第35話 やさしい夢の中で
「カチワレ──────────」
「──────────チンカラ?」
目の前にはチンカラがいた、俺は考えるよりも先にチンカラに抱きつこうとするが、体は動かなかった。
「あれ、なんで、動け、動けよ、チンカラが目の前にいるのに・・・待っててくれ、今、そっちに、行くから・・・!!!」
「ふふ、ごめんね、カチワレは、カチワレがどれだけ頑張っても、〝こっち〟には来れないんだ、だって君はまだ、生きてるんだから」
「そんな、折角会えたのに!、チンカラ、ごめん、一人にして、でももういいんだ、生きててもしょうがないから、俺もそっちに・・・」
「だめだよ、だってカチワレには、僕なんかと違って、素敵な仲間たちが沢山いるじゃないか、それに、僕にはもう仲間がいるんだ」
「そいつ、ら、は・・・」
「僕のパーティーメンバーだよ、カチワレが〝こっち〟に送ってくれたんだよね?」
「ああ・・・」
チンカラが所属していたパーティーのメンバー、根っからの鬼畜外道。
彼らはゾンビ軍団にする為に〝秘薬〟を飲まされ、根っからの悪人だったが故に〝怨念〟と共鳴し、『悪魔に取り憑かれた者』となった。
死因は恐らく、他の冒険者や兵士達との戦闘による死だろう、『悪魔に取り憑かれた者』は救済方法が無いので、一生ダンジョンを彷徨うか、討伐されるかの二択だったからだ。
「そんなに心配しなくても、大丈夫だよ、神様がね、みんなも一緒に生まれ変わらせてくれるんだって、しかも、僕は好きな世界で主人公として生まれ変わらせてくれるって言うんだよ、だから僕は、次は戦争とかない優しい世界で、草むしりしてお金が貰えるような、そんな所でのんびり暮らしたいって、そうお願いしたんだ」
「・・・そうか、それならきっと、次は幸せになれるな」
「違うよ、カチワレ、僕は君に会えて──────────〝幸せだった〟んだよ。
・・・それで〝生まれ変わり〟をする前に、最後に大切な人と話す時間をあげるって言われて、僕は君に会いに来たんだ、お礼を言いたくて」
「お礼って、俺はお前に何一つ、・・・それに、礼を言うのはこっちだろ、助けて貰ったのは俺だし、うっ、お前がいてくれて救われたのも、俺だ・・・っ」
「ふふ、いつの間にかカチワレも、すごく涙もろくなったね、でも、いつまでも優しいカチワレのままだ、僕の方が沢山沢山救われてるのに、ずっと僕と対等でいてくれるんだからっ」
「なぁチンカラ、っやっぱり、俺──────────」
「だめだよ、カチワレ、君は生きないと、君には、君を必要としてくれる人達が沢山いるでしょ、だから、僕よりずっと長生きして、僕の分まで幸せになって欲しい」
「うっ、でもっ、俺っ、やっぱり、お前がいないと、寂しいよっ、お前とずっと一緒にいたいよっ、こんなわがまま、言ったらダメなのかなっ・・・」
「・・・ありがとうカチワレ、もう聞き飽きたかもしれないけど、これで最後だから言わせてもらうね、いっぱいいっぱいありがとう、僕も、君とお別れするのは悲しい、けど」
「・・・けど?」
「生まれ変わったらきっと、また会えるよ、その時は、僕の方から絶対、君を見つけるから」
「うぅっ、くっ、ひっく──────────」
「だから、悲しまないで、別れだから悲しいのは仕方ないけど、きっとまた会えるから、だから笑って、お別れしよう」
「──────────ああ、チンカラ、またな、次会う時も、絶対友達だ」
「わァ・・・・・・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・・」