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僕は囲まれた。

僕は気付くと、複数の方々に囲まれていた。何で?そしてその中心に少女がいた。

セミロングの金髪、鋭い肉食獣みたいな切れ目の瞳、華奢な体形、白人並みに白い肌、少し物足りない感じの二つの丘、少し鼻にくる刺激臭のような匂いは香水かな?そんないかにもタカピー(※高飛車)な雰囲気を醸し出している少女が僕の目の前にいる、いや正確には僕を見下すような視線でじっと見つめている……まるで、僕が下、自分が上だと言わんだばかりに。いや、実際僕は地面で尻餅をついている状態で彼女は腕を組んで僕の前に立っているからそうなんだけどね。当の僕はというと、ビックビクしていた。何で?どうしてこんな展開になったの?僕が何をした?いや、何もしてない。ただ、普通に海斗と礼二さんと雫ちゃんと登校していただけなのに。何?何が悪かったの?もしかして、逆にこれはフラグ?フラグなのかっ!?……いやいやっ!何考えてんだっ!僕はっ!ふっつうに拉致られただけだよっ!すぐ、三次元を二次元に重ねてしまうっ!僕のバカッ!バカッ!バカちんっ!

「お嬢様、この男の処分はどうなされますか?」

執事っぽい服を着たさっき逞しい方々に鞭打ちしていた爺さんがお嬢様……上奏院さんにそう尋ねた。……えっ、僕、処分されるの……?……そ、それに、爺さんっ!スーツの懐に右手を入れてますけどっ……!何持ってるのっ!?も、もしかしてっ……チャカっ!?チャカなのかっ!?け、消されるっ!?

『小僧っ、特に貴様に怨みは無いが死ねぃ!』

ズッキューン!ズキューン!ズッキュゥウウウウウウウウウーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!

バタッ………間宮春明(享年17歳)ーーーDEAD ENDーーーチャララララ〜〜〜ン♪(←エンディング曲)

「いやぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!後生ですぅ、お願いですぅ、殺さないでくださいよよよよよぉおおおお〜〜〜〜ん!!!!!まだっ、やり残した積みゲーがあるのにぃ!まだっ、使ってない美少女フィギュアがあるのにぃっ!まだっ、オ○ニーしかしたことないのにぃ!いやだぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!こんなところで死にたくないっ!シニタクナーーーーーイ!!!!!!!!!!」

僕はその場で声を荒げながら必死で土下座し続けた。校門の前でこんな事をするのは恥ずかしいとか言ってられないっ!プライドより命の方が比重が大きいのだっ!

「ビクッ……な、何ですのっ!?この男は!?だ、誰かっ!この男を大人しくさせなさいっ!」

「はっ……分かりました、お嬢様」

そして、僕の額に何か物体を突きつけられる感触がした。そして、横目でチラ見すると執事の爺さんが怪しく黒光りする拳銃を僕の額に突きつけていた。……は?えっ、あの……?それ、玩具……ですよね?僕は懇願するような目で爺さんを見た。

「………」

ニィ……ひっ!爺さんは目元だけを歪めて笑っていた……そして、僕は全てを理解した。これがまさに無言の圧力と言うのだろう……『大人しくしなければ殺す』……爺さんは僕にそう脅しているのだ。僕は悲鳴を上げそうになったが、必死に口を押さえて恐怖心を自分の中に押さえ込んだ。






ーーー十分後。

「……さて、そろそろ落ち着いたかしら?」

上奏院さんは僕に向かってそう口を開いた。……本当になんでこんな目に……僕の背中は汗でぐっしょり、くそぅ!今日も朝から不愉快だっ!不幸だっ!

「……あ、あの……上奏院さん……?何で僕はこんなところに連れて来られたんでしょうか……?」

僕は恐る恐る上奏院さんに捨てられた子犬のように下から目線で尋ねた。

「な、なななな、なっ………!!!」

ざわ……ざわ……

僕がそう言うと、周辺が不穏な空気に変わった……サングラスの黒フンドシの逞しい方々がざわつき始める……えっ?えぇ〜〜〜?僕、何か変なスイッチ押しちゃった?(汗)

「な、何でわたくしの名を……ジィ!この男はやっぱり……『魏』のスパイかしらっ!?」

……えっ?何?すっぱい?この人、梅干系が好きなのかなぁ……?

