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第36話 誰よりも仲間思いなところ

「──────────うっ」


「目が覚めたかい、カチワレ」


「・・・ここは?」


 俺の質問にタクトが答える。

 俺は馬車に乗っており、そして中には全ての〝仲間〟達がいた。


「都市を南に抜ける街道だよ、この都市は今、戦場になってるからね」


「──────────っ!!、戦場って、俺が殺した人達は、みんな生き返らせたんじゃないのか?」


「もちろん生き返らせたよ、国王も皇帝も、悪徳貴族も変態貴族も全員ね、でもそれはそれとして、王国も帝国も、この式典を口実に最初から攻め込むつもりで、軍隊を派遣していたんだよ、それで都市がパニックになったのを皮切りに、両軍が衝突を始めたって話さ、その結果、結局人間同士の争いでさ、貴族も国王も皇帝も、みんな死んじゃったんだ」


「──────────は?」


「いやあ、いきなり会場に砲弾が降ってくるもんだからさ、僕も死ぬかと思ったよ、この『神威』の、【主人公補正】が無かったら間違いなく死んでたね」


 そう言ってタクトは馬車を御しながらこちらを振り向いて屈託なく笑った。


「なぁ、なんで俺を助けたんだ、俺は、お前を・・・」


「いいんだ、君が何を思って、僕に何をしたとしても、僕はそれでも君が好きだし、君が大切なんだ、だから、──────────()()()()よ」


「それでよ、カチワレ、お前が寝ている間に話してたんだが、この戦乱が落ち着くまでは一旦タクトの家に世話になって、それからは皆でダンジョンに冒険に行こうって話になったんだ、聞いた話によると50階層をクリアするには50人でも足りないくらいなんだろ、だったら、俺たちでパーティーを組むのは丁度いいんじゃないのか?」


「・・・でも、いいのか?、俺は、皆のこと傷つけたし、それに今は、・・・無能力者だ」


 【魔眼】を使おうとしても使えないし、【見えざる手】ももう発動出来ない、俺の中から〝力〟が無くなった事は、既に理解していた。


「ふん、あんたを戦闘の頭数に入れなくても、戦闘くらいなんとかなるわよ、だって今はこんだけ大所帯なんだし」


「というか、戦闘なら私一人でもなんとかなりますけど!!、というかカチワレ様の仲間は私一人で十分ですけど!!」


「頭が悪くて性格も性根も腐ったクソガキは引っ込んでてください、ここに正統派スーパーリアルプリンセスで正妻で戦闘力も最強な完璧ヒロインがいますから、ガキとか出番無いですから!!」


「と、し、ま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


「ク、ソ、ガ、キ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


 ・・・〝力〟が無くなったって事は、この頭のおかしい二人を制御する方法が無くなったって事だよな。

 【不死】も無くなったし、そのノリでいじめられたら本格的にヤバい気もするが、流石に、今更縁切りもできないんだろうな・・・。


「カチワレ・・・、カチワレは、貴族の私に全裸土下座までさせたんだから、その責任を取るべきだと思います」


 リリアのその発言で、空気を読めない二匹の怪獣以外の人間の空気が凍るが、俺も空気読まずに言い返した。


「分かったよ、はいはい分かりました、全裸で宴会芸やった挙句に、街の晒し者になって乞食でもなんでもやりますよ、それでいいんでしょ」


「え、いや、別にそこまでやれとは言いませんが・・・、ただ、もう一生お嫁に行けないくらいの事はさせられたので、これからもずっと、このパーティーで一緒にいて欲しいって、それだけです、それ以上は望みません」


「そういえば私も、地面に擦り付けるようにして頭踏まれてるんだけど、その責任取ってもらわないと」


「・・・お前ら、俺から〝力〟が無くなったと分かった途端に強気だな、分かったよ、分かりました、俺の体を慰みものにするなり、晒し者にするなり、サンドバッグにするなり、もう好きにしろってんだ、その代わり、俺もお前らに死ぬまで寄生するからな、貴族の遺産を骨までしゃぶらせて貰うからな」


