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第1話 ちんけで空っぽ

「・・・って事があったんだ」


 俺は草むしりをしながら、パーティーを追放されるまでの出来事を友人である男、チンカラに説明した。


「ふーっ、ふーっ」


 それを聞いたチンカラは立ち上がり地団駄を踏んだ、どうやら俺の代わりに怒ってくれているようだ、チンカラは吃音症であり、あまり言葉を発する事は無いが、その代わりにこうしてジェスチャーで感情を表現しているのである。


「ほんと、ありえないよな、俺たちはずっと理不尽に耐えながら頑張って来たっていうのに、たった1回のミスでパーティーを追放されるなんてさ」


 チンカラも別のパーティーで雑用をしていたが、俺と一緒にギャンブルで全財産を無くした事を咎められて、ボコボコにされた上で追放を受けていたのだ。


「うゥ・・・、うゥ・・・!!」


 チンカラは涙を浮かべながら地面を殴りつける、それを俺は咎めた。


「おいおい、俺たちは爆裂草の草むしりをしてるんだしさ、あまり地面を殴ると危ないぞ、それに、キレても何が変わる訳でも無いだろ」


 俺たちがやっているのはただの草むしりでは無く、火薬の材料として使われる爆裂草の草むしりだった。

 これは草むしり検定5級に受かったものならば誰でも受けられるクエストだが、処理を間違えると最悪死ぬ危険があるという理由で報酬の割には人気の無いクエストでもあった。

 借金を背負う事になった俺たちは、手っ取り早く金を得る為に仕事を選ぶ余裕が無かった為に、無理矢理この「草むしり」に、駆り出された訳である。


「うっ・・・、うワァ・・・」


 チンカラは泣き出してしまい作業の手を止めるが、そんなチンカラを今日だけは放置して、俺は一人黙々と草むしりに励んだ。

 爆裂草は信管と呼ばれる部分を千切ると爆発する危険物なので、情緒不安定なチンカラに触れさせるのは危険と判断したからだ。






「ふぅ、これで一先ずは作業完了か、それじゃあ早速換金に行くか、早くしないとギルドがしまっちゃうし」


「ウン!」


 俺たちが作業をしていたのは比較的安全なダンジョンの上層であり、ダンジョンは地下なので日没は分からないが、広大な範囲を半日以上かけて草むしりしたので、恐らく地上は日没になっているだろう。

 買い取りをしてくれるギルドも遅くまで営業しているものの、早く行かないと時間外で別料金を取られてしまう故に、のんびりしている余裕は無かったのだ。


 俺とチンカラは爆裂草が詰め込まれたリュックを背負い、地上へと歩いていく。






「きゃああああああああああああああ」


 と、そこで若い女の悲鳴が遠くから聞こえた。


 俺はダンジョンが魔物の棲む危険地帯である以上、こんな出来事は日常茶飯事であるのだから、やぶ蛇をつつくような事はしない主義なのだが、チンカラは正義感という偽善に突き動かされたのか、助けに行こうと俺の腕を引いた。


「ウーッ・・・!!」


「ったく、時間無いんだしさ、やるなら急げよな」


 俺はチンカラの態度に折れてチンカラの後を追うことにしたのだった。


 普段はこんな偽善や義侠(ぎきょう)加担(かたん)したりしない。

 でも今の俺にとってはチンカラだけが唯一の友達だった、だから友達を一人には出来なかったのだ。


 俺たちは駆け足で悲鳴のした方角、やぶ蛇が這いずる場所へと自ら進んで行った。

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