてくれてルーエは
「すみません」と手を離してくれた。
〜勉強会終了後〜
無事に勉強会が終わり私達は家に帰ろうとしていた。
今日一日でほとんどの課題を終わらせた人も居れば
何も手につかず終わった人も居た。恐らくドロシーは
ミスティに何度も勉強を教わる事になるだろう。
「エルシーごめんね。ミスティと話す時間奪って」
とドロシーはバツが悪そうに謝る。
「何言ってるの!!ドロシーの課題終わらせる為じゃない!私は気にしてないよ!」
私は平気な表情を見せた。正直複雑だけど、仕方ない。
「二人ともそんなに気にするなら俺がドロシーちゃんに勉強教えてあげようか?」
ルーエがそう言うとドロシーは複雑そうな表情を浮かべた。
「え、ルーエが教えるの?」そう言うドロシーに
ルーエは「うんうん」と頷く。
「ルーエ、エルシーには勉強教えないの?」と
ドロシーが聞いた。
「勿論!頼まれたらエルシーの分も見るよ」
そう言いながらルーエは私の頭を撫でてくる。
ドロシーはムッと頬を膨らまして「近い!」と
いつものように間に入って私から離れない。
「何?妬いてんの?可愛いね〜」
とルーエがドロシーに言うと
「勘違いしないでよね!ドロシーはエルシーを守ってるの」
と返事した。
「エルシーと手繋いだり頭撫でたり何なの!?
エルシーと手繋いで良いのはドロシーだけなんだから」
「双子の兄妹なんだからそれ位良いだろ?」
そう言うとルーエは私の手を握り走り始めた。
私も走らされくっついてたドロシーも離れないまま
走り始めた。
「な、何これ…誰か助けて」
ドロシーを家まで届けるまで走りっぱなしで疲れた。
「エルシー、ルーエに気をつけてね。それじゃあまた」
ドロシーから忠告を受け、私はルーエと一緒に
実家へ向かった。
「エルシー、手繋いじゃダメ?」
ルーエは私にそう聞いてくる。
「ダメでは無いけど、他人から見たら恋人同士だと
勘違いされるかもしれないからちょっと…」
正直、ルーエの考えてる事が分からない。
距離感も個人的には近いと思っている。
「んー。難しいのな。俺は勘違いされても兄妹だから
って答えるんだけど」
「週刊誌とかに撮られても同じ事言うの?」と聞くと
「当たり前」と答えた。
「て言うか既に撮られて事務所で問い詰められたし」
「え?」
ルーエの話ではドロシーとのコラボの件も言われたし
私と一緒に暮らしてると言う情報を週刊誌に出すと
言われ家族だからプライバシーの侵害だとか言って
追い払ったらしい。
「父さんの耳にも入ってる。俺の勝手な行動で
エルシー達に迷惑かけてごめんな」
「そんな事になってたなんて私知らなかった」
「エルシーは一般人だからメディアに出させたくないんだ。ミスティ先輩と付き合って結婚するんだから
俺の人生でめちゃくちゃにしたくない」
ルーエの中では私はミスティと結婚すると思ってるらしい。と言うかそんなにバレバレだろうか私の恋心。
そんなこんな話をしてると実家に着いた。
「お帰りなさい二人とも」祖母が笑顔で出迎えてくれる。
「ただいま〜おばあちゃん」「ただいま!」
「ミスティくんから二人に渡したい物があるって
預かってるんだけど」
「え?」と私とルーエは目を丸くした。
祖母が渡してきたのは水族館のチケットだった。
しかも4人分。ミスティ、ドロシー、ルーエ、私の物の
ようだった。
「何人で行くかは二人で決めてって言ってたわ。
連絡するなら早めにとも言ってたわ」
「これは…ドロシーが居たら揉めるなあ」と
私は思ってしまった。ルーエは
「これさ、2人分ずつにしてペアで行けば良いんじゃない?」と言ってきた。
「ドロシーがそれで納得する訳無いじゃない!」と
私は即ツッコミを入れた。
「これは4人仲良く行くしか無い」
そう私が言うとルーエは
「良いのか?せっかくミスティ先輩と二人になれるのに」
と言ってきた。私は
「ドロシーがルーエと二人で喧嘩してる様子しか浮かばないから良い」
と答えた。
「そうか?ドロシーちゃんも話せば分かると思うけどなあ」
とにかく私はそんなルーエをよそに、ミスティに
スマホでメッセージを送った。感謝を述べて
日時を決めて予定を確認した。
ドロシーにも連絡し了解を得た。
水族館か…それにしてもどうして彼はこれを祖母に
預けて行ったのだろう。忙しいからだとは思うが
なぜ水族館?いきなり?
疑問が浮かぶが、お誘いが嬉しくてワクワクしてる
自分が居るのは事実だった。