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夜の街のライブハウス

「この後ライブやるから見に来てー!」

 そう、優香が言った。

「うん、見に行くよー」

 おれと勇真と彰は、そう優香に返した。

 優香は、大学が始まった初日の入学式から話しかけてくれた、名前の通り優しい女の子。

 英語の授業で隣になって、それから最初の授業の終わり、一緒に帰って、めちゃくちゃ楽しかった。

 それからずっと、片思いをしている女の子。

 片思いって、苦しい。

 叶うかどうかわからないし、いつ告白すればいいかとかわからないし。相手が、自分のことをどう思っているか、全然わからないし。

 本当に、わからない。

 どうすればいいのか、全然わからない。

 それでも、おれは。

 優香のことが、好きだ。

 さっき、学科のみんなでたこ焼きを出し物として出した時も、隣同士でたこ焼きを作っていて、心臓が飛び出そうなくらいドキドキした。

 本当に、心の底から大好きな女の子。

 そんな優香が。

 この後。

 夜。

 ライブをするって。

 めっちゃ、楽しみ!

 おれの通っている大学は、愛知県の端っこの方にあるんだけど、ライブ会場は、愛知県の真ん中の方の「栄」にあるらしい。

 優香はベースを演奏して、他に、優香の高校の友達同士で、ボーカル、ドラム、ギターもいるらしい。

 超楽しみ!

 めちゃくちゃ楽しみ!

 だって!

 優香がライブをするってことは!

 優香のことを、ずっと、見つめられるっていうこと!

 こんなに楽しみなことはないよ!

 しかも!

 ライブを見に行くってことは!

 目とか合うかもしれないし!!

 そうしたら!

 もう!

 心がズッキューンってなっちゃう!

 どうしよう!

 もう、夜の5時だ!

 7時には、優香のライブが始まっちゃう!

 わー! どうしよう!

 勇真は、イケメンで背が高くて、それこそ、悔しいけど、少しだけ、ほんの少しだけ?優香とお似合いのような感じで、彰は、髪の毛が少し長くて、彼女がいるイケメン。そん中でおれはというと、別に普通の大学生で、そこまでイケメンでもなくて、だからこそ、おれは、自信がない。

 本当は、優香のことが大大大好きなのに、言えない。自信がない。

 もちろん、ヘアセットとか研究したよ!メイクだってしたし、ジムに行って頑張ってダイエットもしたし、そして、顔が小さくなるローラーとか買って頑張って顔を小さくした。

 それでも、どうしても自分に自信が持てなくて。

 いまだに。優香を、デートに誘えずにいる。

 というか、目が合っただけで、正直、心がどきーんってして、そのあと反応できなくなる。

 だから、しょうがないっていうか。

 どうしようもないっていうか。

 おれなんかが、優香と付き合うなんて、本当に、滅相もないっていうか。

 でも、優香が、一緒に帰ってくれた日のことはめっちゃくちゃ覚えてる。

 この大学は、女子が多めの大学だから、恋愛ができないかもー、とか、私なんて可愛くないから、もっとかわいい人にイケメンは取られちゃうかもー、とか話してた。

 おれは、優香は可愛いから、そんな取られるなんてことなんてないよ、なんて言ってやりたかったけど、そんな恥ずかしいことは言えないから、そうなんだー、って流していた。

 そしたら、今、気になってる人とかいないの、とか、彼女いないの、とか優香が聞いてきてくれて。

 だから、そのまま、今はいないかなーって、答えた。

 だって、電車の中だったし。

 君のことが好きだよ、なんて、急に言われても困ると思うし。

 だから、何にもできなかった。

 何にもできなかった、けど。

 彼女いないよ、って言った後の、「私もいない、はあ」って少し悲しみに暮れた後に、「一緒にがんばろ!」って笑顔で言ってくれたのが、すっごい嬉しくて、それで、舞い上がっちゃて、今も、そんな優香の顔が、頭に浮かんで……

「おーい、智樹」

 はっ!

