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記号たちは明日へ進む  作者: 八番出口
第四章

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ダイナマイ特別外伝~ダイナマイの生まれた日~

 終戦直後の日本。

 

 関根せきね 金三郎きんざぶろうは、親友のロジャー神父と横浜の喫茶店で再会を果たした。戦時中、彼らの祖国同士は互いに敵対国だったので、こうして直接顔を合わせるのは、八年ぶりのことだった。

 

 彼らは無事に再会できたことを喜び合った。たとえ祖国同士が戦ったとしても、二人の絆には国境などない。そう思える――はずだった。

 

 二人の心に、複雑な思いが湧きあがってきた。祖国の人間同士が殺し合った。街を壊し合った。なにも思わないわけがなかったのだ。

 

 金三郎は悔しかった。友人であるロジャー神父にほんの少しだけ、憎しみを抱いていることに気づいてしまった。彼個人に恨みはないというのに。

 

 ロジャー神父は悲しかった。命だけじゃなく、人の心を壊してしまう愚かな戦争を、なぜ人類は繰り返してしまうのだろう。疑いたくはないのに、ふと気づいたときに、神の存在を疑っている自分がいる。


 めでたい再会の日であるのに、二人はわだかまりを抱えたまま、一日を終えようとしていた。


「もう帰ろうか」


 二人はどことなく沈んだ気持ちで店を出た。そのとき、ロジャー神父は道端の露天商で売られている物に目を奪われた。

 

 粘土だった。

 

 ロジャー神父は閃いた。


「キンザブロウ。私たちはいま、複雑な感情を抱えている。それらの鬱憤をすべて、この粘土にぶつけて、チャラにしようではないか。停滞することは人生に必要なことだ。だが、いつかは前に進まなければならない。そうだろう?」


 金三郎は頷いた。

 

 粘土に思いをぶつけただけで前に進めるとは思えない。けれども、前に進もうとするその心こそが、いまの自分たちに必要なものなのではないか。

 

 二人は粘土を買うと、路地裏の地面にそれを置いた。 


 金三郎は尋ねた。


「ロジャー、感情をぶつけると言っても、どうしたらいいのだろう?」

 

 ロジャー神父は答えた。


「力の限り叩きつけるんだ。そう、爆発させるようにね」

 

 やがて、神父は静かにこう呟いた。 


「LET‘S DYNAMITE」

 

 路地裏に、粘土を叩く鈍い音が響いた。


 ――これが後の、ダイナマイである。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます いるかいらないかはノーコメントでお願いします 神父が開祖ですかね? どっちだとしても戦争はろくなモノを生み出しませんね
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