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第34話 タクトが主人公になる時

「──────────────────────────────〝〝約束〟〟だからだ!!!」


「な──────────」



 ありえない。


 ここにいるはずのない人間がいる。


 その事実が俺を更に動揺させる。




「久しぶりだね、カチワレ」


「本当に、本当にシュウ、なのか・・・?」


「ああ、約束、まだ覚えてるかな?」


「──────────当たり前だろ、俺は、無能力者だったけど、お前に会う日を夢見て、冒険者になったんだから・・・っ」


 懐かしい顔を見た、ただそれだけの事で、俺の両目からは自然と涙が溢れて来た。

 シュウと会って、今までの事を沢山話したいと、そう思った。


 ──────────でも。



「・・・悪ぃなシュウ、昔話は後だ、俺は今、引き返せない復讐の道の途中なんだ、この〝計画〟を中途半端で終わらせたら、この世界そのものが崩壊する、だから、ここに来た貴族は、全員纏めて根絶やしにしなくちゃいけないんだ・・・!!!」


 そうだ、俺は〝世直し〟だからこそ殺人を許容出来た、それに、血で染まった今の俺が、かつての友と抱き合う資格など、無いだろう。


「・・・ごめんなシュウ、俺は、もう、お前の〝仲間〟にはなれねぇ、〝外道〟に落ちたんだ、だから、陽の当たる道は歩けないんだよ」


 俺はシュウたちを無視して貴族たちの後を追おうとするが。


「どけ、タクト、俺は、俺の〝友達〟の仇を取らないといけないんだ、その為にこの世界の醜いものを全部、俺がぶっ壊すんだ」


「・・・ごめん、カチワレ、君がそうなったのも全部、僕が貴族として不甲斐なかったからだよね、僕がもっとちゃんとしてたら、君もここまで貴族を恨まなかった筈だ」


「・・・お前は関係ねぇよ、生まれと、育ちと、ありとあらゆる〝世界〟が俺を否定したんだ、・・・ダからオレは、セカイを、コワスんダ」


 頭痛、はちきれんばかりの〝憎悪〟とシュウと再会した〝喜び〟が、頭の中でせめぎ会う。

 どちらも大切なのに、どちらかを選ばないけない事が俺は苦しかったからだ。


「──────────カチワレ、君はまだやり直せる、ヒールをかければみんな生き返るんだ、だから、君のことは僕が止めさせてもらう、僕はもう、〝仲間〟を〝追放〟なんかさせない、君をこの世界に、陽の当たる場所に、引き留める!!!」


「うるさいうるさいうるさい!!、俺は、チンカラの、母さんの、仇を取るんだ、俺()()を否定する全ての奴らに、無能力者を迫害した全ての生き物に、俺たちが、全部全部復讐するんだ!!!、そこを、どけえええええええええええ!!!!!」


 俺は手荒になるとしりつつも、【見えざる手】を使ってタクトをぶっ飛ばそうとする。


 しかし。



「──────────セイッ!!、・・・これが我が家の秘宝、『神威』の力か、知ってるかいカチワレ、〝秘宝〟って言うのはね、所持するだけで一国と戦う力があるんだよ」


「──────────な、その〝秘宝〟は一体・・・」


 俺は【魔眼】を使ってタクトを見る。



 タクト【剣士】lv33 HP371 MP431

 【女神の加護】【剣術B】【頑丈B】【真眼】【主人公補正】【起死回生】【無敵】【悪魔特攻】【魔物特攻】【人間特攻】【奇跡の加護】【自動回復】【魔法吸収】【物理耐性】【威圧感】


「な──────────ステータスは平凡なのに、スキルが鬼盛られてやがる」


「これが我が家の秘宝、『神威』の力だよ、この世に存在するありとあらゆる神様からの加護を授けてくれる腕輪だ、君も【不死】みたいだけど、『神威』ならそれすらも跳ね除けるだろうね、さぁカチワレ、降伏するんだ、今ならまだ間に合う、全部無かった事にして、僕たちと一緒にまた冒険者をやろう」


「ぐっ──────────また頭痛が、くそっ、なんでだ、俺はお前を追放したんだぞ、それなのになんでお前は!!」


「それはお互い様だろ、それに、僕は、君の言うとり優柔不断な男だ、どっちか片方を決めるのが苦手で、いつも君には迷惑をかけたね、でも──────────だからこそ、僕は君を手放さない!!!。

