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僕は自爆した。

「間宮君の教室はもうすぐですからね~♪」

満面の笑みを僕に向ける姫川先生。まぶすぃっ、オタッキーな僕にはその無垢な笑顔が眩し過ぎるよ先生ぇ!

そんなヘタレな僕は今、姫川先生の後を追ってゆっくりと学園の二階の廊下を歩いています。

というのも、転校生の僕をクラスメイトに紹介するために担任の姫川先生と連れ立っている状況なのです。ふと、横目でグラウンドの見える窓を見ると体操服姿の元気な男の子達が颯爽と元気に走り回っているではありませんか。そろそろ次の授業が始まるのかな?うーん、姫川先生と一悶着あったからなぁ……少なくとも一時限目は過ぎているようだね。

「姫川先生、ちょっとお聞きしてもいいでしょうか?」

僕は姫川先生の思い込みの激しさに注意を払って尋ねた。うん、姫川先生のあの異常な被害妄想はすんごいからね。僕でさえ引いたのですもの。

「はい~何ですか?」

「えっと、もう一時限目は終わっていますよね?僕が言うのはなんですけど、途中から転校生の僕を紹介なんてして授業の妨げにならないですか?」

そう、普通は転校生の紹介なんてものは朝のHRにやるのがセロリーだ、じゃなくてセオリーだ。まぁ、結局それは朝の濡れ衣事件や姫川先生との一悶着で叶わぬ夢になっちゃったけれど。

「あは、間宮君は気遣いのできるいい子ですね~……でも、心配ご無用。次の二時限目は私の受け持っている授業ですので、その時に紹介しますよぅ」

「……あ、そうなんですか。どうもありがとうございます」

それなら安心だ。他の先生の授業だったら何か気まずいというか悪いしね。うんうん、それならたっぷり自己PRできるぞ。どうしようかなぁ……普通に自己紹介しようかな。確かにそれが一番無難だけど、逆に無難すぎて存在感がエロゲーのモブキャラの如く薄れるのはやだなぁ。なら、多少のユーモアを交えながら自己紹介しようか。『間宮春巻(45)です!嘘ですっ!春明だぴょろろろ~~~ん♪』中華料理かよっ!うんっ、サムイ!我ながらすんごい寒いよ!でも、その寒さが僕というダメ人間を認知してもらえるキッカケ作りとなればいいんだ。そうすれば、お昼休みに僕の机の周りには女の子がキャピキャピ集まってくる事間違いなしっ。いいっ!すごくいいぞ僕っ!よーし……昔、オタ友から『フラグブレイカー』と呼ばれた真髄をみせてやるぞっ!もう、ダメ人間なんて誰にも言わせない!僕は最も神に近い男なんだっ!

「いいって事ですよぅ。あっ、着きました。この教室です」

『2-H』と書かれた教室が僕の配属されるところらしい。よぉし!刮目せよ!僕の偉大なる勇姿るぉおお!






「いぇい!僕、間宮春巻(99)でぇっす!うっそぴょーん!本当は春明っていうんだぴょろろろ~~~ん♪って中華料理かよっ!」ビシッ(←※ノリツッコミ)






よぉし、決まったぞ!僕のサムシングエルスな自己紹介!寒いっ、そして何て痛いんだっ!我ながら怖いよ……こんな寒すぎるギャグを思いつくなんて。ううん、でもいいんだ……これでクラスの皆に認知されるキョウレツゥー♪なキッカケになるのだから!そして僕は意識をクラスメイトに向けた……ふっ、痛すぎるぜ……皆の視線が、もとい素敵なかぁいらしい下着を纏った女子の皆様の視線が。

「みゃぁああああああああーーーーーーーーーー!!!!!?????」

『きゃぁああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

僕の悲鳴と下着姿の女子の皆様の悲鳴が魚の如くハモるハモる。でも高音と高音だからあまり美しくないかな、ってそんな事を言っている場合じゃないっ!ちょっ……え?何、この幸せ天国な光景!?健全な性少年ならここでうっひゃぁー!とかぎゃっぴぃいい!とか言って悦ぶところなのですけれど!え、何?僕、よく状況が読めないよぉ!そしてえっちぃのはいけないと思うんです!そして僕は、助けを求めるように姫川先生の方を振り向いた。

「ぷっ、あっはははは!間宮君、ユニークw」

「ちょっとぉ!笑っている場合じゃないですよ先生ぇ!?何で教室の中で女子の方々が着替えていらっしゃるのですか!?」

「……ぷははっ、ごめんなさい~……あ、そうでした。二時限目は保健体育で教室は女子が体操服に着替えているんですよ~~…………はっ、ま、まままま間宮君!?へ、変質者!?」

「ちょっ先生ぇ!?」

あるぇ!?待って?待ってよ!おかしくないこの展開!?何で何もしていない僕がまるで性犯罪者みたいな目で姫川先生に見られているんだ!?元はと言えば、アンタが悪いんじゃないのか!?えぇ!?そこらへんはどうなんどすかぇ!?

