配信四十一回目:れんちゃんの初ガチャ
夜六時。配信のお時間である。
「川遊び配信回だー!」
『やったー!』
『水着はありますか!』
『れんちゃんの水着で喜ぶのはさすがにやばいと思う』
『ばっかお前、ミレイはちょっと言動はぶっとんでるけど、見た目はいいだろうが!』
『見た目は!』
『見た目だけは!』
「よし分かった。追放する」
『まって』
『ごめんなさい調子に乗りました許してください』
『何でもしますから!』
「よし、覚えておくね」
『あ、なんか、余計なこと言った気がする……』
あははー。絶対忘れないからなその言葉。
まあ、そんなわけで? 今日はルルさんとのコラボで川遊び配信です。集合場所は、迷いの森のあの広場。さてさて。ルルさんってどんな人かな?
ちなみに配信は私のアカウントだ。ルルさんが是非そうしてほしいって。そしてもっとお金を集めてガチャをしまくって四聖獣の卵を手に入れて欲しい、なんて言われた。ひどい無茶ぶりだ。
そんなわけで、ルルさんから誘導された人、つまりは初見さんもたくさんいます。
『初見』
『ルルちゃんから今日はこっちと聞きました』
『幼女がいると聞いて!』
『変態が紛れてるぞ!』
『安心しろ。ここにいる全員だ』
『それもそうか』
納得しちゃうのかそこ。
ちょっと反応に困ってたら、れんちゃんの笑い声が耳に届いた。大きな木へと視線をやれば、いつの間にかたくさんのフクロウにまとわりつかれてる。どうしてそうなったの?
「初見さん、あの子がれんちゃんです」
『本当に幼女だ』
『噂には聞いてたけど、マジだったか』
『ということは、病気も……? とりあえずこれ、募金で頼む』
「あ、ども。ありがとう。……いや、あのね? いきなり三万円はどうかと思うよ私は」
『草』
『上限じゃねえか!』
『石油王多すぎない?』
いや、本当に。それを皮切りに次々と投げ銭きてるし。いや、あの、ありがたいけど、ちょっと困ります。
えっと……えっと……。そうだ!
「れんちゃんやーい」
「はーい」
三十羽ほどのフクロウを引き連れてれんちゃんが戻ってきました。うん。……うん。何も言うまい。
『おいミレイお前が突っ込まないと誰が突っ込むんだよ!』
『言っとくけど俺たちは無理だからな!』
『俺たちが言えるのは一つだけ!』
『れんちゃんかわいいやったー!』
『なんだこのノリ……』
『まあまあ、初見さんは肩の力抜けよ。次にれんちゃんに萌えろ。そして叫べ』
『れんちゃんかわいいやったー!』
『そうだその調子だ!』
なんだこいつら。いや本当になんだこいつら。あれ、待って、もしかして私、いつもこうなの? あれ? もしかして私、結構やばい?
「おねえちゃん?」
おっと、切り替えよう。れんちゃんのためなら問題ないのだ!
「れんちゃん、メニュー出して」
「えっと……。こう?」
「そうそう。で、課金メニューを開いて……ここをこうして……こう……」
「んぅ?」
『困惑れんちゃんかわいい』
『首を傾げてるのかわいい』
『フクロウが集団で首を傾げてるのかわ……、ごめん気持ち悪い』
『不気味すぎる』
否定しない。視界の端で見えてたけど、結構本当に不気味だ。
「よし、れんちゃん。ここをタッチしてね」
「えっと……。じゅうれんがちゃ?」
『おいwww』
『お前は妹に何やらせようとしてんだw』
『なるほど頭ぶっとんでるって、こういう……』
『甘いな初見さん。まだ序の口だから』
『うそやん』
「うるさいよ」
初見さんに変なこと教えないでよ。勘違いされちゃうじゃないか。
とりあえずれんちゃんを促す。れんちゃんは首を傾げながら頷いて、
「えいっ!」
ぽちっとな。
「ふむふむ。それじゃれんちゃん、内容見せてね」
「ん」
れんちゃんのメニューを見せてもらう。うん。うん。うん。よし。
「私は何も見なかった」
『まって』
『いや、おい? 結果どうなんだよ。気になるんだけど』
『ミレイ?』
「…………。四聖獣、でちゃった……」
『ふぁ!?』
『そんな都合のいいことが起きるわけwww』
『起きてるんだよなあ』
『れんちゃんは卵からも愛されてるのか……』
なんとなーく、作為を感じる。あとで山下さんを問い詰めようそうしよう。
でも、確率的には別におかしくもない、かもしれない。投げ銭始めてから毎日最低十連、多いと百連ぐらいしてるからね……。いや、だって、みんなもっとやれって言うから……。
「おねえちゃん?」
「んー……。れんちゃんすごい!」
「わぷ」
とりあえずだっこしてぎゅっとしておこう。ついでになでなでしちゃう。
「んー? 何かあったの?」
「あったけど、また今度だね。そっちが気になって遊べなくなると思うから」
「そうなの? わかった」
れんちゃんを下ろすと、またフクロウと遊び始めた。かわいいなあ。
「…………」
『おいミレイ、さりげなく何やってんだw』
『こいつ自分でもガチャ回し始めたぞw』
『ちょっと悔しかったんだなwww』
「うるさいよその通りだよ、そしてゴミアイテムだよ!」
『これは草』
『これが物欲センサーか……!』
『物欲センサー先生、仕事しすぎw』
本当にね! なんでこう、欲しいアイテムって出ないのかなあ……!
壁|w・)四聖獣の卵。これはまた、別の機会に。
運営や開発の作為? 気のせいでは?
次回こそは先輩配信者さんに会います。
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ではでは!