「はは、お前、相変わらず冗談のセンスが際どいよな、変わらねぇ」


「ふふ、君一人を養うくらいは僕にも出来るし、だったら僕にもカチワレを好きにする権利はあるって事でいいのかな」


「──────────えっ!?、いや、それは・・・まぁ条件次第、かな」


 非常にこすい話だが、俺が頭のおかしい変態二人と縁切りする手段とは、BLを装う事しかないのではと、ここで思い至ったのだ。

 幸い、ここにはお手頃な美男子が二人いるし、こいつらと仲良くして〝壁〟を作れば、変態にして人類の超越存在2名からの殺人的なアプローチをかわすことが出来るのではという算段だ。

 しかし。


「じゃあ、お兄ちゃん、初夜は三人で迎えましょうか、私、お兄ちゃんなら、一緒でもいいですよ」


「あはは、ありがとう、ならその時はお任せするよ、だってさ、カチワレ」


「いや、なんで嬉しそうなんだよ、言っとくが、俺はアブノーマルなプレイも、人間も、お断りだからな」


「カチワレ、お前もモテる男になったな、俺、驚いたぞ」


「俺は心がイケメンだから元々モテるんだよ、だから変態に好かれても全く嬉しくない!!」


「自分で心がイケメンっていうようじゃ、まだまだよね」


「ですね」


「ちっ、・・・じゃあ俺のいい所沢山言えた奴が勝ちで正妻になるゲームな、先ずは〝自称〟正妻筆頭ユリエトから、はい」


「・・・え?、えーと、かっこいい、かわいい、目付きが鋭い、顔が端正、鼻が高い、童顔、ベビーフェイス、鬼畜、ドS、暴力的・・・」


「殆ど顔じゃねーか!!、お前、俺の事顔しか見てねぇのかよ!!しかも後半悪口じゃねぇか!!」


「いや、だって、〝力〟が無くなってから魅力半減したというか、前ほどメロメロにならなくなった感じですし」


「あ、それ分かります」


「賛同するなっ!!!、ちっ、じゃあ次はオフリア、お前も正妻名乗るならせめてユリエトには勝てよ、はい」


「え、えーと、賢い!、知的!、優しい!、王子様みたい!、えーとえーと、強い!、かっこいい!、ダンスが上手い!」


「お前の理想像を俺に押し付けんな!!、俺はダンスとかやった事ねぇよ!!、やっぱお前ら俺の事、実はそんなに好きじゃないだろ!!」


「そ、そんな事は、・・・確かに、長く接すれば接するほど、カチワレ様に対して幻滅(げんめつ)していく自分を感じますが、それと同時に愛しさだって強くなっていますから」


「分かる、ダメな所ほど可愛く見えちゃうのよね」


「黙れ、お前らの方が俺より10倍はポンコツだろうが、能力者である事にあぐらかいてる分際で俺を貶すんじゃねぇ、次はエリス、はい」


「な、なんで私が、こんな事を・・・、先ずは料理が上手いでしょ、後は気配りが出来て、話・・・は、つまんないけどたまに面白い話もしてくれて、顔は・・・まぁまぁね、性格は・・・クソ、財力も無いし、無能力者だし、はぁ、なんで私、〝こんなの〟好きになっちゃったんだろ」


「俺もなんでお前みたいなプライドだけはいっちょ前に高い女から好かれたのか謎だよ、でもま、安心しろ、ここにはお前と同じ道を踏み外した〝仲間〟しかいない、だからお前がどれだけ俺を好きになっても、馬鹿に出来る奴は一人もいねェから」


「・・・ほんと、意味わかんないわよね、なんであんたみたいなクズが、こんなにモテモテなのか理解出来ないわ」


「だからそれを証明するためにゲームしてんだろ、てかお前、あんだけ大胆な告白したんだからさ、もっとガツガツ攻めて正妻の座取りに来いよ、なんで普段はアグレッシブな癖に、こんな時だけ引いてんだよ」