「……いえ、そう判断するのはいささか早計かと思われます。お嬢様は学園の『三国志』のお一人、一般の庶民にも知れわたっていて不思議では無いかと思われます」

「……あっ、そ、そうですわねっ!この愚民が私の名を知っているのは当然ですわねっ!おーーーーーほっほほ!!!!!」

僕の目の前で上奏院さんは高らかに笑った。……え?何なの?驚いたり元気になったり忙しい人だなぁ……

「……あ、あの……だからこれは一体……」

僕は弱々しい声でそう言った。上奏院さんは手を口元にやり高笑いをしており、それに続いてフンドシサングラスの方々も『アーーーーー八ッハハハ』と笑い始める。ハイ、この人達聞いてません。

「お嬢様、そろそろ……」

「あっ、あぁ、そうね……おい、そこの愚民」

「はっ、ひぃ!な、何でしょう……?」

僕はいきなり上奏院に振られて、ビクッとした。

「……で、いくら欲しいの?」

「……は?」

「だからっ!いくら欲しいかって聞いてんのよっ!このビチクソ野郎がっ!!!」

「お嬢様、少し落ち着いてくださいませ。素が出ております」

「あっ、あぁ……そ、そうでございますわね。わたくしとしたことが……つい、お下品なお言葉を使用してしまいましたわ。おーーーーーほっほほほ!!!!!!」

「お前達、笑いなさい」

ピシッ

「「「「「「アーーーーーハッハハハ!!!!!!」」」」」」

僕の周りで上奏院さんに続いて笑い出す、フンドシサングラスの方々。……何なの、コノヒトタチ(汗)

「……こほんっ、え〜、そこの愚民。貴方、さっき校門付近で『魏の女王』と他2名と歩いていたでしょう?貴方、あの連中とはどういった関係なのかしら?」

……『魏の女王』って……

『ちなみに、雫ちゃんは『魏の女王』と呼ばれているぜ♪』

あぁああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!

そうかっ……!雫ちゃんってこの学園の『三国志』とか何とか呼ばれていると海斗がさっき言ってたな……

「あの、雫ちゃんが何かしたんですか?」

「……貴方、私達の関係を何も知らなくて?」

上奏院さんは呆れた様子で言った。

「は、はい……何かホントすいません(汗)」

「……はぁ、しょうがないわね、ジィ!ホワイトボード!」

「はっ」

執事服の爺さんはホワイトボードを上奏院さんの後ろに持ってきた。……一体、どこから持ってきたのだろう……?そして、上奏院さんはペンを持ち、ホワイトボードに筆記し始める。






「この学園の三大勢力、通称『三国志』と呼ばれているのは分かるわね?」

「は、はぁ……あの、すいません。書くならもう少し丁寧な字で書いてくれませんか?汚すぎて何書いているかさっぱりなんですけど……」

「『三国志』は戦国時代の戦況を綴ったもので喰うか喰われるか、三国の決死の戦が繰り広げられたわ」

……普通に無視された。

「その『三国』が『三族』を意味し、『魏』が『橘家』、『呉』が『上奏院家』、『蜀』が『高宮家』に相当するというわけね」

「……あの、先生。『三国志』とかややこしいの使わなくても普通に『三強』とか『御三家』とかの方がしっくりくると思うんですけど……」

「三国志ならぬ三族志というわけね。つまり、私達も三国志のように経済面で喰うか喰われるかの戦いを繰り広げているわけよ」

……またスルーされた。

「まず、『魏』の『橘家』から説明するわ。この橘の一族は元来、そこまで経済面で大きな一族ではなかったわ。しかし今から約二十年前、現在の学園長『橘千里たちばなちさと』が中心となって産業から農業、第三セクター等あらゆる面で橘一族が業界に進出していき、今の『三国志』と呼ばれるまでの地位を築き上げたわ。『橘家』の現当主はどういうわけか、千里の次女『橘雫』ね」

……雫ちゃんが当主か。でもどうして……?

