僕は攫われた。
高宮学園は都内から少し外れた位置にある生徒数約二千人のマンモス学園だ。
なんでも、歴史ある学園のようで何度も何度も外装や内装を建て直しているようで、そのせいか何かヘンテコな校舎……というより、メルヘンな校舎が多い。学園自体の敷地も非常に大きく、ドーム四個分くらいの広さらしい。学園の周辺は住宅地だが、少し歩けば商店街、デパート、ゲームセンター、ボーリング等……生活には困らないし、立地がいい。学園内の設備も十分過ぎるくらい整っており、食堂、体育館、運動場、図書館、プールはもちろんのこと、武道館、美術館、ボクシングジム等、様々な部活動に配慮した施設も多く存在している。何でもここの先代の学園長が『文武両道』をモットーにこの学園を発展させていったらしい……僕が昨日入寮した学生寮は学園の正門を出て、裏手にある寮だ。他にも周辺に寮はあるらしいが僕は、家賃の安さと朝食と夕食は用意してくれる寮に目をつけ、海斗や礼二さんのいる寮へ入寮したのだ。……でも、寮には僕を含めて六人の寮生(僕、海斗、礼二、明美、雫、ゲンさん)しかいない。寮にしては少ないような気が……やっぱり、あのボロっちい外装が問題なのだろうか?
「何だ、春明。恋人と別れた後の切なそうな顔して?」
僕の横で歩いている海斗がそんなことを言った。現在、僕と海斗、それに礼二さんと雫ちゃんと一緒に学園に向かって路地を歩いている。明美ちゃんは部活の朝錬で朝食を食べるとすぐに学園へ登校したのでここにはいない。
「……悪かったね、僕は普段からこんな幸薄そうな顔だよ」
「気分悪いのか?大丈夫か?顔?」
「余計なお世話だよっ!それを言うなら身体でしょ!?」
ホント、人をイラつかせるの得意だな……海斗は。
「……大丈夫か?本当に体調が芳しくないのなら、今日は大事をとって休むか?」
礼二さんが僕を気にかけてくれる……あぁ、ホントいい人だな。でも、できればもうすこし表情を緩めてくれると嬉しいのに。
「あ、あぁ、大丈夫ですよ。いや、僕、この学園に登校するの今日が初めてじゃないですか?友達が出来るか不安で……あと緊張でちょっと、ね」
「なんだっ、そんな事で悩んでいたのか春明!何言ってんだよ〜〜〜もう俺達、仲間じゃん、セックスフレンドじゃん♪」
「気持ち悪いっ!冗談でもそんな気持ちの悪いこと言うなよっ!」
海斗は笑いながら、人差し指と中指の二本で何かを弄るような動きをジェスチャーする……本当にキモイなぁ、もう……
「………」
……なんか雫ちゃんにものっそい目で睨まれた。いや、嫉妬からくるものだと思うけど……ないから、ホントにそれはないから。僕らそんな関係じゃないからね?(汗)
「まぁー、春明よ。んな緊張してガグプルしちゃっても仕方ねぇーって!俺のように大らかな心でドーンと構えとけって!なっ♪」
海斗はニコニコ笑いながら、僕の心臓あたりに軽く拳で押す。こういう海斗の気さくで愛想の良いところは好印象なんだけど……ところでガクプルって何だろう。
「お前はただ何も考えず行動しているだけだろう。大らかとか大層な言葉を使うんじゃない」
礼二さんは目を瞑り、息を吐きながらそんなことを言った。この人も今まで相当苦労してきたんだろうな……
「何だと〜〜〜よーし、なら俺が大らかな心を持っているということを今から証明してやろうじゃねぇかっ!!!見とけよ、お前らっ!!!よーし、あそこで歩いている女子高生がいいな」
海斗はそんな事を言いながら、僕らの前で歩いている女子高生に向かって走っていく……何をするつもりなんだろう……
「おーい、そこの君!ちょっと俺の話を聞いてくれないか?」
「……はい?え、あ、な、ナンパならおっ、お断りですよ……(え?何この人、ちょっとまぶいかも(///))」
「あのな、実は俺……あっ、後ろに加○鷹」
「えっ?」
「あいやーーーーー!!!!!……何だ、白パンか。ちぇっ」
海斗は後ろを向いている女子高生のスカートを捲り上げ、マジマジとスカートの中身を見つめた。当然のごとく、海斗はその瞬間、女子高生のビンタを喰らい星になった。女子高生は怒りながらその場を後にし、海斗はよろよろと立ち上がり、僕らの方に戻ってきた。
「………なっ♪おおらかだろ?」
………え、どこが?
そして、他愛も無い話をだべりながら歩いているとようやく学園の校門が見えて来た。
「……うん、何かすごいね。何かホントこの学園は色々とすごいよ、うん」
校門は西洋の城の門をモチーフにされており、校門の両端には馬鹿でかい甲冑が置かれていた……何だろう?本当にここ高校?異空間に来たみたい。
「どうだ、驚いただろ?俺の母ちゃんの趣味なんだ、アレ」
……うーん、昨日も学園内を走り回っていたからこの門は見ているけど、何度見てもすごいよなぁ……って、母ちゃん?
「……え?海斗のお母さんって……え?え?」
「……あぁ、海斗のお袋さんはこの学園の学園長だ」
え……えぇええええええええーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
か、海斗のお母さんって学園長だったの!?
「ん?そんなに驚く事ぁないだろ?雫だって、この学園の理事長なんだからな」
……あ、そう言えばこのロリっ子も理事長なんだな……お、恐るべし、橘一家(汗)
「がぶっ」
「ギャアアアアアアアアアアーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
か、噛まれたっ!?雫ちゃんに指噛まれたよっ!?
