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第12話 40階層での金策

「見つけた、3時間かけて2つめか、これはノルマ達成するのにあと3日はかかりそうだな」


 俺たちは一日1階層をレベリングしながら進む事によって、5日間でレベルを35から40まで上げて、現状の最深部である40階層まで到達したのであった。


 0のつく階層は広大かつ採掘資源が豊富で、その代わりにモンスターが凶悪なのが特徴であり、俺たちは40階層で金策のためにここで採れる特産品、『ブルームーン』と呼ばれる宝石を採取していたのであった。


「一つ金貨100枚の値がつく宝石を2時間で一つって考えたら、とてつもない時給効率ですね、これが最深部ダンジョンの旨みって奴ですか」


「まぁこの宝石があればダンジョンの毒マップを無効化出来る訳だし、中堅冒険者からすれば高くても欲しい必須アイテムだからな、需要と供給のバランスで考えれば、圧倒的に供給が足りてない状況だし、金貨100枚でも安いくらいだ」


 俺も前のパーティーに居た時は毒マップを無効化できるならば100万ゴールド以上の価値があると『ブルームーン』を買い求めたが、その時も常に品切れであり、高騰していたのであった。


「あ、自爆型ゴーレムが大群で出てきましたね、やっぱり『ブルームーン』を餌にしてトラップ化してるのは確実みたいですね」


「こんな七面倒臭いトラップがあったら、そら入手難易度的にも高騰するアイテムだよな、足止め頼む」


「女神の加護の下に命ず、天の鎖よ、我の敵を縛れ《バインド》」


「よし、両手で同時にいくぜ──────────《合掌(オール・クラッシュ)》」


 ボボボボボンと、10数体いたゴーレムを巨大な見えざる手で挟む事により一網打尽(いちもうだじん)にして破壊する。

 破壊されたゴーレムは爆発、誘爆し、その衝撃は大地を大きく揺らした。


「おお、段々手際よくなってきましたね、やっぱり私がいて良かったでしょう、連携した方が戦闘も効率的にできる訳ですから」


「・・・まぁ、そうだな、足止め以外なにも出来ないけど、何もしないよりマシだもんな」


 と言いつつも、ソロよりもパーティーの方が居心地がいいと俺は感じていた。

 何故ならダンジョンは進むだけでも過酷な道のりであり、やはり一人よりは二人の方が頑張れるものだからだ。

 40階層まで来るのも、直線距離にして約200キロは歩いただろう。

 それを一週間以上かけて地道に進んで来たのだ、一人だったら進むのが退屈で億劫(おっくう)になるのも仕方ないだろう。

 そういう意味ではユリエトの存在価値は計り知れないものであるが、まぁ照れくさいのでそんな事は言葉に出来ないが。


「それにしても、本当に40階層って開拓が進んで無いんですね、モンスターが凶悪で高ランクパーティーも全滅するくらいってのは聞いてましたが、だとしたらここから先に進めるようになるのはいつになるんでしょうね」


「まぁ40階層までで採れる資源、魔石だけでも都市は潤っていく訳だしな、わざわざ命を懸けて冒険するには、まだ冒険者の数が少な過ぎるって事だろう」


 ダイナモンシティでダンジョンが発見されてまだ10年ほどだが、そのゴールドラッシュ的な急速な発展とダンジョンの攻略速度、つまり攻略組の育成が釣り合って無いという話なのである。

 それに高レベルになった冒険者の中には、自分のレベルより下の新規ダンジョンへと移り、そこで先行者利益を狙うものも少なくない。


 ダンジョンの最終目的とは採掘資源の恒久的(こうきゅうてき)な採掘では無く、ダンジョンの最奥に眠る〝ダンジョンの秘宝〟を入手する事なのだから。

 だから最深部が開拓されるまでは、攻略が停滞するのも通例の事なのである。


「確かに、〝ダンジョンの秘宝〟を狙うなら攻略組は他所の方が効率いいですもんね、小型ダンジョンなら30、大型なら50がゴールでここは1階層半径3キロの大型ですし、攻略にもあと最低3年はかかると言われてますから」


「〝ダンジョンの秘宝〟、それを手に入れれば貴族へと叙爵(じょしゃく)される、その為に冒険者は命を懸けてる訳だし、攻略が進まないなら他の狙い目のダンジョンに移るのも自然な話だ、ま、2年後には攻略組が秘宝をかっさらいにくるかもしれないがな」


「・・・一応聞いておきますけど、勿論カチワレさんも秘宝を狙っているんですよね?」


「欲しいか欲しくないかで言えばそりゃ欲しいけど、まぁ俺は貴族になりたいとかは無いし、どっちかっていうとダンジョンで得た金で孤児院とか修道院とか経営したいっていうのが、今の目標、かな」


「え!?、それってもしかして、私の過去に感化されて、私と一緒に不幸な孤児達を救いたいって事ですか!!!」


「いや、お前は1ミリも関係無い、元々、この世界の貧富の差に対して思う所があったってだけで、そう思い立ったのも友達の影響で、お前は1ミリも関係無いよ、・・・まぁ0.1ミリくらいは関係あるかもしれないけど」


 元々俺やチンカラみたいな憐れな子供が苦しまずに済む世界になればいいなと思っていたのだ。

 だからチンカラが死んでそう思う事が俺の人生の命題になるのも自然な事だろう。


「男のツンデレはウケませんよ」


「ほっとけ!!」


 それから俺たちは三日かけて10個の『ブルームーン』を採掘し、地上に帰還したのであった。

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