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第16話 カジノをぶっ壊せ

 俺が賭場荒しを始めてはや数日。

 流石に『無敗のジャギー』を倒した俺にポーカーで挑んでくるものもいなかったので、俺は何も知らない初心者の貴族や富豪をカモにして資金を増やし。

 カジノの従業員にそこそこ纏まった金を握らせてカジノの〝ボス〟の情報を収集していた。


 俺がカジノに入り浸りなっている間、ユリエトにはとある任務をこなして貰っている、全ては俺がこの都市で起こそうとしているある〝計画〟の、その下準備の為だ。


 そして賭場荒しをしていた俺はとうとう、カジノのスタッフに呼び出されて店長から出禁の通告を受けたのだった。



「出禁?、俺はイカサマなんてせずに普通に勝負してるだけだぜ、そもそも俺が出禁になるなら真のイカサマ野郎のジャギーが出禁じゃないとおかしいだろうが!!ジャギーを放逐していた分際で俺を出禁にするのはおかしいだろうが!!!」


「・・・ジャギー様は若い男性だけを狙った〝お得意様〟ですので、それに、カチワレ様は遊び方が派手過ぎて、他の多くのお客様からも苦情が来ております」


 苦情、恐らく挑発して無理矢理勝負させられた上で、更に挑発して勝負をし、とてつもない借金をカジノに背負う事になった貴族達の事だろう。


「ああ?、負け犬の遠吠えだろうが、別に俺がイカサマしてるって言うなら文句ねぇけどよぉ、実際は相手がイカサマして負けてる訳だろ、そんな奴が文句言う資格とかある訳ねぇよなぁ!!」


 俺は聞く耳を持たないと言った風に突っぱねる。


「・・・勿論、ただで出禁とは言いません、カチワレ様が貴族達から巻き上げたお金10億と、そしてこちらの勝手なお願いを聞いて頂く迷惑料の10億、この場でお支払いします、なのでどうか、これでおしまいにして頂けませんでしょうか」


「ああ?、これで出禁になったら俺は自分でイカサマ師として認める事になって、一生人から後ろ指指される人生になるんだぞ?、それがこのカジノのたった十日間の売上の10億で手を打てって、それは話が甘いんじゃないのか?、お前、俺にかける迷惑がたった10億で足りると本気で思ってんのか?ああん?、」


 俺は魔眼を発動させながら店長に顔を近づけてメンチを切る。


 ただの中間管理職らしい店長はその剣幕に怯え、震え上がった。


「い、いくらなら手を打って頂けるので・・・?」


「千億だな、それかこのカジノを丸ごと俺によこせ、それが俺にかける迷惑に対しての適切な対価だ」


「そ、そんな事出来るわけ・・・」


「テメェじゃ話になんねぇな、本当に俺を出禁にしたいなら、ここのボスを呼んでこいや、俺が誰だか分かってんのか?」


「カチワレ様でしょう?」


「それは世を忍ぶ仮の名だ、俺の本名はカーチ・ワーレ、ワーレ帝国の第7王子だぞ、家紋を出せば貴様は斬首が確定する訳だが、それでも俺を疑うか、ボスを呼ぶか、好きな方を選べ」


「ひいっ、少々お待ちください!!」


 店長は慌てて部屋を出ていった。

 そしてたっぷり5時間待たされた後に、このカジノの支配者、ギャングのボス、この街の帝王が現れたのであった。


「お前か、オレに会いたいっていうガキは、へぇ、若い癖に中々肝が座ってやがるな、お前、オレの部下になる気はねぇか?、そしたらこの街もカジノも、いずれは全部くれてやるよ」


 そいつは筋骨隆々とした大男でありながら、獣のような逞しさと政治家のような老獪(ろうかい)さを兼ね備えたギラギラと欲望に滾った目をして、どこまでも危険な雰囲気を纏っていた。


 ▼トータック lv50 【帝王】HP1515 MP1078

 【カリスマA】【不死身】【豪運】【英雄殺し】


 恐らく年齢は40くらいだろうが、ステータスは全盛期と言ってもいいくらいに高い、戦えば間違いなく俺は勝てない、そう思えるくらいに目の前の男には威圧感があった。


「・・・いずれっていつだよ、不確定な未来を担保にされても信用なんて出来ないし、俺は今すぐこのカジノが欲しいんだよ」


「ふん、ガキの癖に強欲だな、その上生意気だ、だがそこが気に入った、オレに媚びを売る奴はごまんといるが、ケンカを売る奴は珍しい、しかもカジノを寄越せとまで言えば、人間の宣伝(プロモーション)としちゃあ十分だ、興味だって湧く、オレにここまで言わせる人間なんて滅多にいない、もう一度言う、オレの部下になれ」