「は、春明……?」

何か聞いた事ある声が僕の耳に入ってきた。あ、やだこの展開。いやだいやだと頭の中で思いつつも僕はその声の発信源の方を振り向くとそこにいたのは。

「あ、明美ちゃーん……」(←泣き声)

露出した胸元を上の体操着で隠し、真っ赤な顔で僕を窺う明美ちゃん。だよねー、僕と同じクラスだもんねー、いるにきまってるもんねー、いやぁあああああ!僕のイメェジダウゥウウウウン!いぇああああああふぅううううう!!!!!

「あ、貴方……」

ウフフ……もう、何も驚かんぜよ……こんな声、僕は聞いた事ないんだ……そうタカピーなえっと、カキピーな、タカピーでカキピーな……タカキピーな、あっ、混ざっちゃったんだぜ、ウフフフ……

「間宮、春明……いえ、愚民。ウフフ、タカが下級な愚民ごときが堂々とこの気高き、私『上奏院春香』の着替えを覗くとは……おホホホ」

……いかん春明、目の前の現実を直視せよ。うわぁ……この人も同じクラスだったのか。

強気な肉食獣を思わせる眼で僕を睨みつけるセミロングの美少女、明美ちゃんみたいに下着姿の自分を隠そうともしない、むしろ見せつけている感じ?ちなみに彼女の下着は上下、黒。刺激的、いや痴激的だ。エロイ、なんてエロ院だ上奏院さん。あっ、今僕うまいこと言った。うむ、間宮春明、冷静になれ。こんな時こそ冷静にならないでどうする?素直な言葉を紡ぐんだ僕。

「上奏院さん、似合ってますねその下着」

「……え、そっそう?あ、おーっほっほほ!当たり前じゃないですの!この私、上奏院春香は何を着てもゴージャスでトレビアーンな雰囲気を醸し出しますのよ!」

「そうですよね!ゴージャァス春香!トレビャーン春香!イヤッフー!」

「おーーーほっほほほ!」

「あーーーはっははは!げほっごほっ」(←蒸せた)

『その変態をぶち殺せぇえええええーーーーーー!!!!!!』

女子の皆様は今にも僕をぶち殺すような殺気の篭ったオーラを放った!

ぎゃーん!やっぱり誤魔化せなかったかっ!く、くそぅ!やっぱり僕は不幸だぁ!

ど、どうする!?この場から逃げるか!?い、いやっ!それはすごくまずいっス!後からすんごい警察沙汰にハッテンしてブタ箱に放り込まれる展開が見え見えだっ!く、くそっ!……あっ、そうだっ!先生に事情を話してもらえばいいんだっ!

「た、助けて先生ぇ!僕が無実だってこと証明してくださぁい!」

「こ、こいつですぅ!へ、へへへ変質者ぁ!変質者ですぅううううう!」

「のぉおおおおう!姫川先生、お前もかぁ!?」

「またお前かぁ!?一度とならず二度まで……!来いッ、しょっぴいてくれるわっ!今度こそ貴様は社会的に抹殺してくれるぅうう!」(教師P)

「いっ、いやだぁ!?ら、らめぇえええええ!!!!!」






「あはは、春っち災難だったねぇ……もぐもぐ」

昼休み。僕と海斗と明美ちゃんと雫ちゃんと美帆ちゃんの五人で屋上で昼食を摂っていた。

あの後、何とか誤解を解き、解放されたが……今回は本当に危なかった。電波な姫川先生が思い出したように庇ってくれなかったら今頃僕はポリスメンにお世話になるところだったのだから。

「よ、よく笑顔でしかも平気でそんな台詞が吐けるねぇ……美帆ちゃん?元はと言えば君らのせいなんだよ?」

「なはは、今回は本当にもぐもぐ悪かったとむしゃむしゃ思ってるよぱくぱく」

「今回……『は』?今回『も』だよっバ海斗!しかも人が真剣に話している時に当然の如く、僕の弁当をもぐもぐむしゃむしゃぱくぱく食ってんじゃねぇよ!あんた、全然悪いと思ってないだろ!?うわっしかもそれ僕の好物なハンバーグ!返せ!返せよ僕のハンバァグ!」

