僕は妄想した。(そのいちぃ)
『妄想は偉大じゃっ!』
歴史に名を残す偉人が言ったわけじゃあないけれど、僕にとってこの言葉は格言だ。昔、祖父ちゃんが、形見としてエロ本をくれた時に僕に言った一言。今、思えば形見としてエロ本はどうなのかと思うけど、まぁそれはひとまず置いといて。とにかく妄想はとてつもなく素晴らしく、偉大だ。何故ならば、普通ではありえないようなエロゲーのようなテンプレ展開を自分の思うがままに歪めたり広めたり色々できるからだ。これだけならば只のエロ吉野郎のように思えるが本質はそれだけでは無い。思うがままに妄想する事に何の意味があるのか?そうっ!『現実逃避』だっ!……自分で言ってて何だか悲しくなっちゃうけど。まぁあくまで僕の持論だからさ、適当に聞いてて。昔、僕の家のお隣さんにいわゆる幼馴染の女の子がいたんだ。そいつは正直、美人って部類じゃなかった、可愛い系でもなかった。金髪のロングヘアー、白のダボダボのルーズソックス、だらしない格好、目つきが悪い、ケバイ……言い出したらキリが無い、いわゆるDQNという感じの女だった。彼女は僕と同じ中学校に通っていたからよく家に出ると鉢合わせした。正直言って、彼女は僕のタイプじゃないし、彼女自身僕のことを嫌っていた。えっ?それはよくあるツンデレの幼馴染ってやつじゃないかって?違う違う、そんな可愛らしいキャラじゃないよ。あれは完全僕のことを嫌っていた。まぁ、とにかく無視はいけないなと思い僕はとりあえず形式上の挨拶だけはしたんだ。そしたら彼女なんていったと思う?
『ウザッ、キモッ、氏ね』
……僕をすごい目で睨み、そんな暴言を残してそのままその場を去っていったんだ。もちろん一度だけじゃない。学校で目を合わせても、擦れ違っただけでも、『ウザッ、キモッ、氏ね』……はっきり言おう、僕は彼女に何もしてない。というより、幼馴染というのは名ばかりで、彼女と僕はほとんどまるで接点が無かったんだ。なのに何この仕打ち。約九年間、同じ学校、同じクラス、席は隣同士……僕に対しての彼女の言葉はいつも『ウザッ、キモッ、氏ね』。何をしてもだ。そんな事を何年も続けている内に当然、僕は精神的苦痛に見舞われた。え?ツンツンもいいじゃないかって?それはかぁいくて萌える子だけに初めて適用される言葉だよ。と、まぁそんな毎日を過ごしている内にある日、祖父ちゃんが言った一言、それが冒頭の台詞だ。床につき弱々しくなった祖父ちゃんは死ぬ間際に僕のエロ本と格言を残したのだ。天国で達者に暮らせよ祖父ちゃん……っと、話が脱線したけど、そんな格言に影響されて僕は考え方を変えた。
『(彼女を自分好みの女の子に妄想しようっ!そうすれば嫌悪感は無くなる筈だっ!)』
祖父ちゃんの命日から僕は変わった。いや、人間的にはダメなのは変わらないと思うけど。彼女を『ツンデレ』に見立てて妄想という名の会話を繰り広げたのだ。
『やぁ、●●ちゃんおはよう』
『う、うっとしいわねっ!あ、アンタなんかウザいんだからっ!アンタなんて何とも思ってないんだからねっ!(///)』(←春明'Sビジョン)
『ウザッ、キモッ、氏ね』(←リアル)
ーー学校で目が合った時ーー
『あっ……(///)こ、こっち見ないでよぉっ!ほんとっ、キモいんだからぁ!!!(///)』(←春明'Sビジョン)
『ウザッ、キモッ、氏ね』(←リアル)
ーー擦れ違った時ーー
『だっ、だからっ!こっち見ないでって言ってんでしょう!?なっ、何泣きそうになってのよっ!!!ばっ、ばっかじゃないっ!?ふ、ふんっ!(///)』(←春明'Sビジョン)
『ウザッ、キモッ、氏(省略)』(←リアル)
……とまぁ、涙ぐましい努力……じゃなくて、妄想の結果僕は何とか地獄を乗り越えたんだ。だからこんな風に自分を毛嫌いしている人間に対して脳内でかぁいい子に変換する、すなわちそれは妄想と言う名の中二病ロマンなのだぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!僕は高二だけどね。
僕は夢を見ている。妄想という名の。
『し、雫ちゃん……』
僕の目の前には白スク仕様の雫ちゃんが立っていた……端整な顔立ち、滑らかな身体のライン、透き通るように白い肌、出るとこ出てないおぱーい……す、すごい。こんな雫ちゃんを見れるなんて……夢でも妄想でも僕、うれちぃー!……はっ、いかんいかん見とれている場合ではない。ところで、ここはどこだろう?森の中であることは分かるんだけど……今いち現在地が掴めない。
『間宮、何をしている。早く行くぞ』
雫ちゃんは僕に背を向け、さらに森の奥へ進もうとする。
『え、えっ……?ど、どこに?』
『……何を言ってる?大魔王るしふぁーの所に決まっているだろう?』
大魔王るしふぁー?何それ?おいしいの?僕がワケがわからないといった表情を浮かべると雫ちゃんは目を細め呆れたような表情をする。
『……間宮、もう忘れたのか?私達勇者の目的はるしふぁーに捕らわれたぴーち姫を救うべくかっぱ城に今向かっているところだ。それぞれ、『勇者ぺがさす』、『勇者ド●ルド』、『勇者白スク』の三チームに分かれて行動している。ちなみに、私達はチーム勇者白スク……』
