第22話 宝探し編1
「──────────《斬裂》!!」
オフリアが手を薙ぎ払うと、ただそれだけの動作で、目の前にいた魔物、大型のヒグマであるダークネス・デモン・ベアの首が刎ねられた。
「これがスキル【神の見えざる刃】の力か、・・・俺の【見えざる手】の上位互換スキルだな」
殺傷力、命中率、即効性、不意打ち性能、どれをとっても最高のスキルであり、刃より手が優れている所と言えば拘束出来る点だけだろう。
その癖MP吸収の補助効果までついてるのに、《握潰》と違いモンスタードロップも獲得出来るのは破格としか言いようがない。
「・・・なるほど、これが覚醒の恩恵なんですね、それ《斬裂》!《斬裂》!《斬裂》!」
オフリアは目に付いた魔物達を手当り次第に虐殺していく、それにより、オフリアのレベルはみるみる上昇していった。
「40階層の凶悪モンスターすらも一撃必殺か、こんなの、他の冒険者からしたらたまったものじゃないな」
本来、地上から40階層に行くのは2週間かかるくらいに遠い道のりだが、しかし一度40階層に到達したものはワープポイントが解放され、転移結晶に触れる事でワープが可能になる。
今回はワープを利用して40階層に来たのであった。
「よし、レベル40まで上がりました!、これなら秘宝探しだって出来ますよね!」
俺はオフリアのステータスを確認する。
▼オフリア lv40【剣鬼】HP1277 MP1545
【魔眼】【毒無効】【ダンジョンの加護】【鬼馬力】【神の見えざる刃】【不死】【吸血】【悪魔特攻】
これが貴族と平民の血統の差なのかは分からないが、オフリアは全てのステータスで俺に勝っていた。
これなら足でまといどころか、完全に主力として活躍してくれるだろう。
「・・・今のお前なら、一人でも秘宝を見つけられるんじゃないのか?」
「いいえ、一緒に秘宝を見つけて、それでカチワレ様は叙爵されて私の夫になるんです、ですからずっと一緒です」
「・・・まぁ、お前がそれでいいならそれでいいけど、そんだけ強くなったらさ、普通は自分の為に叶えたい欲望とか、そういうのを優先するんじゃないのか」
〝力〟は人を変える、卑屈で消極的だった俺すらも凶暴で暴力的な男になったのだから、オフリアだって性格が自分中心になっていないとおかしい筈だが。
「私は、好きな人と一緒にいて、役に立てるだけで幸せですから、それ以外に望むものなんて無いです」
そう言ってオフリアは俺の腕に抱きついた。
そのくすぐったい感触に胸がざわつくものの。
「これだと二股だな・・・、まぁ、別に付き合ってる訳でも結婚する訳でも無いからいいか」
「え・・・・?、何か言いました?」
「独り言だよ、ただの」
俺はオフリアを連れてダンジョンの奥へと進んでいくのであった。