「あーあぁ、春明がそんな性欲に満ちた目で雫を見つめるから……」
「そんな目で見てねーよっ!!!!!」
くそぉ……指に歯型残っているじゃないか……痛い(泣)
「……あんな奴、母親でも何でもない……」
雫ちゃんは、俯きそんな事を呟いた。
「まーま、雫ちゃんそんな事言っちゃめー、だよ。めー」
海斗はしゃがみ、雫ちゃんの頭を撫でていた。……何だろう?今の雫の反応は気になるが、何か立ち入ったことみたいだし、聞くのは止めよう……
「あ、あの……ここの学園に通う人ってお金持ちの人達ばっかなんですか?」
何だか居心地の悪さを感じ、僕は別の話題を礼二さんに振ることにした。
「……まぁ、八割がそうだろうな。だが、一概にそれだけでもない。まぁ、海斗は親が学園長だから入れたようなもんだ。他にも、成績優秀で入学料や授業料を全額免除してもらったり、俺のようにスポーツ推薦で免除してもらったりして入った奴も少なからずいる。俺の親父に聞いた話だが、親父が学園にいた頃はごく普通の生徒も通っていたらしいがな」
へぇ〜……ちなみに僕は成績優秀で費用は免除されたんだけど、って
「礼二さん、スポーツ推薦でこの学園に入学したんですかっ!?」
「あぁ、中学の頃から剣道をやっていた」
す、すごい……スポーツ推薦だなんて……そうとうすごい選手なんだな礼二さん……
「おっ、そんな話をしていると、礼二同様のスポーツ推薦で入学したお嬢様がやってきたぞ♪」
海斗がそんなことを言いながら、校門の方に指を指した。
「「「「「「ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!」」」」」」
「おーーーーーほっほっほほ!!!!!!愚民共っ!!!そこをおどきあそばせっ!!!上奏院春香のお通りですわよっ!!!踏み潰されたくなかったら、わたくしの行く道をその虫けらのように遮るんじゃありませんことっ!!!!!!ほらっ、ジィ!者共に喝を入れて、テンションアゲアゲにして差し上げませんことっ!!!!!!」
「かしこまりました、お嬢様」
ピシッパシッピシッパシッ
「「「「「「あぁあ!!!お嬢様!!!サイコーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」」」」」」
……え?何?あの人達?
校門で黒のフンドシを履いたサングラスのゴツイ男の方々。
さらに、その六人の逞しい方々が何故か御輿を担いでゆっくり、いや激しく歩いている。
そして、その傍で鞭を持った紳士風の執事服を着たお爺さん。六人の逞しい方々に鞭を入れてらっしゃる。
そして最後に、御輿の上に立ち、腕を組みながら耳が痛くなりそうな高い声で偉そうに何か指示している女の子。
……え?ホントに何?この人達?そして、ここはどこ?僕は誰?
「……海斗、俺とあの女を一緒にするな」
「…あ、あの。あの人達……何、ていうか誰ですか?(汗)」
「……上奏院春香。この学園をスポーツ推薦で入った女だ。女子テニス部の部長にして期待のホープ。さらに大金持ちでスポーツ推薦ではトップの成績を残し、圧倒的な地位と権力を持つことからこの学園の『三国志』、『呉の女王』の二つ名を持つ。……こんなもんでいいか?」
礼二さんが説明してくれた。……え?『三国志』?『呉の女王』?何それ?意味わかんない?(汗)
「……二つ名に特に意味はない。それだけこの学園には圧倒的な特に莫大な権力、地位を持つ三人の生徒を『魏の女王』『呉の女王』『蜀の女王』とそう周辺の生徒が呼んでいる、そういうことだ」
…な、なんだ、そういうことか。てっきり、暴力沙汰とか犯罪に発展するような危ない人の事をそう呼んでいるのかと思ったよ(汗)
「……ただ、あの女と付き合うのは止めとけ。俺が言えることはそれだけだ」
……え?どういう意味なのそれ?
「ちなみに、雫ちゃんは『魏の女王』と呼ばれているぜ♪」
海斗さんが陽気そうな声でそう言った。
…え、ちょっ、嘘……僕は横目で雫ちゃんをちらっと見る。
「がぶっ、がぶがぶっ」
ぎゃぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!また、指噛まれたぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!三回もっ!!!!!(泣)
「まぁ、この学園はあいつらみたいにちょっとイカレポンチな奴らがいるから気ぃつけな♪春明♪」
あんたも十分イカレポンチだと思うんですけど……(汗)
そんな事を思いながら海斗と礼二さんを見ていると、はっとした表情で見つめてくる海斗と礼二さん。……?一体、どうしたんだろう?
「……間宮、初日も散々だったろうが、今日も散々な日になりそうだぞ。お前はつくづくついていない奴だな……」
「まぁ、生きて帰って来いよ♪春明♪じゃあ、礼二、俺達は教室に行ってようぜ♪春明は生きて帰ってこれたら学園長室行けよ、お前転校生だから色々とあるらしいし」
「……え?二人とも何を言って……」
ガシッガシッ
僕の両腕がガッチリ締められた。……えっ?何?コレ?何なのこれ?(汗)
両サイドを見ると……さっきのゴツイ方々が僕を拘束していた。
そして僕の身体は軽々、持ち上げられそのままどこかへ連れて行かれる……
「「「「「「ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!」」」」」」
「え?え?えっ!?ちょっと待ってっ!?えっ、嫌っ!?何コレっ!?いやぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!誰か助けてぇえええええええええーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!(泣)」