 たとえ、世界か君か、どっちか片方を選べと言われても、僕はどっちも選ばない、両方取る!!!。

 だからカチワレ、復讐なんてやめて、僕たちと一緒に──────────」





「うっ──────────ぐっ、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」






 帰りたい帰りたい帰りたい。


 もしも、〝あの日〟に戻れるならば、俺は迷わず戻る事を選ぶ。


 でも、どれだけ願っても、どれだけ望んでも、俺の一番大切な友達は戻って来ないんだ。


 だから俺は世界を許せないし憎む。


 ソウダロウ?。


 そうだよな?。


 こんな腐った世界なら、理不尽な世の中なら、誰かが壊さないといけないんだよな?。


 じゃないと報われないし、俺の気が済まない。


 ソウダロウ。





「はぁはぁ、ぐっ、タクト──────────邪魔するなら、お前でも殺す、俺はな、〝仲間〟だろうと容赦しねぇ、だからそこを、どけえええええええええええええええ!!!!」


 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド。


 俺はタクトの足元に雪崩のような砲撃を浴びせる。


 だがタクトは、そこから微動だにしなかった。


「僕は知ってるんだ、僕の〝仲間〟は、カチワレは、決して仲間を傷つけるような人間じゃないって、僕はもう、〝友達〟を疑ったりしない!!」


「戻ってこいカチワレ、俺と一緒に冒険するんだろ?、約束だろ?、やっと会えたんだ、だったらお前は、こんな〝つまらねぇ〟事、してる場合じゃねぇだろ!!」


「うぅっ、うううぅっ──────────」






 オレは許せルのカ?。


 俺を追放した世界ヲ。


 この醜く腐った世界ヲ。


 否、否、否否否否否否否否否否否否否否否。


 許せなイ。


 格差、独占、資本、功利主義、許セナイ。


 人ルイは平等デ、差別ハ悪イ事・・・。


 世界ヲ革命セヨ。


 土地トパント平和ヲ・・・。



 ▼カチワレ lv50【?????ンノ王】HP2345MP2796


 ジジ──────────


 ▼カチワレ lv50【キ?ウ?ンノ王】HP2345MP2796


 ジジジ──────────


 ▼カチワレ lv50【キョウ?ンノ王】HP2345MP2796


 ジ──────────


 ▼カチワレ lv50【キョウサンノ王】HP2345MP2796






「──────────そうか、それが、君に取り憑いていたものの正体か・・・、共産の王、マルクス!!!」


 『神威』により【真眼】を持つタクトは、カチワレのその変化の正体を見抜いた。





 共産主義


 財産の私有を否定し、生産手段・生産物などすべての財産を共有することによって貧富の差のない社会を実現しようとする思想・運動。






「──────────な、じゃあカチワレ様が貴族を目の敵にしていたのは全て、共産主義者の思想によって洗脳されていたからという事ですか!?、私たちは【神の見えざる】スキルなのに、一人だけ【神の】がついていないのも、王権、つまり神を否定する共産主義者だったからって事ですか!?」


 【魔眼】を持っていたオフリアもカチワレのその変化に気づき、戦慄する。


「思えば【ジョブ】が文字化けする、この違和感にもっと早く気づくべきだったのかもしれません、復讐したいだけなら、気に入らない人間を一人一人闇夜に紛れて暗殺し、それで世直しをすれば良かっただけの事、しかしカチワレさんは復讐が目的と言いつつ、その手段は革命でした、この違和感に、我々はもっと早く気づくべきだったのかもしれません!!」


 ユリエトもまた【魔眼】を使ってカチワレの変化を確認した。


「ちょっ、どういう事?、共産の王?、なんでカチワレにそんなのが取り憑いているのよ?」


「さぁ・・・、この世界にはダンジョンが勝手に湧いたり、〝秘宝〟が世界のバランスを覆すような神造兵器(オーパーツ)だったり、不思議な事がいっぱいですから、ある日突然共産主義に汚染される事も、あるのでしょう」


 エリスとリリアは、禍々しいオーラを放つカチワレの姿を見て武器を構えた。


「まぁ、つまり、こいつを倒せば全部丸く収まるって事だな、挟もう、タクト!!」


「シュウ、オーライ!!」





「ウヴォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 カチワレは暴走し、手当り次第に【見えざる手】で攻撃する。




「くっ、私たちが、足止めします!!!、《刺穿(デス・スディング)》!!!!」


「《斬裂(デス・スラッシュ)》!!!!」


 カチワレの攻撃の全ては、上位スキルであるユリエトとオフリアの【神の見えざる】によって相殺された。


「カチワレ、僕が今、君を救うよ──────────届け、僕の想い!!!!」


「ギィエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」


 ザクッ。


 カチワレの胸に突き刺さったのは、カチワレがタクトに渡した〝秘宝〟、〝怨念〟を結晶化する剣だった。


 それによりカチワレの中に宿っていた全ての〝憎悪〟は剣によって結晶化され、取り憑いていた化け物も消滅する。




「ギギ、キョウサンの灯火は、世界に広ガル、決して、途切れる事は、ナイ・・・・・・」


「終わった、のか・・・」


「ああ、これでもう、元のカチワレだ・・・」




 こうしてカチワレは、元の、ただの無能力者に戻ったのであった。

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