「・・・まぁ、他人のモノになるってなったら癪だけど、自分のモノにしたいかって言われたら、そうでもない感じというか」


「あ、それ分かります、なんというか、モテモテ主人公のヒロインって立ち位置が美味しいのであって、メインヒロインになりたい訳では無いんですよね、根本的に、だって()()ですから」


「うるせぇ全裸土下座、お前も俺のファーストキス奪った立場なんだからもっとも周りを蹴散らす勢いで存在感出しやがれ、はっきりいって俺はお前が一番この中でまともで俺の好みだから、お前にこそメインヒロインを張って欲しいって思ってんだよ!」


「と、言われましてもね、知っての通り、私、無気力系女子ですから、でもま、カチワレのいい所なら沢山言えますよ、ごはんが美味しい、料理を作るのが早い、低コストで美味しい食事を作ってくれる、和食、中華、洋食、庶民料理に・・・」


「もういい、真面目にやる気が無いなら・・・帰れ!!!、がっかりだよ、お前はもっと出来るやつだと思ってたのに」


「だって、──────────私だけが知ってるカチワレのいい所は、私が独り占めしたいですから」


「──────────えっ!?、きゅん」


「男のきゅんはキモイですよ」


「うるせぇ、お前が歯の浮くようなクサイセリフ吐くのが悪いんだよ、ちっ、じゃあ最後はタクト、──────────お前の本気を見せてくれ」





「──────────分かったよカチワレ、すううううう、先ずは社交的な所、人の目を見て話せる所、聞き上手で相手の話をちゃんと聞いてくれる所、相手の悩みに気づいてくれる所、相手が触れてほしくない所を察してくれる所、言葉の裏まで読める所、長話をしても嫌な顔せずに聞いてくれる所、一緒に話すと楽しい気持ちにしてくれる所──────────」


 そこからタクトは10分間、文字数にすれば5000文字に相当する量を語り続けた。




「えっ、ウソ、私のお兄ちゃんって〝ガチ〟・・・なの?(ひそひそ)」


「・・・ええ、女の子だったら間違いなくヤンデレ化してるレベルの〝ガチ〟ではありますね」


「美少女二人とパーティー組んでるのに、会話する相手はいつもカチワレだったわね、私たちとはまともに会話した記憶すら無いわ」


「うぅ・・・まさかお兄ちゃんが最大の障壁にしてライバルになるなんて、世の中は残酷です・・・」


「・・・性別を変える〝秘宝〟とか見つかったら、本格的に趨勢(すうせい)がひっくり返る一大事になりますね・・・」


「まぁ、それは一部の需要から反するので、一部の層に断固反対されてナシになるでしょうけど、・・・それでも強敵です」












「おーい、タクト、もういいぞ、お前の優勝だ、正妻の座はお前のもんだ」



「思いやりがあって生真面目──────────、って、もういいのかい、僕はまだまだ言い足りないんだけど」


「俺はもう聞き飽きたんだよ、それに、お前に勝てる奴なんて世界中探してもいねぇよ」


「そ、そうかい、・・・まぁ、男の僕が出しゃばるのも変かと思ったけど、やっぱり、君の素晴らしさは皆に知って欲しいからね」


「ああ、ありがとう、やっぱりお前が、〝最高の仲間〟だ」


「なぁ、カチワレ、俺の番は、俺には聞かないのかよー」


 シュウは拗ねたようにそう言うが、流石にタクトに敵うはずも無い。

 だが、仲間はずれにするのもアレなので、渋々聞いてやった。


「じゃあ、シュウの番、つってもお前、俺の事そんなに知らないだろ、昔の俺とは大分違うんだぜ」


 俺がそう言うと、シュウは悪びれもせずににっと笑い、「まぁな」と答える。


「でも、俺も、一個だけカチワレのいい所言えるぜ」


「・・・なんだよ?言っとくが無理矢理オチを作ろうとして、下ネタとかは無しだからな?」


「お前じゃないんだし、そんなギリギリのラインは攻めねぇよ、俺の知ってるお前のいい所は──────────」

























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