第18話 全てを〝闇〟に葬る為に
「進捗はどんな感じだ?」
俺はとあるホテルの一室で、ユリエトにそう訊ねた。
「うまく潜り込めました、信用も得られて、全て上手くいってます」
「そうか、ならいい、〝計画〟は1週間後だ、その日に俺は、この街の全てを闇に葬る、その時にまた会おう」
「・・・あの、カチワレさん、計画とは一体?、カジノを手に入れてこの町を支配する力を手に入れたというのに、これ以上何を望むんですか?」
「・・・ただの、復讐だよ、それ以上でも以下でも無い、本当は世直しとか世界平和とか平等な優しい世界の創造とか、〝力〟を持つものならそんな綺麗事を夢見るものなのかもしれないけれど、俺はそこまで強い〝力〟がある訳じゃないし、〝強欲〟でも無いからな、望むものはただの復讐、それだけだよ」
「・・・じゃあ、復讐を終えた後は、全部終わったら、私と一緒に・・・」
「・・・ああ、全部終わったら、その先の俺の人生は、全部君にあげよう、君と、死ぬ瞬間まで、ずっと一緒にいよう」
俺は背を向けたままそう言うと、部屋を出ていく。
ユリエトは仲間として、コマとして、最高の存在だった。
予定外の行動をしないし、俺を疑ったりをしないし、俺に面倒な手間をかけさせたりもしない、そして優秀だ。
だから俺はユリエトを信用して、執着を覚えているのかもしれない。
ホテルの外に出ると木枯らしが背中を叩いた。
もうすぐ冬になり雪が降るのだろう、吐いた息は白く、夜空は黒雲が星を覆っていた。
俺はフラフラとした足取りでこの街の〝闇〟の部分、ダンジョンで親を失い捨てられた孤児や奴隷達が身を寄せ合うスラムに行くと、そこで孤児達に金をばら蒔いた。
これはただの偽善だ、どうせ全てが〝闇〟に帰すならば、最後の瞬間くらい、いい夢を見せてやろうというだけの偽善。
〝終わり〟まで救いないの人生だと可哀想だろうという、俺の、とても独りよがりな偽善なのである。
だからこんな救いすらも、本当は無意味なのだ。
何をしても満たされないような憎悪だけが、俺の心を満たしていたのだから。