「あいにく、誰かの下につくのは性分じゃない、それに俺はあんたの部下になりたくてあんたを呼んだんじゃない、ただ、俺を出禁にしたいって言うなら、カジノか1000億寄越せと言いたいだけだ」


「って事はなんだ?、お前、本当にオレにケンカ売りたいだけだとでも言うつもりか?」


「ま、そうなるな、まぁあんたがガキのケンカを買う度胸があれば、の話だけどな」


 ──────────ガンッ。


 そこでトータックは閃光のような動きで俺の顔面を殴った。


 だが、勿論、今更この程度で痛がるような俺ではなかった。


「一発殴れば大人しくなると思ったか?、残念だが全く効いてないぞ」


「へっ、確かに殺すつもりで殴ったにしゃあピンピンしてやがるな、益々欲しくなったぜ、テメェがなんの目的でここに来たかは知らねぇが、オレのモノにならないっていうなら、グチャグチャになるまで壊すしかねぇな、ひざまずいてケツの穴舐めても許してやらねぇぞ」


 トータックはやる気のスイッチが入ったのか、ポキポキと拳を鳴らして拳を構えた。


 今現在の俺のステータスは


 カチワレ lv40 【?????ノ王】HP971 MP1341

 スキル【ダンジョンの加護】【魔眼】【王の手】【不死】【毒無効】【怪力】【神聖耐性】【激運】【調教王の権能】


 スキルで勝っているが、ステータス上では完全にトータックに負けている、故に正面から戦って勝つ道理は存在しないが、だが、残念ながらトータックの出番はこれで終わりなのであった。


「それじゃあ勝負開始といこうか、一応ルールでも決めとくか?、後で揉めるのもアレだしな」


「そんなもんいらねぇよ、勝つのはオレで、テメェは地面に這いずって許しを請いながらオレの部下になりたいと自分から懇願するんだ、それだけの勝負だ」


「じゃあなんでもありって事でいいな、腕が鳴るぜ」


 そう言って俺も自分の肉体美を披露するかのように上半身を露出させて拳を構える。

 それを合図ととったかトータックは俺に殴りかかってくるが俺はポケットからあるものを取り出して地面に叩きつけて、そして同時に見えざる手を使いトータックを拘束した。


「これは・・・毒か?、だがこんなもの、体力を僅かに削るだけで大した効果は無いだろう」


「いいや、これで──────────王手(チェックメイト)だ」


「何!?、・・・ぐおおおおおおおおおおおおおお!!!!?」


 俺が投げつけたものは、再起不能になったジャギーから押収した、ジャギーの体液だ。

 奴は秘宝を失って洗脳能力も失ったが、しかし体液を使って他者を支配する力は失っていなかった。

 ──────────恐らくそれは、秘宝を得る前から持っていたジャギーの〝固有スキル〟だったのだろう。

 この世には体液や名前を与えるだけで対象を自身の眷属(けんぞく)に変える力というのはありふれている。


 そんなジャギーから抽出した濃厚なエキスである。


 耐性を持っているものであっても、その力に抗うにはジャギーと戦うのと同等の力が必要になる訳だ。


 つまり俺は一人では無かった、かつて倒した強敵(とも)、ジャギーの力を使って、自身より格上のトータックを倒そうというのである。


  俺は見えざる手で地面を拭い、その臭い液体をトータックに塗りたくる。


「ぐおおおおおおおおおおお!!!、やめろおおおおおおおおおおお!!!!!」


 素手では絶対触れないが、見えざる手だからこそ触れられる〝禁断〟の力、それによりトータックはみるみる消耗していき、ただ拘束されているだけにも関わらず、力尽きた。


「・・・これで、今日からこの街の支配者は俺か」


 トータックは力で成り上がった男だ、故に、トータックの部下たちも、トータックを倒した俺を認めるだろう。


 そしてこの街の最高権力を掌握する事、それは俺がやろうとしている〝計画〟の第一段階に過ぎない。


 俺の最高にして最低の復讐劇は、ここから佳境を迎えるのであった。



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