「そして次に、私達『呉』の『上奏院家』よ。上奏院家は元々、貴族の家系で超一流の会社をいくつも経営しているのよ。フフッ、そうわたくし達の家系は大昔から昔の『高宮家』と同等の存在だったのよ。まぁ、今の『高宮家』は衰退の一途を辿るけどね。現在は悔しいけど『橘家』と同等……いや、少し劣るかも。でも、これからわたくしがいずれ、『橘家』をも越す一族とするのですわっ!おーーーーーほっほほほ!!!!!ちなみに、『上奏院家』の現当主はわたくし、『上奏院春香』ですわ」

……うん、とりあえずこの人がタカPで偉そうな人だということははっきり分かったよ。

「最後に、『蜀』の『高宮家』ね。この一族は昔は学園の名の通り、それは巨大な一族でわたくし達『上奏院』と同等の地位にいた家系でしたわ。ですが、それも一時のこと。二十年ほど前から徐々に衰退していき、現在はこの学園の『三国志』の名はつけられているものの、その内他の一族に追い越されるのも目に見えているほどの堕落した一族ですわ。まぁ、衰退した原因ははっきりとは分からないのですが、二十年前の当主はそうとう大雑把で適当な方だったと聞きますわ。それが原因かどうか分からないですが、まぁとにかくそういうことですわ。現当主は『高宮由紀たかみやゆき』ですわ」

「あの……先生、質問いいですか」

「先生じゃないですわっ!!!ティーチャーとお呼びっ!!!」

どっちも一緒じゃん。

「……えっと、ティーチャー。さっき、『高宮家』が衰退していったとか言ってましたけど……でも、今もこの学園、『高宮学園』ですよね?話からすると『橘家』が三族でも最大の勢力で学園長と理事長が橘の人間ですよね?じゃあ、何で『高宮』って名前が学園の名前で使われているんですか……?」

そうだ、それなら『橘学園』になっていてもおかしくないじゃないか。

「……さぁ、わたくしは詳しいことは知りませんわ。ですが、今の学園長の橘千里がどうもクセのある人物らしいですわね……それと何か関係があるのかも」

……橘千里、学園長で海斗と明美ちゃんと雫ちゃんのお母さん……どんな人だろう?でも、確か僕この後、学園長に行かなきゃならないんだった……多分、そこで会うよね。

「お嬢様、ちょっと……」

「……何かしら?」

執事服の爺さんは上奏院さんを呼び、少しは離れたところで何やら会話していた。

……ちなみに僕は未だにこのマッチョなグラサンフンドシの方々に囲まれてる。……そろそろ、この嫌な空気から解放してほしいんですけど……

「……そこの愚民っ!もういいわっ!帰ってよしっ!」

上奏院さんはそんな事を言いながら、門の外へ指を指した。……あの、僕も今日からここに通う生徒なんですけど……そして、上奏院さんはまた御輿の上に乗って門に入っていった……と思ったが、急に止まり振り向いて……

「……愚民っ!貴方の名前は何と言うの!」

「……間宮春明です」

「……そうっ!貴方の顔と名前、覚えましたわっ!また、機会があればどこかで会いましょうっ!おーーーーーほっほほほ!!!!!!」

そう言いながら、御輿は校舎に向かって進んでいった。……うわぁ、覚えられたよ。そして、もう正直二度と会いたくないです……そんな事を考えながら僕は溜息をついて校門に入っていった。






「……あの正面の校舎か、やっと着いたよ……」

僕は学園長室のある校舎へ向かって歩き始めて10分。ようやく、目的の校舎にたどり着いた。いや、その校舎って門を入って正面って、守衛さんに聞いたんだけど………長いっ!長すぐるっ!校門と校舎までの距離どんだけ離れているんだ!と。もう、何か歩いている途中で心が折れそうになったよ。よく頑張った!僕!

「……はぁ、そして中は普通のどこにでもあるような感じの内装なんだね」

外装はメルへェーンな感じなのだが、校舎内は普通な感じだ。外装でお金をかけすぎたのかな?昨日行った職員室も案外普通だったし。

「えっと……学園長室は………七階かよっ!!!あぁ……何か、リアルに行くのがしんどい場所だなぁ……」

僕は一人で愚痴を吐きながら、まず一段目に足を乗せた……すると……

「あ、ぁぁ〜〜〜きゃ、あぁあああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

どこか間の抜けた女の子の悲鳴が上から聞こえてきた。そして気になってふと顔を上げると……






「……えっ?」






僕の視界には花びらのパンティーがはっきりと写った。






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