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第30話 胤明かし

「うわぁ、すごい人ですね、しかもこれ、全部王族と貴族ですか・・・」


 カジノを中心とした会場には、多くの来賓(らいひん)として王国とワーレ帝国の上流階級のもの達が並んでいた。


 そこの対応にはかなりの注意が必要となったが、俺は部下達にホスピタリティの徹底を教育する事により、なんとか彼らに不満を与えない対応を施して、この式典に参加させたのであった。


「まぁ、ワーレ帝国の王子の独立即位記念、アンド、ダンジョン攻略秘宝獲得記念のパーティーだからな、それに、各国の重臣達にはバッチリ賄賂を送って掛け合ってあるし、トータックが持ってたコネもある、オマケでジャギーの囲ってた美少年達の中にはアイドル並みの有名人も沢山いて、そいつらも協力してくれたからな、たった1週間でここまで出来たのも、そういう星の巡り合わせのおかげだ」


「・・・確か、「王に即位したら倍にして返す」という条件の下、あらゆる貴族、王族、企業から途方も無い借金をしたんですよね、その額、兆を超えているとか・・・」


「普通ならそんな自転車操業(ポンジスキーム)みたいな話、旨みがあっても乗る訳が無いんだが、だがカジノの年収は500億だし、この街のダンジョンからは貴重な〝ミスリル〟や〝オリハルコン〟だって取れるしな、そこにワーレ帝国の落胤(おとしだね)の証拠まで出されたら、無視出来る人間はいないだろう」


「なんというか、あらゆる面においてカチワレさんに都合がいいように運が味方してますね、いえ、カチワレさんの素晴らしい計画あってのものなんでしょうが」


「・・・確かに、俺が皇子だった事まで含めて、天は俺の味方をしていたのかもな」


「・・・えっ?」


「・・・なんでもない、それよりずっと気になっているんだが、王国の第1王女、確か、ジリエト王女だったか?、お前と瓜二つで、その上ずっとこっちを見てないか?」


「それを言ったら帝国の皇太子であるシーリ・ワーレ様も、さっきからずっとこっちを伺っている様子ですが、なにか因縁でも?」


「さぁな、おいユリエト、お前ちょっと王女に「お姉ちゃん」って挨拶して、カマかけて来いよ、もしかしたらお前()王女の血統で、正当に王国を乗っ取る事が出来るかもしれねぇぞ」


「ええ!?、嫌ですよ、今はカチワレさんの妻なんですから、いまさら王族の地位とか、欲しくはありませんよ」


 ユリエトは面倒くさそうなしがらみと関わるのは御免だとそういうが。


「あーあ、これでユリエトがジリエト王女の座を奪って、それで王国の王女になったなら、俺の正妻になる事においてこれ以上ない正当性ができるんだけど、そっか、ユリエトは俺の正妻の地位は要らないか、ならいいや」


「くっ・・・、とてつもない意地悪を言いますね、分かりましたよ」


 そう言ってユリエトは渋々といった様子でジリエト王女の元へと向かった。


 王女の護衛たちも、近づいてきたユリエトに驚いている様子だったが、それ故にユリエトの接近を許した。



「──────────こんにちは、()()()()()


 ガタッ。


 王女は感極まったように立ち上がり、そしてユリエトに抱きついた。


「やはり、貴方が私の妹なのですね、ああ、ずっと会いたかった」


「ええっ!?、本当に、本当に私は王国の王女なんですかっ!!?」


 ユリエトが驚いてみせると、ジリエト王女は淡々と語って聞かせた。


「私には生き別れの妹がいると、存在を抹消された双子の妹がいると、昔乳母に聞かされました、なんでもその妹は誕生と同時に何者かに誘拐され、そして行方不明になっていたと、王国中探してみたものの、その消息は掴めなかったとか、死んだとばかり思っていましたが、生きていたのですね」


「・・・そりゃあ、スラムのホームレスに育てられた赤ん坊の事なんて、誰も見つけられないのも当然ですね」


「そんな、スラムのホームレスに・・・、さぞ苦労されたのでしょう」


 そう言ってジリエト王女は、まるで自分の事のように涙を流した。


「別に、私は今が〝超〟幸せなんで、同情とかいらないですけど、でも同情するなら私にも王女の地位とかくれませんかね、そしたら全部水に流せますんで」


「勿論です!!、あなたは私の血を分けた妹、たった一人の家族、当然、王女として報われるべき人間です!!、服も食事も騎士も男も、王国の総力を上げて最高のものを用意します!!、これまでの苦労に見合うだけのものを!!!、ああ女神様、今日はなんて素晴らしい日なのでしょうか、奇跡のような巡り合わせで、生き別れの妹に会えるなんて!!!」


 ジリエト王女はここが多くの来賓が参列する祭典の会場だと言う事も忘れたように、はしたなく一人で騒いでいた。


 その様子は周囲の注目を集めていたが、それを咎められる者は誰もいなかった。

 その様子を見て俺はこいつは紛れもなくユリエトの双子の姉妹なんだと、ただ一人得心していたのであった。

 

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