「またぼーっとしてんのか。早く店片付けて、優香のライブに行くぞ!」

 そう、おれの頭をぽかっと叩きながら、勇真は言った。

 それに、彰も続けた。

「おれも、優香のベースの実力、見てみたいしな」

「おれも、そのことを考えてたよ?」

「ほんとかー? じゃあ早く店片付けるぞ!」

「お、おう」

 勇真はイケメンだからいいじゃん。

 何でも許されるし。

 でも。

 イケメンなのに店をてきぱきと片付ける姿を見ると、少し、いいな、ずるいな、こんないい奴に生まれたかったな、なんて思ったりする。


 勇真が空に向かってガッツポーズをした。

「よっしゃー! 店の片づけ終わりー! 早く地下鉄乗ろうぜー!」

「いいねー!」

 おれたちは、夕暮れ、星が出てきたそんな空を見上げながら、イルミネーションが光る大学祭の道を歩き、地下鉄へと向かった。

 地下鉄は、他の大学の大学祭の時期とも重なっているからか、結構混んでいた。

 でも。

 ライブに行くまでのこの道。

「なんか、わくわくするねー」

「ああ。なんたって、優香がベースを弾くんだもんな」

 彰は優香のベースがとにかく気になるようだ。

 それに呼応して、勇真も笑顔になった。

「おう! 本当に、楽しみだな!」

「まもなく、栄、栄です。お出口は、左側です。ドアから手を放して、お待ちください」

 ドアが開いた。

 いよいよ、ライブが始まる。

 よくよく考えたら、おれ、ライブに行くのって、初めてな気がする。

 高校の頃に、何回か行こうとしたことあったけど、でも、お金がなくてやめたりとか、テスト週間だからって言ってやめたりとか、そういうので結局ライブには行けずにいた。

 大学に入ってからも、あんまり音楽の趣味が会う人がいなくって、だからライブにはいかなかった。

 だからこそ感じる。

 この、ドキドキ感。

 ワクワク感。

 改札を抜けて、出口を出ると、繁華街。

 街中、めちゃくちゃキラキラしてる。

 めっちゃ綺麗!

「えーっと、優香のやるライブハウスは……あっちだ」

 勇真が先頭で、案内をしてくれる。

 どんどん、ライブ会場に近づいて行っている。

「ここだ」

 ついに、ライブ会場についた!」

 階段を下りた、地下にあるようだ。 

 おれたちは、階段を下りた。

 すると、ライブハウスの受付のお姉さんが、チケットを売っていた。

「ドリンクチケット一枚500円でーす」

 それを買い、中に入ると。

 みんながノリノリで、ライブを楽しんでいる。

 優香は、優香……あれ、いない?

 彰が口を開いた。

「多分、違う大学のバンドがやってるんだよ」

 なるほど……

 それでも、音が響いて、照明も相まって、めちゃくちゃかっこいい!

「ありがとうございましたー」

 その人たちが帰っていくのと同時に、その人たちを見に来た人たちも帰っていった。

 おれたちは、少し早めに来たからか、前の方に立つことができた。

 おれ達が、立つと、後ろからもどんどんお客さんが集まってきて、ライブ会場はあっという間に満帆になった。

 4人が暗い中で準備をしている。

 光が、パーっと広がった!

 その中に、優香もいる!

 茶髪でロングで目が大きくて少したれ目で、それなのにベースを持っていて、めっちゃかっこいい!

 4人のガールズバンド!

 めちゃくちゃかっこいい!

 2つ縛りのボーカルの人が叫ぶ!

「よっしゃー、準備はいいー!?」

「イエエエエエエエエイ!」

「行くぞー!」

 みんな、ノリノリになっている!

 一曲目が始まった!

 彰も、勇真も、ジャンプしてる!

 おれも、負けじとジャンプする!

 ベースを弾く優香はめちゃくちゃかっこいい!

 っていうか、4人ともめちゃくちゃかっこいい!

 一曲目が終わった!

「っしゃ! 盛り上がってるかー!」

「イエーイ!!」

「メンバー紹介します! まず、ギター、冴子!」

 ジャジャジャジャジャジャジャジャーン!

 フゥー、と歓声が飛んだ。

「そしてベース、優香--!!」

 ドゥドゥドゥゥゥゥゥン!

 かっこいい!

 かっこいい!

 ああ。

 可愛い。

 やっぱ好き。

 勇真が叫ぶ。

「優香ー!」

 優香が勇真の方に手を振る。

 うわ。

 ずりい!

 でも、叫べない!勇気が出ない!

「ドラム、綺羅!」

 ドカドカバシーン!

 かっけー!

 おれ人生やり直せるならドラマーになってみたい!

「そして、ボーカル、私、梨花ー!!!」

「フォーーーーーー!!!!」

「いいね、いいね!学生バンド、楽しすぎるっしょ!次の曲!」

 そして、次の曲が始まった!

 みんな、ノリノリで、ジャンプする!

 それから、時間を忘れておれ達はしばらくの間楽しんだ!

「次で最後の曲!その前に、嬉しい報告があります!」

「おおおおおおっ!?」

「ベースの優香に、彼氏ができましたー!!!」

 ……え?

「ワアアアアアア!」

 彼氏が、出来た?

「その彼氏に、今日、来てもらってまーす!紹介します、勇真ー!!」

 そしたら、勇真が、舞台に上がった!

 そして、もう一本用意されていたマイクをもらって、叫ぶ。

「おれは、優香に出会えて、よかったぜええええ!!」

「ワアアアアアア」

 そんな。

 そんな。

「それでは最後の曲、ツインボーカルで、行くぜええええええっ!」

 優香。

 勇真と、付き合ってたなんて。

 でも。

 優香と、勇真。

 めちゃくちゃお似合いで。

 おれの眼からは、水がこぼれてくるけど。

 これはたぶん、会場の熱気から出た、汗かな。

「ワン、ツー、ワンツースリーフォー」

 めちゃくちゃかっこいい曲が始まった。

 勇真も、優香も、みんな、めっちゃ、かっこいい。

 汗で、多分汗でにじんであんまり見えないけど、みんな、めちゃくちゃかっこいい。

 おれは、彰と肩を組んで、飛び跳ねながら、最後の曲をノリノリで、聴いていた。

 最高に悲しくて、最高に楽しいライブが、おれの目に映った。

恐れ入りますが、


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・下段の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎


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