「う、うぇ……」

「うわっバカッきたねぇ!吐くな!吐くなよ!?」

「おぼろろろろろろ~~~~~~」ぶっちゃぁー

「ぎゃああああああーーーーーー!!!!!!僕のプレミアム弁当がぁあああああ!!!!」

「間宮、うるさい。ここから突き落とすぞ」

「あ、あぅ……ごめんなさい」

「やーいw春明きゅん怒られてやんのーw」

雫ちゃんの容赦ない一言で僕は黙るしか選択肢は無かった。くそぉ……僕のお昼ご飯がぁ……何で、こんな……不幸だ、不幸でしかない……こうやって屋上で昼食を摂っているのもあの一件でクラスの女子に目の敵にされているからだ。とてもじゃないけれど教室にいられる状況じゃない……何で、ようやくクラスメイトの一員になれたのに……こんな目に……

「そうだね、すっごく『エッチ』な春明はうるさいよね」

こうやって、明美ちゃんも雫ちゃん同様に僕を責める。あぁ、すっごく『エッチ』を強調してるよ明美ちゃん……嫌われた、すっごく嫌われちゃったよ僕……

「しっかし、何だっけ?春明のあのネタすっげ面白かったよなぁ。な、美帆?」

「うんうん、春っちある意味才能あるよ~」

……おい、ちょっと待て。あんたらまさか……まさか。

「『いぇい!僕、間宮春巻(99)でぇっす!うっそぴょーん!本当は春明っていうんだぴょろろろ~~~ん♪って中華料理かよっ!』ぶひっw」

「春っち、ユニークwww」

「いやぁあああああーーーーーー!!!!!!やめろぉおおおおお僕の黒歴史ぃいいいいいーーーーーー!!!!!!」

そんなっ、そんな僕の傷を広げるような事するなよぉ!あんたらは悪魔か!?うぉおおおお殺してぇ!誰か汚れちまったこんな春明を殺してぇえええええ!

「………ぷっ、くくっ……」ぷるぷる

「…………!…………っ!」ぷるぷる

あ、明美ちゃん。後ろ向いて笑ってる。

あ、雫ちゃん。声殺してるけれどすっげぇ真っ赤な顔して耐えてる。

…………

殺せぇえええええーーーーーー!!!!!!

誰か、今すぐ、僕をォオオ、コロセシテクダサェエエエーーーーーー!!!!!!

「ぷははっ、でもあれだねぇ春っち、初日から嫌われちゃったね女の子に」

「僕はっ、君をっ、泣くまで、殴るのを、止めないッ!」ギリギリ

「ごめんごめん、そんなに熱くならないでよ春っち。でも私は春っちのこと好きだよ。だって春っちは私の友達だもん」

「…………」

美帆ちゃんは真顔でいきなりそんな事を言う。……そんなこと言われたら、怒るに怒れないじゃないか。

「……エッチな春明、嬉しそうだね」

「あいだだだっ、いだっいだいよ!明美ふぁん!」ギリギリ

笑顔な明美ちゃんに頬を抓られた。な、何で?僕なんか悪いことした?

「ははは、まぁー春明ちゃんよ。俺が後でちゃんと春明が変質者じゃないって女子の皆に言っとくから安心しろよ」

……あんたが言うとすっげぇ不安なんですけど。

「春明は変質者じゃなくてバイなんだって、さ」

「ちょっと待て。今、何かおかしな単語が聞こえてきたんだけど僕の空耳かなぁ」

「そうです、春明君の空耳です」

「嘘をつけぇえええええ!!!!!!聞いていたぞ僕はぁあああああ!!!!!!!貴様ぁ、また僕を嵌めるつもりだなぁ!?」

「間宮、うるさいぞっ!今度騒いだら口にウン●つめるぞ!」

「はぃい!ごめんなさぁい!」

こうして。

のほほんとした初めての学校での昼食は終わった。






「許さない、許さないですわよあの愚民っ……!あんなタダの薄汚れたオス豚が私の高潔な裸体を拝むなんて……タダじゃ済まないですわっ……!」ギリッ、ギリッ……!

「は、春香様……サンドイッチの具が零れてますわ……」(お付きの女生徒A)

「は、春香様の食べかけのサンドイッチの具ぅ~~~(///)」ペロペロ(お付きの女生徒B)






一人を除いて。

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