えっ?ぴーち?かっぱ?ぺがさす?ドナ●ド?……えーっと、何か色々混じりすぎて何が何だか……(汗)
『ていうか、僕達勇者なの?(汗)』
『だからさっきからそう言ってる』
雫ちゃんはほっぺをプクーっと膨らませ僕から目を逸らす……あっ、かぁいいこの子。うん、もうこの子の顔見てたらワケのわからない無茶苦茶な設定とかどうでもいいや。だってコレ夢という名の妄想だもん。
『ってどうでもよくないぃいいいいいいいいーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!何で僕まで格好が白スクなのっ!?(汗)』
ホギャアアアアアアアアアアーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!はっ、はずかちぃいいいいいいいいいーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!(///)こ、これはかなり恥かしいぞっ!?お、女の子の白スクはかなり萌えて色んなところが元気になるけど……男が白スクとか微妙どころか、オゾマシイ以外の何物でもない(汗)身体のラインはまだしも大事なところが……おっきくなったらどうすんだっ!(泣)
『間宮っ!さっそくもんすたぁーが現れたぞっ』
えっ!?もうゲーム始まってるのっ!?そして僕は雫ちゃんが指の差す方向を見るとそこにいたもんすたぁーは……
【はだかのかいとがあらわれたっ!】
【はだかのかいとがあらわれたっ!】
【はだかのかいとがあわられたっ!】
ほぎゃぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!ギャランドゥ!!!!!!きたねぇえええええええええーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!(汗)ちょっ、しかも三匹もいるんですかっ!?
『間宮っ、何をしている!早く武器を使って戦って!』
『えっ!?雫ちゃんはどうするの!?』
『私は白魔道士なの……回復系の魔法しか使えない』
えぇ!?ちょっとっ!?ていうことは戦闘要員僕だけぇ!?マジかよっ!妄想のクセになんて都合の悪い設定だっ!!!く、くそっ!何か武器は無いのかっ!?おっ……こ、これはっ!!!
【貴方の所持している武器:五円、マヨネーズ、ポン酢、ケチャップ、賞味期限切れの卵一パック】
ロクなのねぇええええええええええーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!(泣)
『間宮はオタニート……ロクな物を持っていない』
『それを早く言ってよっ!?』
ていうか妄想世界でも僕はそんなダメな設定なのっ!?
【はだかのかいとがおそってきたっ!べんけいのなきどころにけりいっぱつ!おたにーとまみやに10のだめーじっ!】
『ぐわっ!格好は過激なのに攻撃は地味な上に地味に痛いっ!ていうか、オタニートって言うなぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!(泣)』
【ピコンピコンピコン………おたにーとまみや、残りHP1、瀕死です】
『僕はウル●ラマンかっ!ていうか僕のHP少なっ!し、雫ちゃんっ!早く僕にケアルプリーズぅうううううううううーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!(泣)』
『……ダメ、今は売り切れなの』
『売り切れって何!?MP切れってことっ!?まだ使ってもいないよねっ!?って、うわっ!?また、はだかの海斗が襲ってきたよっ!?どうするのっ!?(汗)』
『……かくなる上は……【逃げる】』
ガシッ
『……えっ、う、うぁあああああああああーーーーーーーーーー…………!!!!!!!!!!』
ズルズルズルズル………
【チーム勇者白スクはにげた】
『ここまで逃げたらもう襲ってこないはず』
僕は雫ちゃんに引きずられようやくもんすたぁーから逃げ延びた……はぁはぁ、な、何で初っ端から死にそうなの僕……(泣)
『……あ、間宮。大変なお知らせがあります』
雫ちゃんは無表情でそんな事を言った。
『……どうしたの?雫ちゃん?』
『……私の武器、無限弾ろけっとらんちゃー持っていました』
『さっきにそれ使ってよっ!?何で気付かないの!?そして白魔道士のくせに何でそんなほぼ無敵な武器持ってるのっ!?僕と待遇違いすぎるでしょ!?(汗)』
『……しっ!来たっ』
僕が長いツッコミをしている間にまた新たなもんすたぁーが現れた……はぁ、今度は何さ?
【ドラゴンがあわられたっ!】
『ぎゃああああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!いきなり大ボスっ!?(泣)』
『………………』
ドンッ、ぴゅるるるるる〜〜〜〜〜〜………ドッゴーーーーーン!!!!!
『うわぁああああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!(泣)』
【たらららたったった〜〜〜♪ドラゴンを倒した!5000ぺリカと経験値1を手に入れた!】
『ちょっとぉ!?いきなり容赦なくぶっ飛ばさないでよ雫ちゃん!!!心臓破裂するかと思ったじゃないっ!!!(泣)』
『間宮はヘタレ……この先さらなる強力な敵がいるのに』
『えぇ!?あれっ、ラスボスみたいなもんでしょっ!?あの変なもんすたぁーの後にドラゴンが出てきたからビビったけどさ』
『あれはザコ……メタルス○イムみたいなもの』
『えぇ!?いやっ、そんなかぁいいものでは無いでしょ!?あれっ!?あれがその程度ならラスボスはどんなのっ!?(汗)』
『だから大魔王るしふぁーだと言ってる。クッパの生まれ変わりだとか』
『……もうクッパの生まれ変わりって時点であれより大したことないような気がするけど……』
『……来た』
『えぇ!?もう…またもんすたぁー?僕の妄想世界はやたらもんすたぁー多いなぁ……』
【エロチューがあらわれたっ!】
『エロチュー』(←鳴き声)
『……もう、何でもありだねこの世界は』
ピ○チューもどきのもんすたぁーが現れた。ピカ○ューと決定的に違うところ、それは色が黄色ではなくピンク色であるというところだ。……可愛いけど何か気持ち悪いなぁ。
『ドラゴンの後にコレは拍子抜けだけど、何か和むか……』
ドンッ、ぴゅるるるるる〜〜〜〜〜〜………ドッゴーーーーーン!!!!!
『エロピー!!!!!』(←断末魔の叫び)
【たらららたったった〜〜〜♪エロチューを倒した!1000000ぺリカと経験値100を手に入れた!】
『うぁあああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!だから雫ちゃんっ!!!!いきなり僕の目の前でランチャーぶっ飛ばさないでよっ!?もう少しあのもんすたぁーに近づいてたら僕も巻き添え食ってたでしょっ!?かぁいいモンスターなのにいきなりってちょっとひどくない!?』
『……いや、騙されてはいけない。あんな可愛い顔しているが、近づいたら首を掻き毟ること間違いなしっ……!』
『それは別の世界の設定でしょっ!?あぁ、もう……ホント、カオスだなぁ……』
『一番のカオスは間宮の脳内だ』
『人が気にしている事をあっけらかんと言わないでよっ!?』
僕と雫ちゃんのチーム勇者白スク一行は温泉で有名な『カイワレダイコーン』という町に到着した。
『うーん……とりあえず、温泉でのんびりと……』
『いや、とりあえず……服を買う』
『えぇ〜〜〜!?ここでいきなりの白スク放棄っ!?今までの白スクっていう設定は何だったの!?一応僕らチーム勇者白スクだよねっ!?白スク取っちゃったら只の勇者しか残らないよっ!?』
『……間宮、もしかして白スクずっと着たいのか?変態……(///)』
『え、えぇ〜〜〜?何、このトラップ(汗)』
でも、雫ちゃんが照れた顔かぁいいから良しっ!
『じゃあ間宮はずっと白スクでいろ、私は服買ってくる』
雫ちゃんはそのまま人混みへ入っていく……って
『ちょっとぉおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!僕だけおきざりおざなりっ!?絶対勘違いしてるでしょっ!?雫ちゃん!?僕、白スク大好きだけど自分で着るのはかなり嫌なんだよっ!?』
雫ちゃんはあっという間に人混みに消えてしまった……はぁ、もう自己中だなぁ……さて、これからどうするかな……ゆっくり温泉でもつか……
『白スク勇者様っ、助けてくださいぃいいい〜〜〜〜〜!!!!!ひどいんですぅ〜〜〜〜〜!!!!!』
『う、うわっ!?いきなり何っ!?ていうか白スク勇者って結構認知度高いんだね……』
いきなり後ろから誰かに抱きつかれた……うっ、この柔らかな感触は……女の子っ!?僕は後ろを振り向き、その抱きついてきた女の子を見ると……
『……あれ?高宮さん?って、何でそんなビンボー設定なの?(汗)』
その女の子は何故か僕を子犬が見るような涙ぐんだ瞳で見つめてきた……お世辞にも着ている服はボロボロでどこからどう見えても残念な感じの人にしか見えなかった。
『うぅ〜〜〜ひどいんですぅ!ひどすぎてひどすぎてとにかくひどすぎてひどすぎるほどひどいんですぅ!』
高宮さんはますます涙ぐんだ目で僕を見つめながらそんなことを言う……
『ちょっ、ちょっと落ち着いて……さっきからひどいしか言ってないからさ……一体何があったの?』
『あうぅうう〜〜〜〜〜お嬢様がお嬢様が………あぅうううう〜〜〜〜〜』
『お嬢様が……?何なの?』
『うぅうううーーーーーとにかく来て下さいぃいいいーーーーー!!!!!』
ズルズルズルズルーーーーー!!!!!
『うっわ、また引きずられプレイっ!?』
そして、僕はそのまま高宮さんに引きずられていくのであった……